珍しく雪が降った。
5時間目くらいから降り始めた雪は放課後になっても止む気配はなかった。
車の上に積もるだけじゃなくて道路にも校庭にも芝生にもたくさん積もった。
東京で生活してるせいか雪はやっぱり珍しくて。
子供みたいって思われるかもしてないけど、とてもわくわくしたんだ。
わくわくしすぎて先生に落ち着きがないって注意されたけど、この際気にしない。
だって教室の外は見慣れた景色なのに、一面白銀の世界へと変わってるんだもん。
注意されたことなんかちっぽけなことに思えてくる。
あ、今のはお兄ちゃんには内緒だよ。
怒られちゃうから。
「音無さん!」
「木野先輩!!どうしたんですか?」
HRも終わり帰りの支度をしていると木野先輩が現れた。
相当急いできたのだろう、息が上がっている。
「今日の練習お休みだって。なんでも雪でドロドロのグラウンドでサッカーするグラウンドに悪いらしくて…。一年生に伝えてもらえる?」
残念そうな先輩にわかりましたと笑顔で伝える。
「あ、私風丸君のクラスにも伝えに行かなきゃだから」
「はーい。お疲れ様です」
来た時同様ダッシュで行ってしまう木野先輩。
雪の湿気のせいで廊下が湿っているから転ばないか心配だな。
「って私も伝えにいかないと」
勢いよく立ちあがりまずは教室にいるメンバーから伝えていくことにした。
「あとは木暮君だけなんだけど…」
木暮君の教室に行ってみるが姿はなかった。
荷物もなかったのでまさかと思い部室へと急いだ。
彼はいつも一番で部室に行って準備をしていた。
漫遊寺の時の癖が抜けないと以前言っていたのを思い出した。
靴を履き替え部室へと向かう。
部室までは一本道。
その一本道に一筋の足あと。
やっぱり私の予想は当たっているようだ。
雪を予測してなかったので普段通りのローファーを私は恨んだ。
雪は降り止んでいるものの積もっている雪は歩きづらい。
それに隙間から隙が入ってきて足はもうビチョビチョだった。
そしてやっとの思いで部室の前に辿りつく。
「木暮くん」
「うわっ!!びっくりした」
勢いよく開けるとドアの音が室内に響いた。
次にボールが床に落ちて弾む音がした。
「…ってなんだ音無かよ」
ボールを拾い上げてボール拭きの続きを始めた。
そういえば木暮君いつもボール磨きしてから練習するもんね。
「なんだってなによ」
腕を組み睨みつけると視線を逸らされた。
「せっかく連絡しに来たのになー」
「連絡って何だ?」
きょとんと小首を傾げる木暮君。
身長は私より高くなったはずなのに、あの頃のかわいさは健在だからなんか憎めない。
「今日の練習は雪でお休みでーす」
「まじかよ!?」
本日二度目。
床に落ちたボールの音が響いた。
「だからさ一緒に帰ろう」
木暮君の支度が終わるまであまり時間がかからなかった。
空は灰色。
また雪が降り出しそうだった。
それをみんな感じてか学校にはあまり人が残っていなかった。
「足元、気をつけろよ」
「ありがと…」
2人っきりというのはさほど珍しいことではないのに今日に限ってドキドキしてしまう自分がいる。
「お前鈍くさいんだから」
「別に鈍くさくなんてないわよ!」
うっしっしと特徴のある笑い方で人の事を馬鹿にしてくるのは相変わらず。
絶対ムードとかロマンチックとかいう単語は木暮君とは無縁な気がする。
わざと早歩きで進む。
こっちは早く歩いてるつもりなのに歩幅が違うせいですぐに追いつかれてしまう。
「うわっ!?」
しかも歩き慣れていない雪の上でしかも今日の私はローファー。
雪に足を取られバランスを崩す。
「………」
転ぶと思っていたがいつまでもその衝撃はなく。
かわりに右腕をがっしりと掴まれる。
「ったく、言った傍から…」
「あり、がと」
頭上から降ってくるため息。
それに比例するように速くなる私の鼓動。
「目の前ですっ転ばれても気分悪いだけだし」
顔を上げるが視線が交わることはなかった。
うっすらと鼻と頬が赤いのは寒さのせいだよねきっと。
「ほら、行くぞ!」
「うん」
無理矢理腕を引かれ、木暮君の歩幅に合わせて歩く。
チラリといつの間にか繋がれた右手を見る。
私のより大きな手はとても温かくて。
「木暮君…」
「なんだよ」
「なんでもない」
外は寒くて温度が心地よかったから、手を解くのは止めにしよう。
*****
ノマカプ難しい><
木春は好きだが読む専門なんでちゃんと書けてるか心配です。
要らなかったらぶん投げて返してやってください。
お持ち帰りはみず様のみOKです。
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