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僕の心中の葛藤なんて知らずに、ぷちぷちとボタンが外され、日に焼けていない素肌が晒されていく。
僕は思わず視線を逸らした。
「古泉」
誘うように、名前を呼ばれる。
頬に手を添えられて、彼の方へと向き直された。
「だ、駄目ですよ、ここは学校なんですからっ…」
「場所なんて関係ない。俺は、お前が―……」
自分の両手で包んだ僕の顔を、じっと間近に見つめる。そして、彼が少し背伸びをして目を閉じながら僕の顔に……。

「―…み!……古泉!ぼさっとしてんな!」
「はっ」
響く怒鳴り声に我に返る。
少し向こうの世界へトリップしてしまっていたらしい。
「ちゃんと見ろ、お前のせいなんだからな!」
そう言って勢い良く制服の前を開く。思わず手で目を覆い隠した。でも、指の隙間からしっかりと前を見てはいる。
開かれた制服の隙間、そこには日に焼けていない彼の素肌がー…。
「って、ど、どうしたんですか、これ」
白いはずの彼の胸には、赤い痣がぽつぽつと肌の上に浮かんでいた。
「見てわかんねぇのか?蕁麻疹だよ!お前の声を聞くとこうなるんだ!」
心底うんざりしたようにそう言う彼。
そして頼むからしばらく俺の前で口を開かないでくれ、と続けた。
がつんと頭を鈍器で殴られたような衝撃が僕を襲う。彼の声がどこか遠くに聞こえた。
そんなに、そんなぶつぶつが出てきてしまうほど、僕が嫌なんですか。
たしかにみみっちい嫌がらせをしてきたけど、こんなにも嫌悪しなくてもいいんじゃないですか。
ぐるぐると色々な言葉が頭の中を巡ったけど、口に出しては言えなかった。
僕が喋ったら、また彼の蕁麻疹が酷くなってしまうから。






「…まぁ、救急車のサイレンやマジックシールの剥がれる音でアレルギー反応を起こす奴もいるらしいからな」
精神的なもんだろう。
そう言って吸っていた煙草の灰を、水の入れられたアルミ缶の中に落とす。
彼の衝撃の告白からすぐに、僕は生徒会室に直行した。とにかく誰かに話を聞いてもらいたかったのと、クラスに友人と呼べる人間がいなかったからだ。
生徒会室に入って会長の姿を見た途端、僕は泣き出してしまった。その時の僕を見る会長の面倒臭そうに歪んだ表情はしばらく忘れられないだろう。なんとか自分を落ち着かせてから、僕は会長に事情を説明した。もちろん彼の事とか、相手が同性であることは伏せて。
最初はとても嫌そうに僕の話を聞いていた会長も、その内しっかりと僕の目を見て話を聞いてくれるようになった。彼も暇なんだろう。
しかし、僕が目の前にいてもお構いなしに煙草を吸い続けている。
ここ、生徒会室ですよ。部屋に煙の臭いが染み付いてしまったらどうするんですか。
なんて思ったのだけど、今は校内での喫煙を注意する気力も無い。
「だからって……僕の声を聞くのも嫌だなんて……蕁麻疹ですよ、蕁麻疹。もう、僕はどうすればいいのか」
「何もしなければいいんじゃねぇか。心因性のもんだろうから、その内治るだろ」
ふーっと空中に白い煙を吐き出す。
こんなに堂々と吸っていたら、誰かに見つかってもおかしくないんじゃないか。どうせ見つかってしまっても、機関にフォローしてもらえると思っているのだろうけど。












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