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有希と別れてから、俺は先に家に帰った。
もう何時間も経っていたから、あのペットショップに戻っても意味が無さそうだったからだ。
先に帰っていてくれていたら良かったのだが、家の鍵を開けて中に入ってみても、誰もいない。
残念だと思う反面、少し安心した。何も考えていない状態であいつと顔を合わせても、慌てて怒鳴りつけてしまいそうだったから。
「……えーっと…」
まずあいつが帰ってきたら、おかえりなさいって言ってやろう。それで、大切な話がある、と切り出して…いやいや、それはまだ早いか?晩飯の後で落ち着いてから、話した方がいいかもしれない。
部屋の中を一人でぐるぐる周りながら、これからの事を考える。まだ実行している訳じゃないのに、すごく胸がどきどきした。たぶん、緊張しているんだろう。
このまま周り続けていてもしょうがないので、いつものソファの上に座る。この場所が一番落ち着くな。
「……晩飯の後で、何て言おうか」
あなたの事が好きです。
何か違うな。オーソドックスすぎる気がする。
お前の事が恋愛対象として好きなんだ。
すごい説明口調だな。これも何かおかしい。
「……あ、愛して、る?」
一人で呟いて、あまりにも恥かしくて思わず疑問系になってしまった。
愛してる…か。これで、いいかも。
俺に突然こんなことを言われて、ぽかんとするあいつの顔が目に浮かぶ。
一回言って伝わらなければ、何回でも言ってやればいい。俺の気持ちがちゃんとあいつに届くまで。
ソファの上に並べられたクッションの一つを取って、抱き締める。今日、言うぞ。言うんだからな…。
何度も深呼吸を繰り返して、自分を落ち着かせた。




暫くそのまま待って、それでもまだあいつは帰って来ない。座っているのも疲れたので、ソファに横になった。
その時、ガチャリと玄関の鍵が開く音がする。俺は思わずソファから飛び起きた。
疲れた様子で中に入ってくるあいつの姿が見える。おかえりなさいって、言わないと。
「お、おかっ」
「あああああっ!!」
しかしその7文字の言葉を口にする前に、あいつは奇声を発しながら俺に抱き付いてきた。
「げふっ」
「もう!どこに行っていたんですか!?心配したんですからね!!」
抱き付かれたまま、ぐりぐりと頭を擦り寄せられる。息苦しくてうっとおしくてしょうがない。でも嫌じゃない。
「心配して…くれたのか…」
「当たり前ですよ、何を言っているんですか!」
俺を抱き締めたままわんわん喚く。身体が熱い。よく見ると、額が汗ばんでいて、髪の毛が張り付いている。もしかしたら、俺を探していてくれたのかもしれない。
「…ありがとう」
自分でも驚く程、自然とその言葉が出てきた。たぶん、心からそう思っているからだろう。
「え?なんですか?」
「何でも無いっ」
思わず抱き締めていてくれた身体を突き飛ばしてしまう。何で聞いてないんだこの野郎。
「な、何ぼさっとしてんだよ!昼飯食ってないんだ、腹減った!」
そう怒鳴りつけると、何やらぶつぶつ言いながらも起き上がって、台所へと向かった。その普段通りのあいつの姿に、どこか安心する。少し怖かったんだ。俺の勝手な行動に怒ってないか。
そういえば黙っていなくなった事、謝ってないな。後でちゃんと謝ろう。
いつものソファに座りなおす。やはりここが一番だ。
昼飯は何を作ってくれるんだろう。














あきゅろす。
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