23日目 休憩時間、特にすることも無いので彼の5組の教室の前をうろうろしていたら、彼が一人教室から出て行くのが見えた。 どこに行くのかと思って後をつけてみれば、トイレだった。 気配を消して近づき、用を足している彼の後ろに立つ。 彼が気づく様子は無い。普通背後に人が立っていたら分かるものじゃないのか。この能天気ぶりはある意味歓心する。だから僕のような者につけこまれてしまうんだ。 用件が終わったらしい、俯きながら振り返った彼の腕を掴む。彼が心底驚いたように僕を見上げた。 掴んだ腕を引っ張り、個室のドアに体を押し付けてやる。ぎろりと僕を見上げる目の周りは、ほんのりと赤い。 股の間に足を入れて、太腿を押し付けてやると微かに呻き声が漏れた。 そのままぐいぐいと腿を押しながら、掴んだ手のひらにも強く力を込めてやる。 指が肌に食いこんで痛いだろうに。嫌がる素振りはあまり見られない。 もう抵抗は無駄だと思い始めてしまったのだろうか。つまらない。 このまま刺激していたら、ズボンの中でも射精するかどうかためしてみたかったが、廊下の方から足音が聞こえてきた。 こんな光景を見られて教師に告げ口でもされてしまったら困る。 手を離して解放してやると、よろりと体を揺らし、個室の扉にもたれかかった。 あとは自己処理なりなんなり勝手にすればいい。 24日目 今日は涼宮さんの提案で少し遠出をして不思議探索に出かけることになった。 自発的にかどうかは知らないが、朝比奈さんが手作り弁当を作ってきてくれて、これはもう不思議探索と言うよりみんなでピクニックとでも言ったほうが正しいだろう。 朝比奈さんの弁当に、気持ちが悪いほどテンションが上がっている彼が癪に障る。僕の前ではいつも顰め面なくせに。 その日は結局、全員一緒に行動して、ゲームセンターに寄ってみたり、公園で昼食をとりゆっくり休憩をしてから帰宅、というスケジュールになった。 帰りの電車は時間帯が夕方だったためか、人が多く混雑している。 涼宮さんたちは女性専用車両に乗るらしく、男同士仲良く人ごみに揉まれてなさい!などと言いながら、他の二人を連れて行ってしまった。 言われなくとも、勝手に仲良くさせてもらいますよ。 なんて考えながら、はぐれないように彼の手を掴んで電車に乗り込む。 雑踏した車内では、立っているのがやっとで、強制的に周囲の人間と体が触れ合う。もちろん、目の前にいる彼と僕も。 別に何かしようとしていた訳ではない。だが、密着した状態で彼の顔を見下ろしてみると、咄嗟に顔を逸らされた。不愉快だ。 密着した状態のまま、彼の背中に腕を回す。別に抱き締めようとしている訳ではない。 背筋をなぞるように指先に下から上へ滑らせた。彼がぴくりと肩を震わせる。 その反応を見ながら、衣服の中に手のひらを潜ませた。脇腹を行き来させながら、肌の感触を楽しむ。とは言っても、女性の肌に比べたら触り心地は良いとは言えないが。 髪の毛の間からちらりと見える彼の耳が、真っ赤に染まっている。恥かしいのだろう。いい気味だ。 はぁ、と熱い息遣いを聞いて、彼の唇に視線を移す。 半開きで少しばかり濡れたそこは、薄い紅に彩られ、吸い付いてしまいたくなる。 って……あ、……? 一瞬、自分が何を考えたか理解できなくて、手の動きが止まってしまった。 それを見計らったかのように目的の駅に到着し、扉が開く。 降りないといけない。 キス、したいだなんて、恋人同士じゃあるまいし。何を考えているんだ。 相変わらず混雑した車内を半分無理に移動し、扉から出る。今度は彼の手なんて引いてやらない。 人ごみに流されそうになっている彼を横目で見ながら、先に涼宮さん達と合流する。少し遅れて彼も多少乱れた衣服のままよたよたと歩いてきた。 その怠けたようにも見える姿に、涼宮さんが駆け寄ってだらしないわね!と彼の背中を叩いた。良い音が当たりに響く。 そのまま、涼宮さんと言い争いをしながら歩く彼の姿は、普段と同じものだ。 少し前まで僕にすがり付いていたあの光景が信じられない。どうしてすぐになんでもなかったように振舞えるのだろうか。 別れ際でも、以前と同じようにみんなに「またな」と声をかけて、ちらりと僕と視線を合わせてから去って行った。 その、無神経な所が大嫌いだ。 25日目 なんとなく誰にも会いたくなくて、学校を休んでしまった。 出席日数は十分足りているから、多少サボっても学業に問題は無い。 ノートは後でクラスメートに写させてもらえばすむ。 26日目 昨日だらだらと一日中眠っていたら、どうやら本当に体調が悪くなってしまっていたらしい。 頭が痛かったので熱を測ってみたら、37度6分あった。 その気になればまだ登校できるレベルではあるが、今日も休んでしまおう。 僕がいなくても、あまり部活動には支障は出ないだろうし。 27日目 一回怠惰な生活を送りだすと、なかなか癖になりやすいものだ。 朝起きたら熱は下がっていた。それでも微熱レベルだったが。 登校するべきか悩んだが、病み上がりに無理をしたらまた体調を崩してしまうかもしれないし、今日も休んでしまおう。 ベッドの中でだらだらとしていたら、メールが一件入ってきた。 涼宮さんからで、内容は体調は大丈夫か、ちゃんとご飯は食べているのか、そういった文章がつづられている。 彼女もなかなか面倒見の良い人だし、一人暮らしの僕の身を案じてくれているのだろう。 とりあえず、大丈夫です、と返信しておいた。 彼女に気を使わせてしまった。 明日はちゃんと登校しよう。 |