※読む前に※
この作品は時を越えた絆!
ならぬサイトを越えた絆!
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『ん。』 伊澄氏の天人(バクラの生まれ変わりの小学校高学年)と宿主

『ゆるゆる』 ダイスケ氏のアテム(王様の生まれ変わりの六歳児)と相棒

拙宅の京介(鬼柳さんが何故かショタ化して遊星が預かってる六歳児)と遊星

一見無縁なこの六人に一体何かが起きる!?
それでは本編にどうぞ!






その日京介は機嫌が悪かった。
ふにふにな頬を何度も膨らませ相棒のコカパクアプのぬいぐるみに八つ当たりして、飽きたかと思えばじたばたして。
そんな京介の不機嫌全開にいつもの遊星ならば自分に非がなくとも諦めて機嫌をとるようなことをしてやるが今日はそうじゃない。
ただでさえ無表情の顔は益々乏しくなり、まるで機械のように制限されている。
お互いがそれぞれ不機嫌をかもしだして、ぴしりと出来た境界線はひどく冷たかった。
ではことの成り行きは?
時間はわずか1時間前にさかのぼる。
そもそもこんなことになったのは些細な、本当に下らないことだった。

今現在、遊星は走っていた。
とにかく人にぶつからないよう彼は盛大な努力をして室内を目配りしている。
場所は2階フロア、そうショッピングモールの中である。
ただそれはそんじょそこらのちんけなショッピングモールとはわけが違っていた。
なにせ先月オープンしたばかりのここは1日や2日では見渡せない広さを誇ることが売りなくらい大規模で、入っている店数も桁違い。
普段なら楽しめる広さも今はそれがかえって恨めしかった。

「あの…すいません、男の子を見ませんでしたか」

遊星が周りが見えなくなるなんてことは滅多にない。つまり相当焦っている証拠だ。
唐突に話を切り出した相手は店の店員でもなくただ玩具売場でカードを見ていた男だった。
理由は安易ともいえる。
平日の昼間だけあって売り場の店員が極端に少なく、そうなれば探す手間より適当に目についた人間に手当たり次第声をかけることが彼なりの早急な手段だったらしい。
まぁ何故その男にしたかといえば、その肩には子供用の斜めがけカバンを持っていたし何より子供服のショッパーを手にしていたから。
子供が居るエリアに長くいたかもしれないという予想からだった。

「えっと、どんな?」

首をかしげて笑う相手にようやく遊星は我にかえった。
そう、見た目の特徴も伝えるわけでもなく、ただ単に子供というくくりだけで問うには無理がありすぎる。
このデパートに一体何人の子供が出入りしているというのだ。はっきりいって数えだしたらキリがない。
見抜かれたような穏やかな眼差しに、息切れをする呼吸を落ち着かせ遊星は改めて探しものを頭に描く。

「大きな、黒いぬいぐるみをもった…髪は銀色の、六歳の男の子なんですが」
「うーん、………あ!見たよ」
「本当ですか!?」
「一時間くらい前に…あれだよね、巨大ぬいぐるみずるずるした子」
「そうです、それです」
「確か4階のフードコートだったかなぁ」
「ありがとうございます」
「あ、待って」

駄目もとで尋ねた幸先の良さ。即座に身を翻えそうとした遊星を男はゆるりとした趣で引き止めた。
焦っている遊星とは違い、柔らかな独特のテンポで会話を繋げていた男はずいぶんと落ち着いて言葉を選ぶ。

「あれからまた時間がたっているし、お節介かもしれないけど迷子センターにいったほうがいいよ?」
「あ…そう、ですね…そうします」
「早く見つかるといいね」

笑顔の見送りに会釈をして遊星はまた走り出した。
その背中がなんと初々しいことか。ぱっと見の外見からはあまり想像出来ない慌てた姿に男は微笑ましさを隠せない。

「ふーん。ずいぶん若いパパなんだなぁ」

男――獏良了はいらぬ予想と感心を抱きながら、持っていたカードパックをフックにかけなおして携帯で時間を確認した。

「しっかしうちの天人はまたどっかで寄り道してるな」

きょろり、辺りを見回しながらトイレに行くと行ったきり帰ってこない我が子の行く先を予想して獏良はその場を後にした。





*

「これすごいっ!」

大きなマシュマロンのリュックを背中に引っ提げてアテムは2階の雑貨エリアで歓喜の声をあげていた。

この日アテムは朝から機嫌がよかった。
遠出だが新しく出来たデパートへ遊戯と2人買い物に来たからである。
朝からそわそわマハードの餌も大盛りにしてしまうくらい張り切っていたアテムはデパートに何を期待していたのだろうか。
未知なる生物に遭遇したって同じテンションをだせるのが天真爛漫なアテムのいいところ。
そんな楽しさを隠せないのが可愛らしいなと遊戯も自然と頬を緩ませて2人は家を出た。
今回ここまで交通の便がいいこともあり遊戯の荒っぽい運転から回避されたアテムは乗り継ぐ電車内でもきゃっきゃ嬉しそうにはしゃぐ。
到着してからはこれでもかと目を輝かせて買い物をしていたのだが、遊戯はその傍らである心配を抱いていた。
人が少ないといえどこれだけの敷地面積を考慮すれば迷子だけは絶対に避けなければならない。
ただでさえ前科がある息子に自身の肝に強く命じた遊戯。
しかしそんな願いも虚しく、再三注意の目を配らせていた遊戯の知らぬ真にアテムは忽然と姿を消した。
ただ音もなく、目印ともなるマシュマロンと共に。
好奇心旺盛な年頃だけに仕方のないことだったが否めない結果に前回の当事者の男に静かに同情をする。
そうして現在、心配する遊戯を差し置いて当の本人アテムはといえば。

「おーこれなんだ!」

もはや迷子という認識すらなかった。
遊戯の見当たらないことに気付いた素振りもなく、意気揚々と通る雑貨屋にある小物を珍しげに見ては次から次につついてる。
その場でじっとしているか、あるいは来た道を戻れればまだ遊戯も然程苦労しないであろうに、いかせんアテムはじっとすることが苦手だ。
二人の距離は知らず知らずと離れていってしまっている。

「ゆーせいーゆーせいー!」
「!」

そんな時、アテムがジグザグに華麗な動きで人の波を避けて走っていると子供の声がどこからかすることに気が付いた。

「……ゆーせ!ゆ、…ゆーせいなんかしらねぇもん!」

アテムが大人をかきわけて見つけたその正体は自分と同じくらいの背格好をした男の子だった。
その子は辺りを見渡しながら誰かを必死に呼んでいたが、頬を膨らませると見上げてた視線を下げ座りこむ。
おそらく連れて来てもらった人物とはぐれたのだろう。
寂しそうにいじけるその男の子だがアテムが気になったのはどうやら違うことらしい。

「おまえいいもんもってる!」
「は?」

即座に隣へ駆け寄るとその男の子が持つ大きなぬいぐるみにアテムは興味を示した。
立ち止まった今はともかく、先ほどまで叫びながら引きずっていたぬいぐるみは大きすぎてある意味不気味で大変目立っていた。
目についたのはアテムだけではなく道行く人々皆だ。
真っ黒に青いラインの入ったそのぬいぐるみは何かモチーフのキャラクターがいるのだろうか。
大人たちは冷静な目で予想をたてたが、幼いアテムにはまだ見当もつかない。
ただ見たこともないその外見にすっかり心を奪われてしまい笑顔で問い掛ける。

「なぁそれかっこいい!どうしたんだ?」
「お、おまえアプのよさがわかるなんてさいこうじゃねぇか!これはクロウにつくってもらったんだ!いいだろ!」
「おー!」

始めは警戒していた男の子も誉められて悪い気にはならなかったようだ。
誇らしげに口にするあたりいささか単純である。
前に突き出して嬉しそうにぼふりと抱きしめているぬいぐるみは若干苦しそうにも見えた。

「とーさんみて!あれ、とーさん?」
「?」
「とーさん……いない」
「?はぐれたのか」
「とーさんまいごになった!!」
「??それおまえがまいごなんじゃねぇか…?」
「ちがう!とーさんがはぐれたんだ!さがさなきゃ!」

座り込んで話していたアテムはようやく遊戯とはぐれたことを自覚した。
早々と立ち上がるとじゃあな!と歩きだす。話かけるのが突然なら去るのも唐突である。
置き去りにされた男の子はただあんぐりと口を開けてそれを見ていたが、やがて慌ててぬいぐるみをまた引きずってアテムの後ろを追い掛ける。

「おまえなんでついてくる?」
「う、うるせぇ!ひまだからだ!オレはまだまんぞくにしゃべってもいねぇぞっ!」
「?いましゃべってる」
「オレをまんぞくさせろ!」
「まんぞく??」

噛み合わない発言を繰り返しながら自然と並んで歩く2人。
だがその行く手を阻むように先に見えたのは誘惑エリア・ゲーセンだ。
果たしてその難関エリアを二人は見事スルーして進む事が出来るのか?
男の子――鬼柳京介は相棒のコカパクアプ(通称アプ)、そしてアテムと共に前へ踏み込んでいった。





*

子供達が呑気にうろついている頃、忙しなく移動していた遊星はある人物と鉢合わせをしていた。
今まさに隣を一緒に歩くのは先輩に当たる遊星憧れの人物だった。

「そっか君もなんだ」
「ええ、まさか遊戯さんもとは…」
「うちの息子はまあ前科があるからね」
「そうなんですか?」
「本人はきっと迷子になったとも思ってないぜ?そういう遊星も迷子になる歳の子を持つなんてやるな」
「え?」

彼――武藤遊戯の目が面白可笑しく笑っていたことに遊星はすっかり困り果てて思わず苦笑をこぼした。
遊星は元々こういったことに疎い性格なので切り返しが上手く出来なく言葉を詰まらせる。
だから遊戯の興味は自然とそちらにむいたのだ。

「いえあの、本当に預かっている子なので…俺の子と聞かれると…」
「わかってるよ、ごめんごめんちょっと楽しくて。君ってきっとよくからかわれない?」
「……」

勿論遊星にそんな自覚はなかった。
からかわれていることにすら気付かないのは仲間内で有名である。
本人がおいてけぼりなのはしょっちゅうだ。
でもそれはきっと皆に愛されてるこそではないかなとふと遊戯は思った。
過去談からもれた僅かな情報に納得する遊戯とは裏腹に、遊星はただ不思議そうに首を傾げていた。

「そういえば君は何でまたはぐれたの?」
「……」
「喧嘩?」
「!」
「顔にそうかいてあるよ」

思わぬ図星をつかれて遊星は言葉をまたつまらせる。
その外見のクールさには似つかわしく珍しく罰の悪い顔。
遊星はそれを隠すように口元に掌をあてると反対に少しだけ厳しい顔で遊戯は問う。

「どうしてまた」
「…本当に、下らない理由なんです」
「うん」
「チョコを…」
「え?」
「食べられて、しまい」
「………へ?」

まさかの解答に呆気にとられたのは誰でもない、遊戯だった。
神妙な面持ちで息をつく遊星は至って真面目そのもので嘘や冗談をいっているわけではない。
ただあまりに見事な変化球が来たことに、遊戯は比例出来ない可笑しさに肩を震わせて笑いを必死に噛み締める。

「ごめ…っ、笑っちゃ、悪いね」
「…いえ」

遊星も遊星でそれとなく察した状況に気にしている様子である。
つまり要約するとこうだ。
遊星と京介は朝からこのデパートへ来て昼過ぎ、4階フードコートでおやつを食べていたそうだ。
京介があまりにもパフェを食べたいと連呼したようで仕方なく妥協した遊星は出費を惜しんでそれを買った。
その際にどうせならとトッピングに自分好みのチョコを・と追加した。
そして京介を待たせ近くの給水機から水を紙コップにいれて戻った遊星は我が目を疑った。
楽しみにしていたトッピングのチョコは京介の指と口の横にべったりと付着していて、つまりは待ちきれなくなって先に食べてしまったらしい。
バニラのアイスでも、ウエハースでもバナナでもソフトクリームでもチェリーでもなく、自分が密かに楽しみしていたチョコを。
そして普段怒らなさそうな遊星が珍しく怒ったことですっかりいじけて逆ギレした京介と境界線が出来、気付いた時には居なくなっていたそうだ。

「…俺が大人気ないのはわかってます。相手はまだ子供ですし……」

それでも煮え切らない顔をしているのは、わりと無欲そうな彼が余程チョコを好んでいたということだろうか。
大人びた彼もまだまだ子供っぽいところがある。

「いいんじゃないか?」
「え?」
「京介もきっと後悔してるよ」
「遊戯さん…」
「さ、そんな問題児二人を呼び出してもらおうか」

遊戯の見上げた双眸の先にある看板を見て遊星はようやく少しだけ肩の力を抜き扉を開けた。





*

そのとき少年は必死だった。
とにかく眼を見開いて集中させて唾を飲むことさえ躊躇い全神経を指先に込めた。
いざ導かれし場所へきたといわんばかりのタイミング。
狙いを定めたボタンをプッシュすると、それは彼に糸を引かれた人形の如く動いた。
少年は確信を得ていた。俺様最高、と。

「すげーー!!」
「とったーー!」
「!?」

だが少年が喜びにガッツポーズをしたのも束の間、両真隣でガラスにべったり張りつく男の子二人の存在に衝撃を隠せなかった。
クレーンで持ち上げられたその塊はがしゃんと出口に転がり落ちる。

「なんでとれた!?」
「いっぱいあるな!」
「……」
「がしょーんてどうやったらなる?」
「じゃああっち!こんどはあっち!」
「……」
「おれあっちがいいー!」
「オレはあっちがいいんだ!」
「……だーっ!もううっせぇし!!」
「「!」」

少年――獏良天人の忍耐はわりに短かった。
そもそも何故天人がここで俗にいうUFOキャッチャーで芸術的に積み上げられた菓子の塊をこれまた芸術的に取ったのか。
まあ芸術的かどうかはさておいて、たまたま父親から離れ足を運んだ近場のトイレが清掃中だったのが始め。
それから案内図を見て新たなトイレに出向いた帰り、幸か不幸か通り掛かった場所が悪かった。
行きは全く気にならなかったゲーセンも用がすんだ帰りなら悠々に見てこれる。
そしてまた運がいいことに、たまたま覗いたUFOキャッチャーの台座にたまたま100円が置き去りにされていたことで天人の悪戯心は芽生えた。
辺りには誰も居ない、居ても関係ない拾ったもん勝ち。
菓子の袋詰めのつまる機械へ硬貨を投入したのだった。
だが天人が狙いを定めたのは何故ぬいぐるみでもゲームの詰まったものでもなかったのか?
打算に考えた結果、即効で菓子を選んだあたり妙に賢い小学生である。
そして食い意地が張ったとまでいわないが負けん気が強い性格だからこそ真剣・一発勝負。
その結果がこれである、が。

「おまえたんきだな、ばのくうきをちゃでにごしてるぜ」
「おとなげないぜー」
「テメェ等にいわれる筋合いはないわ!」
「あ、はらへってるのか?」
「じゃあおれのマシュマロやる!」
「違ェ!!さっさと親んとこに散れぇえ!」

天人はこの二人に思わずつっこまずにはいられなかった。
見ていると猛烈に誰かを思い出させる。最近じゃない恐らくもっと前に出会った人物。きっと今もなお知っている人物で。
まあそれはさておき、天人はこの時ようやく場を動かずにしつこくUFOキャッチャーを物珍しく見つめる二人の状況を飲み込んだ。

「なんだぁ?もしかしてお前ら迷子かよ」
「ちがう!とーさんがまいごなんだ!!」
「はぁ?」
「ゆーせいのせいだ!」
「…?意味わかんね」

色々と子供は言葉足らずな説明に一生懸命だと天人は小学生ながら悟っていた。
といっても理解する気はさらさら起きなかったので、面倒が起きる前にこの場をさっさと去るべきだと思う。
自分には関係のないことで、迷子ならば自分が対処するより大人が立派にしてくれるだろう。
店員くらいには声をかけやってもよかったが生憎客と接客中。
両替カウンターには『お呼びならばこのボタンを押してください』とあったが結局はそれも面倒臭くてやめた。
あばよ。UFOキャッチャーの出口から菓子の詰まった袋の塊を引っ込抜き天人は薄情にも身をひるがえす。

「まて!」
「オレたちをうらぎるのか!」
「げふっ!!」

だが次の瞬間。呑気に口笛を吹く天人は両足を同時に捕まれたことにより盛大にすっ転んだ。
辛うじて手はつけたので大惨事にはならなかったが、まさかの打撃をくらい怒りに肩が震える。
もう、こうなれば年下であろうと関係ない。
僅かな我慢ストッパーが外されて、ただでさえ鋭いつり目を細め天人は二人を容赦なく見くだした。

「勝手にどこへでも行きゃいいだろうが!関係ねぇ俺様を巻き込むんじゃねぇよ!」

一気に吐きつくした言葉にぜぇぜぇ息を吸い込む。
多少キツいことをいおうがこれで少しは懲りたろう。
寄り道したことが仇となったことをほんの少しだけ天人は後悔した。
だがその安堵も、束の間の気休めだったらしい。
二人は相変わらず揃いも揃って両足をそれぞれ一本ずつ腕でしっかりと抱き込んでいるものだから立つどころか離せもしない。
身動きを完全に封じられている。

「…こんのクソガキども…はーなーしーやーがーれぇええ!!」
「「いーやーだぁー!!」」

あまりのしつこさと粘り強さに天人は引き剥がすことはおろかまた顔面を床に強打する羽目となった。
全く持って冗談じゃない!
怒鳴りつけては目をカッと見開き天人は二人分の重りをつけたままずりずりとほふく前進を始めた。
それだけ意地になる天人はやはりまだ小学生である。

「〜〜!!」

しかしその頑張りが周りにこれ以なく目立たないわけがない。
人だかりが出来始め、ようやくお出ましの店員にどこ行ってやがった馬鹿野郎が!!と天人は叫んでやりたかった。面倒なのでやめたが。
ようやく二人は無理矢理引き剥がされ天人にとってはやっと解放感が訪れる。
情けという形で一応迷子だということは告げておくといじけた二人に今度こそと笑顔で別れを告げた。

「恨むんなら迷子になったテメェを恨みなぁ!ヒャーハハハ!!」

まるで悪人のような捨てセリフだ。
店員ですら何だか男の子二人――アテムと京介に同情をしてしまうが本人は全く気にしてない様子なので救えない。
そしてその、ほんの少しの隙だった。

「う、」
「ア?」
「うわああああん!!」
「!?」
「なく、な…よ、っう、おれも、とーさ、あいたい…とーさんどこ…」
「ゆーせ、っひく、ゆーせのばかぁあああ!!」
「!!?」

どうやら京介はその非情な行為に遊星とはぐれたショックが不意にフラッシュバックしたようだ。
盛大な泣き声は天人の耳に容赦なく貫いた。
子供特有の甲高い声がダイレクトに脳を刺すものだから目を見開く他無い。
アテムはといえば、まだ必死に涙を堪えてはいるが消えそうな声色は何時つられて泣いてもおかしくない。時間の問題だ。
ただ、二人がそれだけならよかった(いやよくもないが)
それだけなら天人は相変わらず素早く見捨ててこの場を去れると思っていた。
けれど、それが出来ない理由がある。

「…だから何で俺の服を掴む!!」

二人ともいつの間にかしっかりと天人の服の一部を掴んでいたことが一番の問題だった。
店員がいくら迷子センター行くことを優しい笑顔で促しても二人は動かない。
店員の困惑は悪魔のそれより適当だった。
天人が止まっているから二人は動かない。試しにセンチ単位で動いたらつられて動いた。
つまりそれは自分をダシにしないとどうにもならない迷子達。もはや逃げ道は閉ざされた。
自分が傍観の立場だったらこういうだろう。ゴシューショウサマ、と。

「……行きゃあいいんだろ行きゃあ!!」

いきり立ち自棄に怒鳴り散らした。それしか道が無いのだから。
天人が二人の頭をべしりと叩くと京介は驚いて涙を止め、アテムは口を尖らしたが嬉しそうに笑った。
まるで天人の溜め息なんかお構い無しに。

「行くぞ!」

そして三人は歩きだした。
店員から同行するか否かと聞かれたが大人数過ぎてうざったいので有り難く拒否をした。
場所も行き方もわかればなんら問題はない。
前に進むにつれまたどこかに行きかける二人の手を繋ぎ、半ば引きずって天人は教えられた一階の迷子センターに向かった。

始めはアテムの問いかけに適当な相づちしか打たなかった天人も、ひょんなことから話題になったデュエルの話にはふっと食い付きを見せた。
それを見てかぐずぐずと鼻水をすすっていた京介も話が進むにつれ意気揚々と話に加わる。
三人それぞれデッキ構成が異なるのもあってお互いが騒がしく弁論する。

「おまえのカードしらないやつばっかだ!」
「俺も知らねぇ」
「オレはんどれすこんぼがとくいだ!」
「へぇ。ま、俺様のオカルトデッキには勝てねぇだろうがな」
「やってみなきゃわかんねぇだろ!?」
「ケッ、どーだかなぁ?」
「おれだってつよい!」

なんやかんやで共通の好みの話となれば話が弾むのも納得できる。
小学校の高学年の天人にとってちょうど半分の年の相手は正直よくわからなかったが、カードの話ならばクラスの連中と話す内容と然程変わらない。
それにしても幼い子供にデュエルを仕込んだってことは親も相当好きなのか。
天人はふと了が頭に過った。
そういえばトイレに行くと行ったきりだった気がする。

「………やべ」

天人は改めて自分も迷子扱いをされていないか不安を感じた。











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