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なんであんなこと言っちまったんだろう。なんで…。
そんな自問自答を繰り返して、自分の行動を後悔する。
いつも、いつもこうだ。同じことを何度も繰り返して、結局は何も変わっていない。
俺は本当に最悪な奴だ。
「……片付けないと」
しゃがみ込んで、床に飛び散った皿の残骸を拾い集める。小さい破片を一つ一つ拾って、慎重に手のひらに乗せていくと、白い欠片の中にちらちらとオレンジ色の模様が見えた。
これはたぶん、あいつが俺のために買ってくれた食器だろう。猫の模様のちりばめられた。
でも、もうバラバラに砕け散ってしまっていて、可愛らしく彩られていた模様は見る影も無い。
「………」
罪悪感に押し潰されそうだった。
不可能だと分かっているのだけど、できる事なら数時間前に戻って、先のやりとりを無かった事にしたい。いや、時間が戻れるなら、あいつと出会った頃に戻りたい。こんな醜い感情なんて、知りもしなかったあの頃に。
まず大きなガラス片を回収してから、夕飯の残骸の中から手で拾えるものは取っておいて、あとは雑巾を濡らして残りの細かい破片を拭き取る。そしてその雑巾を台所に持って行って、一回洗って……を何回か繰り返したら、少し生臭い臭いは残ってしまっているかもしれないが、見た目だけなら随分と綺麗になった。
最後にまた雑巾を綺麗に濯いでから、自分も石鹸で手を洗う。
ほんの少しお腹が空いていたが、自分でご飯を作る気にはならない。お世辞にも上手だとは言えないあいつの料理が恋しかった。
そのままソファのいつもの位置に寝転がる。クッションを抱いて。
窓の外では日が落ちていて、電気の点けていない部屋が段々と薄暗くなっていく。でも、電気を点ける気も、いつものようにテレビを見る気にもなれなかった。
あいつ、何時頃帰ってくるんだろう。何処に行ったんだろう。そういえば、何も聞いていない。聞こうともしなかった。
壁にかかった時計を見る。光の無い部屋の中で、時計の針のみがうっすらと白く光を帯びていた。まだあれから1時間ぐらいしか経っていない。
辺りが真っ暗な上、無音なため、この部屋の中では時間の流れなど全く分らなかった。
一人で過ごす空間では、時の流れがとても遅く感じる。


暫くそのままで横になっていたら、いつの間にかうとうとしてしまっていたらしい。我に返って、飛び起きた。
壁にかかった時計を見ると、もう次の日に差し掛かってしまっている。
あいつは帰ってきたのか?部屋の中を見回してみるが、人の影は無い。まだ帰宅していないらしい。
「……まさか、帰ってこないつもりか?」
そんな事は無いだろうけど。ここはあいつの家だ。居候である俺が追い出される事はあっても、あいつが出て行く事はありえないだろう。
もしかしたら、何か事件に巻き込まれてしまったのかもしれない。それとも帰り道が分らなくて、迷子になってしまったのかも。
色々と考えを巡らせれば巡らせるほど、心配になってくる。「帰ってくるな」だなんて、なんて馬鹿な事を言ってしまったんだろう。
せめて近所ぐらいは探し歩いてみようかと思って、立ち上がって玄関へと向かった。真っ暗で靴もよく見えなかったので、部屋の電気を点ける。
ガチャリ。屈んで靴を履こうとした時、玄関の鍵が開かれる音がした。
この扉の鍵を開けれる人物なんて、俺の他にもう一人しかいない。
帰ってきてくれた。そう安心したら、目の前の扉が勢い良く開かれ、俺の待ち人が倒れ込んできた。思わず受け止める。俺まで倒れてしまいそうだったが、そこはなんとか踏ん張れた。そして、むわっと何かの臭いが鼻を突く。
酒臭い。










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