※現パロ


部屋に煙草の匂いがむせるほどよどんでいる。
部屋を一歩出た後の今でも、衣服や髪はその犠牲のあかつきだった。


バクラとセックスをした次の日はいつも煙草の匂いにまみれてた。
ヘビースモーカーなあいつはいつも僕の部屋を灰で汚し、その後のキスは嫌味なくらい不味くて苦ったらしい。
基本、暑さをひどく好まない僕はいつも部屋の温度を快適な一定温度に保ちたがる。
外はうだるような暑さでも室内は身震いするほど寒いと友人関でも不評なそこは、ブラインドで閉ざしたわずかな光と締め切った閉鎖的な静寂の空間でできていた。
僕はそこにいることがなにより大好きで、閉鎖的になればなるほど心は満たされるはずなのに、一度バクラがあらわれれば閉鎖的な空間はより重みを増す。
換気を伴わないそれを考慮すれば気分的にも空気清浄機を購入する立派な動機となるが、残念ながら僕にはそれを買うほど金銭に余裕はない。
いつもバクラのくわえた煙草は灰皿を山積みに汚し、部屋中を盛大にニコチンで染め上げた確信犯である。
灰皿からこぼれた吸殻を掃除するのも面倒で仕方がないと腰をあげるのは奴が無責任にする事だけさっさとやって帰った後の日課だ。
引っ越してきた当初、真っ白が売りだった天井と壁紙はいつしか土足の足跡をつけるように存在をしっかりと残した。

バクラのセックスは一人よがりな僕を嗜むように出来ていて実に冷めている。
お互いが吐けるものを吐き出せば終わるという時もあれば飽きるまでキスをして唇を腫れあがらさせたり、ましてや場所も面倒なら風呂であれ台所であれベッドに辿り着く前に早々と片一方が絶頂するなんていう適当さだ。
とにかく気持ちの入ったセックスほどバクラは嫌がる。僕もそうなった。
求めるままに舌を舐めずり生温かな精液が渇く前に再度反り起つ熱を消化させるためだけに腰をふる。
前座もなければまた挿入も唐突で、痛みに慣れる慣れない以前にバクラにマニアックな性癖嗜好がないことだけは唯一の利点であった。
だが冷えた室内の汗と精液でぬめる床に絡み付く煙草の煙と灰は最悪以外のなにものでもない。
嫌悪の顔をすればする程バクラはここぞって灰を散らす。
だからお前死ねばいいのにと笑顔でいえば腹を抱えて笑うのだ。
全てはお互い自己満足の為に僕の部屋は格好の餌食として利用される。

今日もきっとバクラは来る。
閉ざされた真昼の光の部屋に煙草を買い込んで。
ゆるやかな思考と手に物つエコバッグを揺らしながら太陽を見上げた矢先、瞳に入る白い髪は玄関先でにったりと笑っていて僕はまた鼻で笑い飛ばしてやった。
いっそ台風でも雨でも槍でも降ればよかっただろうに。
そうしたら少しはまともなセックスを楽しめたのかもしれない。

「相当暇人だね、お前」
「その作り物の面ひっさげたテメェよかましだな」
「誉め言葉?」





*

ばくばくはさばさばとした体関係がいいなと思います。
好きか嫌いかといわれたら別に相性がいいからみたいな割り切り。
ぬしとバクラは相当シビアでリアリストであればいい。



H22/6/23






あきゅろす。
無料HPエムペ!