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「不思議だと思わないか」
「……なにがです?」

今日は土曜日で学校は無い。
僕の家で二人並んで座り、彼は読書、僕はテレビ観賞をしている。
土曜の昼ほど、見たい番組が少ない時間帯は無い。適当にチャンネルを回しながら、比較的明るくて気軽に見れそうな番組で止める。
でもこの番組も、時計の長針が別の数字を差す頃には終わってしまう。そうしたら、また新しく暇を潰せる番組を探さなければならない。
彼は先程の一言を口にしたまま、黙り込んでしまった。読書に集中しているのだろうか。
何かDVDでも借りておけば良かった。
普段なら今の時間はベッドに横になり、まどろみながら携帯電話をいじったり、二度寝をしている時間帯だ。でも、今日は朝から彼が遊びに来てくれているため、そんなマイペースな過ごし方はできない。

最近……と言うか、彼から告白の承諾?を得てから、頻繁に僕の家に遊びに来てくれるようになった。
最初は純粋に嬉しかった。彼が僕に心を許してくれているような気がして。
だけど、彼が僕の家に来てくれるようになった一週間後あたりから、気付いてしまった。
その日も、昼前の約束していた通りの時間に、玄関のインターホンが鳴った。
立ち上がって玄関の鍵を開けて、彼を迎え入れてみれば、重たそうに両手に紙袋を抱えているじゃないか。
何かと思いきや、その中身は彼が自室のベッドの下に隠していた雑誌類。
これはお前が大切に保管してくれ。
そう言われ、手渡された。そして僕の部屋に上がり込み、扇風機をつけてクーラーの前に立つ。
やっぱりお前の部屋は涼しくていいな、と呟いた。
あれ、と思った。もしかして……とも。
僕はこれまでの一週間、彼が僕に会いたくて、一緒にいたくて遊びに来ていたと思っていた。だけど、それはたぶん違うのかもしれない。
渡された紙袋に視線を移す。そして次に、扇風機の前に座り込んだ彼を見る。
もしかして、僕の家を物置代わりにする気なんじゃ……あと、僕に会いに来てくれてるのではなくて、クーラー目当てなのではないか?

……いや、彼の事を疑ってはいけない。
とは思いつつも、これまでの経緯を考えてみると、その可能性も無きにしもあらず。
まぁ、彼に利用されるのなら本望ですけどね。もう僕の事なんざ好き勝手に扱ってくれて構いませんよ。ええ。
こえして側にいられるだけで、僕は幸せですから。
隣に座る彼の体温を意識してみる。軟らかな温もりを僕に与えてくれるそれは、じわりじわりとゆっくり身に染み渡って行く。
人の体温を感じていると安心する。それが好きな相手ならば、尚更。
優しい温もりに浸りながら、僕は瞼を閉じた。

「古泉、暑苦しいから離れてくれ」

ぐいぐい、と乱暴に肩を押され、僕は彼から少し離れて座り直した。
二人の間に、クーラーの涼しい風が通り過ぎる。
……夏だから、仕方無いですよね。






あきゅろす。
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