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「意味不明な行動をした挙げ句逆ギレか……どうしようもない男だな」
「………」
もうどうとでも言ってください。何でもいいですよ。
自暴自棄になりながら、夕日を背に彼と並んで歩く。以前なら、幸せ絶頂な時間だっただろう。だけど今は、そうは思えなかった。彼への想いが無くなってしまった訳ではないが、どうにも疲れてしまう。
「次はどうしようか。確かにインパクトのある顔合わせは出来たが、あれじゃあな」
次……次が、あるんですか。
部長氏には、部活中にトイレへ行くふりをして謝っておいた。人の良い彼は、何度も何度も謝罪の言葉を口にする僕を、苦笑しながらも許してくれた。彼に、また迷惑がかかってしまうのか…。
「やっぱあれだな。BLの王道」
王道って何だろう。そっちの創作物に関しては、軽くかじった程度の知識しか無い僕には、見当もつかない。
「よし、俺の家にある文献を貸してやる。寄って帰れ」
「はぁ。ありがとうございます……」
彼の家に誘われたと言うのに、こんなにも気分が落ち込んでしまうのは、何故だろうか。



彼の部屋へ通されて、促されるままに床の上に正座した。
「ちょっと待ってろ」
文献を貸してやると言われたため、てっきり本棚へと向かうのかと思っていた。しかし、彼は僕の予想を裏切り、ベッドへ近付く。そしてしゃがみ込みベッドの下を覗き込んで、腕を伸ばす。
「よっ……と」
薄暗いベッドの下から、小さい段ボール箱を引きずり出してきた。
まさか……?と嫌な予感を頭に巡らせていたら、彼がためらう事無くその段ボールを開く。そのまさかだった。
僕の予想通り、その中には様々はソッチ系の本が並べられていた。ショタ……眼鏡攻め……痴漢特集……あはは、色々あるんですね。おもしろいなあ。
目の前にある光景を他人事のように考えて、軽く現実逃避をする。しかし、僕のささやかな逃避行は、長くは続かなかった。
「これなんかどうだ?」
彼が手渡してくれたものを受け取る。タイトルを読むのも怖い。ちらちらと中身を飛ばし読んで、返してしまおう。
そう思ってパラパラとページを捲ろうとした……のだが、速攻で閉じてしまう。な、なんてものを持っているんだ彼は!
「な、な、な、なんですかこれは!」
「えっと……強姦特集?」
「普通に返事を返さないでくださいっ!」
「いいから見ておけよ。たぶん勉強になるから」
何の勉強になるんだ。強姦の仕方なんて学びたくも無い。
妙に裸体率の高い漫画をぱらぱら捲りながら思う。
無い、無いですよこれ。無理ですって。僕が部長氏に、なんて。謝っても許される事じゃないでしょう。だいたいこんな行為からどうやって相手を我が物にすると言うんだ。
「そんな時に活用できるのが、コレだ」
そう言って自分の携帯電話を取り出す。
「襲った後の悲惨な姿を写メっておけばOK」
「………」
彼のあんまりな発言に思わず言葉を失う。
「あとは脅迫しつつ身体の関係を迫って、こっちの存在を意識させるんだ。で、気が付いたら両想いっと」
「なりません」
どうやったら強姦から愛が生まれるんだ。相手の事を心の底から恨む事はあっても、好意なんて抱けるものか。
「すげー嫌な事をしてきた相手でも、自分の事を愛してるから故の行為だと思うと、あまり悪い気はしないだろ?無理矢理犯された相手なら、余計にそういう対象として意識しちまうだろうし」
「まぁ……そうかも、しれませんが」
物には限度があるだろうに。
だが、そういった考えを自分で語ると言う事は、彼自身もそんな思考を持ち合わせているんだろうか。無理矢理された相手でも、一途な想いさえあれば気持ちが通じ合う事もあるんだと。
彼は、分かっているのか。自分に好意を寄せている男と、二人きりの密室でそんな発言をする危険性を。












あきゅろす。
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