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最近では一日の楽しみでもあった部活動が、こんなにも気まずいものになるだなんて。一昨日まで予想すらしていなかった。
「……はぁー…」
「どうしたの古泉君。なんだか元気が無いわね」
本日何度目かのため息をついたら、我らが団長の涼宮さんが声をかけてくれた。彼女には無駄な心配などかけたく無いのだが、僕なんかでも気にしてくれるのかと思うと、純粋に嬉しい。だが、今回のことは一切彼女に話す訳にはいかないので、何も言えない。それに深く突っ込まれたら、誤魔化しきれる自信も無い。
「古泉にも悩みの一つや二つぐらいあるさ。放っといてやれよ」
僕に助け船を出したのか、それとも自分の趣味の隠蔽のためか。彼が進言してくれたおかげで、彼女の興味が僕から薄れる。
「ふーん……まぁ、何か力になれる事があったらいつでも言いなさい。古泉君は大切なうちの副団長なんだから」
「ありがとうございます」
感謝の言葉を伝えて、彼の方へ視線を向けると、何故かまた親指を立てられた。それは何のサインなんだろう。




どんなに望まなくとも、時間は無情にも過ぎて行く。ここまで時間の経過を恨んだのは初めてだ。
「いくぞ」
「……はぁ」
運命の時間、部活も終わり、コンピ研の部員達が帰るのを廊下で待つ。そして、何人かのコンピ研の生徒が部室から出て行く姿を見届けてから、僕らは動いた。
「ほら、さっさと部室に進入して襲っちまえ」
「……これまたアバウトな作戦ですね」
自然と笑顔が歪む。
コンピ研の部室を覗いてみると、部長氏がパソコン一台一台の画面を確認していた。きちんと電源が切られているのか、見てているのだろう。ちゃんと部長をやっているんだな、と少し感心した。いつもは情けない姿しか見ていなかったから。
忙しそうですし、今日はやめておいた方がいいかもしれない。彼の部長業を邪魔してはいけないし。なんて考えてみたが、現実はそう甘くは無い。
「ほら、行け!」
「うっ」
背中を強く突き飛ばされ、部室の中になだれ込む。負傷中だと言うのに、今日は妙に背を叩かれている気がする。
これ、僕が脇腹に打ち身があるって忘れてやってるんですよね。わざとじゃあないですよね。
「うわ!」
突然の進入者に、部長氏が驚いて後退る。だが、その進入者が僕だと確認すると、安心したように胸を撫で下ろした。
「な、なんだ君か。びっくりした……」
僕に近付いて、何か用かな?なんて気軽に聞いて来てくれる。
……やるのか?やっちゃうのか?
首を少し動かして背後をちらりと見てみれば、部室の扉の隙間から彼がこちらを覗いていた。その表情はいつもの仏頂面と変わりないが、瞳がキラキラと輝いている。
やればいいんでしょう。分りましたよ。
「……僕は、あなたのためなら悪魔にだって魂を売ってみせます」
「は?」
覚悟を決めて部長氏へと向き直る。彼は目を丸くして、僕を見た。
部室の床は硬くて痛そうだけど、押し倒して事に及ばないといけない。一気に伸し掛かってしまうつもりで、僕は力強く足を踏み出した。











あきゅろす。
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