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「やめてくださいっ!」
僕の顔に舌を這わせようとする彼を押しのけて、一旦起き上がった。髪の毛の隙間から茶色い粉がぱらぱらと落ちる。猫特有のざらざらした舌の感触のせいか、舐められた箇所が少しひりひりした。
「邪魔すんな」
ぼそりとそう言うと、また僕に顔を寄せてくる。それを彼の両肩を掴んで引き離し、なんとか距離を取った。もう僕が悪かった。変なもの食べさせて、仕返しをしようなんて子供じみた事を考えるから。これじゃあ結局の所彼の脅迫材料を撮影する以前に、僕自身が羞恥プレイ状態になってしまっているじゃないか。ごめんなさい。何回でも謝るので、いつもの冷静な彼に戻ってください。お願いします。
ぐるぐると脳内で謝罪の言葉を巡らていたら、不意に彼の動きが止まった。酔いが醒めたのか?と思い、視線を合わせてみる。
「…うっ」
酔いが醒めた、訳では無い。ただじっと僕を見ている。涙のたまった目で。
何で顔を赤らめてるんだ。何で何かを期待しているように、僕を見つめているんだ。これはもう違う意味で危ない。
一瞬だが飼い主として最低な事を考えてしまい、首を振って脳内の妄想を否定する。駄目だ、彼は僕の大切な飼い猫なんだから。
そんな僕の葛藤なんて知らず、罪作りなうちの猫は相変わらず上目遣いに僕を見つめながら、ぺろりと唇を舐めた。
ああ噛み付いてみたいなあ、なんて思ってしまった瞬間、僕はそれを実行していた。とろりとした瞳の彼を押し倒して、唾液に濡れた唇に食い付く。
「っ…んっ」
口の隙間から吐息が漏れた。それが僕の頬をくすぐるように通り過ぎていく。
「ふあ、あっ」
少し離して息を吸って、また吸い付く。舌を絡めると唾液が溢れて彼の口へと伝っていく。息苦しいのか鼻を鳴らしながら、躊躇うことなく喉に通した。
暫くしてから唇を離し、真下に寝転がるうちの猫見る。彼は息を荒くして、虚ろな瞳で天井を見上げていた。
彼は飼い猫なのに。僕は飼い主なのに。罪悪感から生まれた言葉が胸に突き刺さる。
――この子、ちょっと無愛想な所もあるけど、とっても可愛い子なんです。絶対、大切にしてあげてくださいね。
キョンくんを買った時の、ペットショップのお姉さん。とても眩しい笑顔で、そう言っていた。
ごめんなさい。約束は守れそうにありません。
目の前の露出した首筋に、噛み付いた。頭の中では綺麗なお姉さんが笑ってる。だけどもう、そんなのはどうでもいい。
「いっ、ぅ…」
軽く歯を立てて、そこをぺろりと舐めてから、噛み付いたままちゅぅっと肌に吸い付く。なんとなくだが、甘い味が口の中に広がった。そんな訳無いのに。
「あっ、あ、うぁ」
下半身に手を伸ばして、少しだけ硬くなってきた彼自身に触れてみた。熱くて、脈打ってるのが衣服の上からでも分かる。
そのまま上から手のひらを軽く押しつけてやると、丁度先端部分辺りの布の色が変わった。この程度の刺激が気持ちいいのだろうか。だんだんと硬くなっていくそこを、さらにぐりぐりと潰してやった。
「ぁっ、やあっ…あっ」
空いた両手で僕の服を掴んで、口を開けっ放しにしたまま声をあげる。普段は一日に二、三回声を聞けたら良い方なのに。
…可愛い、なぁ。
胸がどきどきと高鳴り、思わず抱き締めたくなった。でも抱き締めるのは後回しにして、もう一度柔らかそうな唇にキスをする。前のような激しいものでは無く、軽く触れるだけのキス。ちゅ、と軽く吸ってから、すぐに顔を離す。すっかり蕩けた顔の彼と視線を合わせると、なんだか堪らなくなってまた口付けてしまった。
大切な飼い猫相手に、僕は何をやっているんだろうな。












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