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《二超新星・サンプル》



 永く続いた室町の世。
 将軍・足利義輝によって為された『天政奉還』によって動乱の時代
となった戦国乱世を制したのは、奥州の竜・伊達政宗だった。
 若き竜は『竜王』と名乗りをあげて、天下統一を成し遂げ、日ノ本をその掌中に収める。
 政宗の願いは、光望める天下を創ること――夢と希望に満ちた、明るい時代の創世である。
 政宗には明確な展望があった。誰もが幸せを甘受できる世にするという強い意志があった。
 だから、敵ですら戦いが終われば己の軍の一員だと認めて受け入れたし、自分自身の進む道を見失った者が居れば手を差し伸べて導いた。
 世をあまねく照らす、新しい光。そして包み込む優しい風。
 苛烈なる竜は王座に就いて、慈悲の存在となる。


 ――さて、全てを手に入れた王よ。
 おまえはそれで、満足か?


    ◇    ◇    ◇


 ふと空気の流れを感じて、政宗は目を覚ました。
 元々眠りは浅い。平和な世になっても、戦乱の頃の癖は抜けきれず、どうしてもちょっとした気配や風の動きを感じると目が覚めてしまう。
 それでも、今日は随分とマシだ――何故なら、腕に愛しいぬくもりを抱きしめながら眠ることが出来たのだから。愛しい相手の体温は安らぎを与えてくれて、緊張した心を緩めてくれる。だから、共寝をした時は普段よりもぐっすりと眠れて、目覚めも良いのだ。
 しかし、今、政宗の眠りを妨げたのは、当のその温もりの主――愛しい恋人だ。
「……申し訳ありませぬ、起こしてしまいましたか」
 政宗が目を覚ましたのに気付いたのか、振り返ると、小さく抑えた声で彼は詫びた。
 彼――すなわち、真田幸村である。
 先に一人寝床を出て、夜着をきちんと着直していた。
「いや……気にするな」
 目が覚めたばかりで少しぼんやりとした頭を目覚めさせるように、政宗はぐっと手の平を額と目元に押し当てる。明け方の空気に冷やされた額はひんやりとしている。体調は、悪くない。圧迫しながら、心の中で数を数えた。one,two,three――
 三つ数えたところで、政宗はがさり、と乱暴な手つきで長く伸ばした髪を掻き上げた。眼帯は外してある。髪を押さえるものがないから、髪は政宗の手の動きに素直に従う。へんに引っ張られたり、乱れたりすることがない分、楽な気分だ。
「起きられるので?」
 部屋は暗く、夜明けはまだ迎えていない。起きるには些か早い頃合いだ。それでなくても政宗は眠りが浅い分寝汚いところがあって、朝に弱い。ずるずると何度も寝直して、朝餉の時間を越えることなどざらにある話だ。
 幸村はそれをよく知っていた。
 対する幸村は、朝に強い。早朝から鍛錬する習慣が色濃く染みついていて、夜明けの気配を感じれば自然と目が覚める。冬であれば夜明け前にはすでに起きているくらいだ。
 なので、普段は幸村は起こしても起きない政宗をおいて、寝所から出て行くのだが―――
「アンタの見送りは、してやりたいからな」
 くあ、と、政宗は大きく口を開けて背伸びした。自然と洩れる呻きめいた声とともに、あくびで吐き出した眠気の篭もった息の代わりに入り込んだ新鮮な空気が体中へと行き渡る。眠気はまだ強いが少しばかりはすっきりとした。体が少しばかりだるいのは――眠気のせい、ではないだろう。
 体を起こすと、くしゃりと崩れた夜着が肩から落ちる。それを座ったままで着直していると、傍らの幸村が羽織りをやわらかく肩からかけてくれた。
 恋人の良く出来た振舞いに、自然と笑みが浮かぶ。離れる手を取って引き寄せ、近づく彼の唇に、軽く触れるだけの口付けを送った。
「Good morning,My Darling」
 低く囁けば、途端、幸村はかあっと顔を真っ赤に染め上げる。お約束のような反応に、くすり、と笑みを洩らすと、男ぶりの良いその笑顔にいっそう幸村は顔を赤らめた。



(中略)



「……では、某はこれにて……」
 残すところは局部だけだが――いくら恋人とはいえ、そこを拭くのは些か抵抗がある。
 嫌というわけではない。
 だが、いくら何でもそれはお互い恥ずかしいだろう。
 夜の寝所で睦み合う時であれば、互いの下帯を解きはするが、療養をしている最中の、湯浴み代わりに体を拭いている時は、言わば平時とは変わらないのだ。
 ――しかし。
 政宗の手は、幸村の手ごと手拭いを掴んだ。
「……なあ、幸村」
 その手を、政宗は下帯に包まれた陰部へと導く。
「!」
 手拭いごしに、政宗のそれが固く張り詰めているのを感じて、幸村はごくり、と息を飲んだ。
 湯を通したとはいえ、とうに冷めた冷たい手拭いの向こうで、政宗は熱くなっていた。
「あ、あの……っ……」
「……悪いな、どうやら興奮しちまったらしい」
 そもそもアンタと寝所に篭もってちゃこうもなるよな、と嘯く政宗に、幸村は音を立てる勢いで顔を真っ赤にする。
「き、貴殿は、不調でござろう……!」
「この状態でそう言えるか?」
「……っ……」
 幸村という他者の――恋人の手を感じたせいか、政宗の陽物は大きさも角度も変えて、下帯を押し上げている。手の平に感じるその逞しい変化に、幸村は何も言えなくなってしまった。
「こ、こうなることを望んでいらしたのか……!」
 だとすれば、己はあまりにお手軽すぎる、と眼差しに険を含めれば、政宗は苦笑して首を横に振った。
「NO.ただ、アンタの手を感じているうちに、自然とこうなっちまった。……仕方ねえだろ、アンタが毎日側にいてくれてるっていうのに、俺はずっと寝たきりで、アンタに触れることも出来なかったんだ」
 どれだけアンタに触れてないと思ってるんだ、と隻眼が問いかける。その言葉に誘われるように、前の逢瀬を思い出せば、随分前のように思えて――途端、ぞく、と背筋に熱が走った。
 政宗が久しぶりだと思うのならば、それは同時に幸村にとっても同じである。
 積極的なのは政宗だが、幸村が情欲に対して消極的というわけではない。羞恥心は人一倍強いが、政宗と――思いを通じた恋人と為す艶事を決して嫌ってなどいないし、快楽は快楽として、政宗の手管一つ一つを素直に受け止めていた。
 ――だから、政宗に誘われ乞われれば、意識や体が、もたらされる快楽を思い出してしまう。
 そっと、政宗は幸村の手を掴んだまま上下に動かした。
 畳んだ手拭いと下帯の向こうで政宗自身が雄々しさを増して、ふ、と政宗は熱の篭もった吐息を落とした。
「やべぇな……久しぶりだから、早いかもしれねえ……」

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……続きは本でお楽しみいただけたら嬉しいです!(>_<)/


あきゅろす。
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