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「お花を差し上げましょう」

少女はにっこり笑って私の髪に花を飾った。
ちらと見たその花はとても綺麗なものだったので慌てて

「いけない神子、こんな私にはふさわしくない勿体無い」

そう、言ってしまった。言ってしまってから嗚呼と酷い後悔を覚える。
この優しいひとは自分のこういう物言いにとても悲しむというのに。
どうして優しさを貰っておいて悲しみを返してしまうのか―…謝らなければ、と思うのにあの痛みをたたえた表情を見る勇気が無くて、うつ向いてしまう自分を情けなく思っていると

「貰ってくれない方が勿体無いです」

ほわり、常の日だまりのような朗らかな声が降って来た。それに驚いて顔を上げると、予想していた悲しい表情なんて、
なくて。

「このお花、敦盛さんに見せたくて摘んで来たんです。敦盛さんが貰ってくれなかったら意味がないです」

ゆっくりと紡がれる言葉は、笑顔は、優しさに満ちていて。

それにね、と。
少しはしゃいだような調子で少女は自身の髪に触れた。
その手には

「…あっ」

先程ちらと見た、今自分の髪に飾らている花と、同じ花。

「ね、お揃い」

少女もまたそれを髪に飾り“本当の本当はこれがしたかったのだ”と二人しかいないのに内緒話のように囁いて、くるり、身を翻した。

「み、神子、」

慌てて視線で追えば、振り返った少女弾んだ声で嬉しそうに楽しそうに

「お花、とっても似合いますよ敦盛さん!」

そう、花のように微笑った。



(嗚呼)
(貴女という花は)
(本物の花すら霞ませるほど!)
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2008/3/22◆凉鳴◆

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