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32日目
朝、登校して自分の席に座ってから、彼に向けてメールを打った。
昨日良い子にしていたご褒美をあげるので、昼休憩に屋上に来てください。
彼がこの文章に従うかどうかは分らない。だが、これはある種の実験のようなものでもある。送信したメールの文章を読み返して、僕は一人ほくそ笑んだ。
昼休憩になり、来るか来ないかは分らないが、一応屋上に向かう。
昼食をゆっくり食べて少し遅めに行ったのに、約束の場所には誰もいなかった。
来ないか。そう思ってフェンスによりかかっていたら、耳障りな音をたてながら屋上の扉が開かれた。そこからちょっとだけ彼が顔を覗かせ、きょろきょろと辺りを見回す。
小動物を思い起こすようなその動作に、思わず笑ってしまった。
彼が僕の姿を見つけてから、おいで、とでも言うように手で招いてやると、ちょっと顔を落としながら僕に近づいてきた。
来てくれたんですね、嬉しいです。そう伝えると、はっと顔を上げる。
頭を優しく撫でてやりながら、僕は彼をコンクリートの上に座らせた。
汚れないように制服をちゃんと脱がせて、前も後ろも弄ってやると、あんあんとはしたない声をあげながら、何度も達していた。



33日目
そろそろ機関にも連絡を取っておいたほうがいいだろう。
しかし、ここまであちらから何の指令も無いとは、不思議なものだ。
いつもなら何か用件を賜った時は、細やかに連絡があったのに。
まずは森さんに電話をかけてみる。
何かあったのか、と聞かれたので、この間の件です、と答えたら、何のことか分からないと返ってきた。
何を言っているのですか。彼を僕らに味方させようって話ですよ、と言ったら、ああ、あれね…。そこで一旦言葉を区切った。疲れているのか、テンションの低い声で続ける。
―あれ、冗談よ。あなたがあまりにも彼の言動が気に入らないと文句を言うものだから、ちょっと言ってみただけ。だいたい大切な鍵であるあの子に、そんな無体な事できるわけないでしょう。実行なんてしようものなら犯罪の一種よ……

続けて自分の身の回りであった出来事の愚痴でも言っているのか、相変わらずの低いテンションのまま何かを話している。
だが、僕はそれどころじゃなかった。
…いまさら、ごめんなさい?



34日目
一晩悩み明かしてしまった。
犯罪……犯罪?
ですよね、としか返答のし様が無い。
たしかに僕らの所属する機関は、傍から見れば妖しい秘密結社のような所ではあるが、犯罪組織ではない。一部過激な事を考えている連中もいるものの、上の人間がそれを許す訳も無い。
ちょっと考えればおかしいことだらけだ。なんで僕は何も考えずに思い込んだまま突っ走ってしまったのか。
ああ、消え去りたい。僕なんて始めからいなかったことになればいいのに。
今日も学校を休んで自宅に引きこもってしまいたかったが、さすがに先週休みすぎてしまった為、今週は休めない。
むしろ、引きこもりになりたい。貝になりたい。
うだうだと悩みながら、廊下の真ん中で項垂れていたら突然後ろから元気良く背中を叩かれた。
「古泉くん!どうしたのよ、元気ないわね!」涼宮さんは、僕とは対照的に明るい笑顔で話しかけてきた。叩かれた背中がじんじんと痛む。
「悩みでもあるの?あたしに言ってみなさい!相談に乗ってあげるわよ!」いえいえあなたにありのままを話したら僕はきっと悩むことすらできなくなってしまいますよ。
なんて思ったが、せっかくのご好意に甘えさせてもらうことにした。
人のちょっとした冗談を信じてしまって、取り返しのつかないかもしれないことをしてしまったんです。なんて、抽象的なことをぼそぼそと口にしてみたら、涼宮さんは特に悩む事無くあっさりと「取り返しのつかないことでも、終わってしまったことはしょうがないわ。過去には戻れないもの!」たしかに、その通りではあるんですけど、ね。彼女は自信満々に話す。
「間違った事だったとしても、今まで古泉くんは自分は間違っていないと信じていたんでしょう?なら、それはそれで自分の信じた道を進んだんだって、自信を持ちなさい」自信、ですか。肩を落としたままの僕を叱咤するように、またばしんと背中を叩いてきた。痛い。
「落ち込んでいる時はね、後ろばかり見がちだけど、本当に向くべき方向は前なのよ!」何やら上の方を指差して、そう叫ぶ。
そうだ、いつまでも悩んでいてもしょうがない。
まず僕がするべきことは、彼に今までの行動を謝罪することなんじゃないか。
僕はそのまま走り出した。五組の教室に向けて。
しかし、曲がり角を曲がろうとしたら向かい側から何者かが飛び出してきて、突き飛ばしてしまった。
焦って謝りながら相手を見てみると、そこには僕の求めていた彼の姿がある。僕に突き飛ばされ腰でも打ったのか、尻餅をついたまま自分で背中の辺りを撫でていた。
あ、謝らなければ…今まで僕が彼にしてしまった事を。
しかし。
今僕の目前で、痛みに呻きつつ顔を歪めている彼の顔を見つめる。
…あ、もう、無理だ。
床に座ったままの彼を廊下の隅にまで引っ張って行き、後ろから抱き締めてやった。強張る身体を優しく包みながら、へその下をなぞるようにして下着の中に手のひらを滑り込ませる。
雁首を握り、親指で亀頭を押しつぶした。鼻にかかったような吐息が耳を霞める。
むず痒い感覚が腰に響いた。僕の身体にもだんだんと熱が宿ってくる。
包み込むようにぎゅう、と彼のペニスの先端を握り込めば、たらたらと流れる汁が指を濡らした。
指先で尿道を弄ってあげると、びくびくと背筋を逸らせる。
こんな時間から下着を汚すのは可哀相だったので、下は脱がせて僕の掌に出させた。ついでに、吐き出された自分のものを本人に舐めとらせる。
嫌そうな顔をしながらも、少しずつ僕に従っていく姿がたまらない。その様さえ見れれば、僕自身の性欲処理なんてどうでもいいんだ。
廊下で彼と別れてから、自分が何をしようとしていたか思い出した。
別に行為中は忘れていたわけじゃない。覚えていた。
だけど…いや、もう何を言っても言い訳にしかならないだろう。
どうやら当初の目的と手段が、逆転してしまっていたようだ。



35日目
もう自分の欲望に素直になることにした。
どうやら僕は、彼をいじめるのが楽しくて仕方が無いらしい。
今まで僕は世界に絶望してばかりだった。これくらいの楽しみはあってもいいじゃないか。
免罪符にしかならない言い訳だが、もう引き返す事なんて出来ない。したくもない。
とか頭の中で考えながらも、片手ではマウスを操作して、通信販売の手続きをしていた。画面に映された黒い背景に、ファッションピンクの文字。目が痛い。
今度彼をうちに呼んだ時のために、色んな遊び道具を仕入れておくのだ。
僕って最低だなぁ…なんて他人事のように考えた。










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