現パロ



開口一番。気持ち悪い。

いや、言葉にはならなかったし口すら開いていなかったがとにかく脳内で描いた言葉はそれに近い。
うつぶせになって圧迫する胃をなんとかしようととりあえず半回転してみるもの余計に拍車をかけたようなものだった。
ああ気持ち悪い。吐く。
今度はダイレクトに神経にきた。もう駄目だまだ起きた方がマシ。
嘔吐に刺激を与えないようにのっそりと辺りの家具という家具らしきものをひっつかんで上半身を起こした。
あまり変わらないような変わるような。

頭をあげたことで第二声、頭痛い。
ガンガンと鐘をぶっ叩く音がまるで耳元でする。死の警告音開始。
サイドテーブルに頭だせのせ、その痛みを少しでも違うものへ紛らわそうと双眸はそれとなく180度見渡した。
床に転がるのはお菓子、つまみ、缶、瓶、缶、瓶、缶、缶…とにかく空容器。あおるようなアルコール臭。
ちらかったゴミと潰れた容器は中身がこぼれたものもあったが、その傍らで呑み潰れたジャックがいた。
大の字に寝転がってかなり深い睡眠におちいっている。これならあと半日起きないだろう。
その斜向かい、俺の隣側には遊星がぐったりとうなだれて椅子に腰掛けていた。

「…はよ」
「……ああ」

目が合うと一応返事はしてくれたが多分あいつの中の限界がきている様子が全面に出ている。
もともと遊星はそこまで酒に強くないしむしろ弱い。
勿論ペース配分は自ら規制出来るからむしろ飲酒に抵抗をみせる真面目タイプだ。
だが気分がハイになったジャックは鬱陶しいくらい呑ませたがるし、俺もそんなことをやらせたような気がする。
酒の力にまかせ高揚となる俺達は遊星とクロウを巻き込むだけ巻き込むことが何より好きだからだ。
そんな無茶苦茶を一晩中けたたましく騒ぎ続ければ、朝・というか昼にはたちまち二日酔いがやってくる。
楽しい記憶の次は一気に奈落。
今回ばかりは遊星も相当ひどそうで俺も記憶が飛んでイマイチ何を呑ませたかさえ覚えていない。
いい夢見で寝るだけのジャックが羨ましい。
もっとも、こいつの二日酔いはかなり後で忘れたころ突然くるからそれは羨ましくはないが。

「おらっオメー等やっと起きたか!」
「……」
「クロウー…たのむからしずかに…」
「お前は返事出来んなら大丈夫だろ。どっちかっつーと遊星の方が危ねぇ感じだな」
「…はくじょうもの」

見当たらなかったクロウがここにきてひょっこりと顔を出した。
何でこいつはこんな元気なんだろうか。おかしい。記憶が飛ぶ前までは遊星と同じくらい呑ませたはずなのに。
そんな疑問を抱きながら見たエプロンに身を包んだクロウはとりあえず飲めと塩水を置いてすぐにまたどこかへ消える。

「しょっぺ…」

喉にざらりと流れてゆく水。何で二日酔いに塩水がいいのか未だにわからない。
わからないが今だと塩水にもすがるような気持ちだから手が伸びるんだろうか。
遊星も顔を顰めてコップの水を減らしている。
自然とため息が出て、窓から聞こえる風の音とそそぐ真昼の太陽さえ無条件に憎たらしかった。
だがそんなくだらぬ思考中、ふわりと目の覚める匂いが部屋に立ち込め始めた。
この匂い、ああやっぱりクロウはいい嫁になれる。あ、男なら婿か。
益々くだらない思考に不意に力なく笑みがこぼれた。

「全く世話のかかる奴等だぜ」
「…ありがとう」
「さんきゅー…さすがクロウだなぁ…」
「クロウ様特製味噌汁飲んでさっさと元気だせ全く!」

ほんわかと器から湯気が出てあれほどあった胃のむかつきと頭痛が引いてゆく。
柔らかくなった豆腐と大根と葱。出汁の昆布と鰹節が味噌に絡まって体の芯に溶け込むその味は格別に満足できる味だ。
味噌汁がこんなにも美味いなんて知らないジャックは絶対に損してる。
遊星もようやく生気の出た顔で落ち着きを取り戻し同じことを考えてるに違いない。
本当にクロウが毎回潰れてくれなくて助かる。そう、身にしみる思いで俺達は綺麗に完食。
二日酔いが少しだけ嫌いじゃなくなった昼下がりだった。






*

酒の弱い順は、遊星>クロウ>鬼柳≧ジャック
ジャックはまぁ強いけど二日酔いが一番酷くてかなり絡みやタイプ。
鬼柳は適度に強くてハイになるとダグナー的な人になるくせに記憶を無くす質の悪いタイプ。
クロウは普通くらい。顔が一番真っ赤になって笑い上戸。でも不快手前でやめれるタイプ。
遊星はわりと弱め。顔に全く出ないからどんどん呑まされるタイプ。
最高潮になると迫り魔+キス魔になる(といい)





H22/3/28









あきゅろす。
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