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彼と一緒にいると、僕も普通の子供なのだと実感できる。
いや、最初から僕だってそこら辺の子供と何も変わりはしない。違っていたのは、僕自身の意識の持ちようだったんだ。
そう考えを変えてみても、実際に近所の大人達や学校の教師の僕に対する対応は暖かいものだとは言えない。でも、以前ほどその視線が気にならなくなった。
僕の事を異端だと思う連中なんて、放っておけば良い。彼みたいに、普通に接してくれる人が一人でもいればいいんだ。

休日に一人で自室に閉じこもりながら、色々と考えてみる。
あの人さえ僕の側にいてくれればそれで構わないだなんて、なんと狭い世界なんだろうか。不意にどこかで読んだ番いの四十雀の話を思い出した。
でもあれは、二羽の四十雀がお互いを支えながら隔離された世界で生きていく話だ。片方が一方的に寄りかかっている状態である僕らとは全然違う。
いつか、僕が彼を支える事ができたらいいと思う。そうしたらたぶん、僕らはもっと良い関係になれる。
学校の無い休日が一番憂鬱だ。彼に会うことが出来ないから。




何もしていなくても自然と時は流れ、僕らも学年が上がり進級する。
元々小さな学校で、クラスも一つしか無かったのでクラス変えの心配も無く、二年生になっても特に変わらない生活が始まった。
ただ、違いがあるとすれば。
「あいつ、帰ってくるの少し遅いんだ。新しくできた友達と遊ぶからって……」
「妹さんも新しく友達が出来たのが嬉しいのでしょう。やはり外で遊んだ方が楽しいですから」
「そういうもんかね……」
妹さんが幼稚園に通うようになったらしい。
自宅に帰っても妹さんが居ない状況が寂しいらしく、難癖文句をつけてはよく僕に愚痴を吐いていた。
「束縛しすぎると、嫌われちゃいますよ」
「束縛なんてしていない。あいつは俺がついていないと駄目なんだよ」
どこからそんな自信が湧いてくるのだろう。でも、文句を言いながらも本人も仕方の無いことだと理解はしているらしい。口を尖らせながらも、この話題はすぐに終わる。
……こういうのって、世間一般にはシスコンって呼ばれているやつですよね。妹さんに恋人でも出来たら、一体どうなることやら。
不機嫌そうに僕の前に座る人物を上目に眺めながらそう思う。
「……なんだって?」
「え?」
「誰がシスコンだ、誰が!」
勢い良く立ち上がって、顔を掴んできた。
どうやら頭の中だけでとどめておくはずだった台詞が、口から出てしまっていたらしい。
「ふ、いひゃっ……!」
離してください、と言おうとしたのだが、口元を掴まれた今の状態では上手く喋れない。
「変な言いがかりをつけるんじゃない! ちゃんと家にいないあいつが悪いんだ!」
「ん、ぶっ……」
わかった、わかりましたから、離してください。
痛くも無いし、息苦しい訳でも無いのだが、上手く喋れない。動けない。何で離してくれないんだ。
目の前で喚く姿を見ていたら、じわじわと視界が歪んできた。目に涙が溜まる。
「……って、泣くなよこんなことで!」
焦って僕を掴んでいた手を離すが、目尻に溜まった涙は重力に従って下へ落ちる。
「ああ、もう……!」
面倒くさそうに悪態を付きながらも、僕を放り出すような事はしない。
そんな優しさを嬉しく思いながら、ぽろぽろと流れる涙を止めることは出来なかった。

暫くして僕が泣き止んだら、少し安心したようにため息をついた。そして何でお前はそんなに情けないんだ、もう二年生なんだから少しは大人になれ、なんて呟く。
本人には僕を攻めているつもりなんて無いのだろうけど、とても申し訳無い気持ちになる。
こんな僕で、ごめんなさい。
口には出さずに謝る。声に出して発言したら、たぶんまた怒られてしまうだろうから。





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