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こうして僕のささやか且つ陰湿な復讐の日々が始まった。
期限は特に決めていない。僕の気が済んだら、やめてあげようと思う。

毎日のように暇があれば彼のクラスに通って、歯の浮くような言葉をかけていく。そのうち周りの人間も慣れてきたらしく、少し遅めの時間に彼の教室を訪れてみれば、彼の友人が今日は遅かったね古泉君。なんて声をかけてくれるようになった。彼が教室から逃亡した時も、僕が聞かなくても彼の友人が何処に行ったか教えてくれる。
涼宮さんもすでに味方に引き入れてしまっているし、もはや怖いものなんてない。
それに、最初は僕の台詞にうろたえるばかりの彼の姿が愉快だったのだが、段々とその楽しさとは違う感情も芽生えてきた。
今まで心の奥にとどめていた想いを口に出して彼に伝えられることが、とても嬉しい。「仕返し」という言葉を理由にして、堂々と人前で彼にラブコールが出来るなんて、これまでの僕には想像すら出来なかった展開だ。
そんな僕の気持ちの変化とともに、彼の態度も少しずつ変わっていった。
完全に無視をしたり、あからさまに逃げられることがほとんどだったが、数日前から僕の言葉を聞くと逃げる訳でも無く……特に反応が返ってくるわけでは無いから、無視をされていると言えばそうなるのだが、どこかおかしい。
「愛してます」と伝えると、少し顔を逸らして胸元を押さえる。目を伏せて、辛そうに斜め下を向く。
そんな微妙な彼の反応の変化に、これは、もしかして、もしかすると……?なんて、ありえない希望を持ってしまう。
僕の一途な気持ちが少しは彼に伝わったんじゃないかな、なんて。
ほぼ諦めていた恋だったのだが、まだ可能性はあるかもしれない。なんて微かな希望に縋ってしまう。

なんて浮かれかけていたある日の事だった。
いつものように彼に付きまとい、愛を伝えて……を繰り返していたのだが、突然切羽詰った様子で僕の腕を掴んだ。
完全受身を貫いていた彼の突然の行動に驚いて、避けることもできなかった。
「ちょっと来い!」
言われるままに腕を引かれ、5組の教室から引っ張り出される。彼のクラスメイト達が、何事かと僕らを見た。
人の視線など全く気にせずに、休憩時間で出歩く生徒達をすり抜けて廊下を歩いて、人気の無い階段の踊り場まで移動する。
「な、なんですか?」
鬼気迫る彼の表情に、思わず気圧される。
こんな人の来ない場所に連れて来られたと言うことは、僕の言動に我慢が出来なくなって、暴力に訴えようとでもしているのか。それとも、まさか……。
思わず考えてしまった自分に都合の良い展開を、頭を振ってかき消す。
そんなことがあるはずがない。希望を持ったって、どうせまた裏切られるに決まっている。それに明らかに前者の方が可能性が高い。
殴られることを覚悟しようとしたのだが、彼を見てみると僕を殴ろうとしている様子は無い。
むしろ、それどころか信じられない行動に出ていた。
「えっ、え?何やってるんですか!?」
何故か、僕の目の前で制服のボタンを外し始めた。
自分に惚れている男の前で衣服を脱ぎだすだなんて、何事か。
「黙ってろ!」
怒鳴られて口を噤みながらも、脳内で消えかかっていた甘ったるい展開と、ピンク色の妄想が沸き立ってくる。










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