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昼休憩。彼と待ち合わせている中庭に向かう途中、僕は考えた。
彼の言う本日実行するアレとは、昨日言っていた無理矢理ほにゃららの事だろう。いくら彼のためとは言え、関係の無い部長氏の身体に消えない傷を作る訳にはいかない。それに、僕個人も好きでもない相手にそんな事はしたくない。
なので、もう彼にははっきりと言おうと思う。
僕が好きなのは部長氏じゃなくて、あなたなんだと。また聞き入れて貰えなくても、それが真実なのだ。これ以上彼はもちろんの事、自分自身を偽って行動するのは嫌だ。
そう心を決めて、痛む脇腹を押さえながら中庭に向かった、のだが……。
「古泉!待ってたんだぞ、ほらさっさとこっちに来い」
うわーすごい楽しそう。
僕を見つけるなり、片手で手招きしながら、もう片方の手で自分の座っている椅子の隣りを叩いた。僕は拙い動きで、彼の指定した場所に座る。腰を下ろすのさえ痛みが伴う。
「で、朝の話なんだけどな。時間は部活が終わって、校舎の中に人が少なくなってからの方がいいと思うんだ。あの人一応部長だから、最後まで部室に残って鍵を閉めないといけないだろ?そこを狙う訳だ」
「はぁ……」
どう切り出すべきか。
彼の顔を見ていたら言いづらくて、今まで騙していたのかと思うと申し訳なくて……無理矢理スルーされていたような気もするが。
「いいよな。放課後の部室で二人きりか……ポイント高いぜ」
何のポイントなんだろうか。もう僕の理解の範囲を飛び越えてしまっている。
早く話を出してしまおう。
「……あの、誠に心苦しいのですが、折り入ったお話がありましてね…」
「あの人はヘタレキャラで、それでお前は優等生タイプか?それで女子に人気がある癖に自分に手を出すお前が分らなくて、悶々と悩むんだよな。ありがちだけど、中々粋なシチュエーションじゃないか。恋愛に不器用な所が学生らしいし」
「……えぇっと…」
ヘタレ?優等生?どこから突っ込めばいい。
それより何とか出した話を速攻で遮られてしまった。ああ、なんでこんなにタイミングが悪いんだろう。本当に狙って僕の話を無視してるんじゃないかと思ってしまう。
「楽しみだなぁ。優等生×ヘタレか……嫌いじゃないぞ」
僕の心中の葛藤なんて知らずに、うっとりとそんな事を呟く。
彼が嫌いじゃないと言う事は、どちらかと言うと好きな部類に入るんだろう。嬉しいような、どうでもいいような。複雑だ。
それより簡単に話を遮られてしまったため、二度目が切り出し難い。
「まぁ、お前には期待してるから。頑張ってくれ!」
どうしたものかと悩んでいたら、とても希望に満ちた瞳でそんな事を言われた。
彼が、僕に期待……なんて甘美な言葉なのだろうか。今まで視界にすらろくに入れてもらえなかったのに。
気が付いたら、力強く首を縦に振っていた。
「……は、はい!がんば、ります」
言っちゃった。何やってんだ。
頭の中で自己ツッコミを繰り出すがもう遅い。既に口から出してしまった発言は、取り消す事はできない。
「じゃあまた部活でな」
ばしん、と再び強く背中を叩かれた。痛い。背中と脇腹が両方痛む。
自分の教室に戻ろうとしているだろう彼の背中を眺めながら、心の中でまたしても被害を被るだろう部長氏に謝罪の言葉を並べる。彼は気弱だが、とても良い青年なのに。心苦しい。
本当に実行するかどうかは別として、またあなたにご迷惑をかけてしまいそうです。














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