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目が覚めた時は、もう太陽が昇っていた。
窓から明るい光が差し込んでいる。今は何時なんだろうか。
上半身だけ起き上がろうとしたら、身体の色々な場所から痛みが走った。硬いフローリングの床で寝てたんだ。当たり前か。
「…………んっ」
隣りから聞こえてきた寝息に、思わず身体が跳ね上がる。
恐る恐る音がした方向に視線を向けてみたら、昨日から着ていた服をはだけさせて、あいつが寝ていた。どことなく、顔色が良くない気がする。
「………」
昨夜の出来事を思い出す。もう紐は解かれているが手首に残った痣は腫れてしまっているし、腰も痛い。あいつを受け入れていた箇所も……。
「……ぁ…」
隣りの男が寝返りをうち、目元を擦る。うっすらと瞼が開かれた。視線が合ってしまい、身体に戦慄が走り動けなくなる。
もしかしたら、また昨夜みたいに酷い事をされてしまうかもしれない。
「……うっ!」
突然、勢い良く起き上がった。
思わず目を閉じて身構えてしまった俺の脇を通り過ぎて、また台所の流しへ直行する。
「ぅ、げっ……えぇぇ…」
暫く洗面台に顔を入れて吐き出していたが、出すものを出してすっきりしたらしく頭を上げた。とても顔色が悪い。
口元をタオルで拭ってから、ふらふらと移動し、ソファの上に倒れ込んだ。
「…だ、大丈夫か?」
腰を引きずりながらソファに近寄り、声をかけてみる。昨日のことを思うとあまり話しかけたくは無いのだが、体調の悪そうな姿を見ていると、気になってしまう。
「……大丈夫、です」
全然大丈夫そうには見えないんだがな。
床に手をついて、なんとか立ち上がる。腰付近に痛みは走るし、後ろから何か流れてきた。
それを近くに放り出されていた、もう使い物にならないスウェットで拭う。これは掻き出さないといけないのだろうか。
同じように投げられていたズボンや下着を身に着けてから、洗面台でスウェットだったものを洗う。その時に床に刺さっていた刃物を抜き取っておいた。足を引っかけたら危ないだろうから。
濡らしたスウェットを絞って、汚れた床を拭く。少し渇いてこびりついてしまった汚れは、なかなかおちない。
身体は痛むし、自分で掃除なんてしたくはないのだが、変な臭いがしてきているし、いつまでも昨夜の光景が残っていたら、俺自身が耐えられなかった。
「うー…………くん…」
名前を呼ばれた。
咄嗟に顔を上げる。
「み、水、持ってきて頂けませんか……?」
床の掃除を中断して、言われた通りコップに水を注いで運んでやった。
持って行ってやると、ソファの上で上半身だけ起こして、それを受け取る。
ゆっくりと飲み干すと、俺に向かって優しく笑いかけた。
「ありがとうございます」
軽く頭を撫でられる。
柔らかくてどこか頼り無さそうなその仕草は以前と変わりなくて、昨夜の姿が嘘のようだ。
「あと、救急箱の中に二日酔いの薬があるので、それを取ってきて貰えますか?出来れば水ももう一杯お願いします」
「ああ」
すぐに立ち上がって、頼まれたものを取りに行く。
コップに水を注いで、薬はどれを持っていけばいいのか分らなかったので、救急箱ごと運んだ。
「あなたが、こんなに僕のお願いを聞いてくれるのなんて初めてですね」
粒状の薬を何錠か手に取って、もう片手には水の入ったコップを持つ。
「そうか?」
一気に薬を飲み干して、また優しげな笑みを俺に向ける。
「素直な子は、大好きですよ」
どこかで聞き覚えのある台詞に、背筋に悪寒が走った。












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