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2014.01.01(水) 10:20
35.きみは願う(ユウ+ダイ)




「明けましたのでお年玉下さい」

「新年を祝う気がないことだけはよく分かるよ。明けましておめでとう」


ばーん!と勝手知ったるとばかりに扉を開けて堂々と不法侵入してきたユウキは、片手に携えていた重箱を土産とばかりにテーブルに置いた。そのサイズとは対照的にずどんとココドラが尻餅をついた時のような重い音が部屋に響く。
一体何が入っているのかな。僕がストーンゲッターだからって重箱いっぱいに石を詰め込んで来たのではあるまいな。正月は正月らしくお節を食べたいんだけど、まあこれにお節が入ってなくてもどうせミクリ辺りが押しかけがてらに持ち込むだろうなとか、そんなことを考えていることを窺わせない笑みを浮かべてダイゴは目の前で両手を差し出す少年を見つめる。


「お年玉」

「うん。君のことだから必ず来ると思ったよ」

「流石俺とあなたの仲ですね。まさに以心伝心」


手のひら返しが露骨すぎてダイゴの背筋に悪寒が走る。普段のユウキなら脅されたって言わない言葉の羅列である。
お年玉の為ならばキャラ崩壊もプライド崩壊も辞さないユウキの覚悟。あな恐ろしや、金の魔力。
……しかしユウキもユウキなら、ダイゴもまた何処までいってもダイゴである。


「例のブツは用意してあるよ」

「例のブツって、なんですかその言い方何病拗らせてんですか」

「ここは乗っとこうよ。…僕がこれまで何もなしに君に金品を差し出したことがあったかな?」


結構あった気がする。一応ユウキは空気を読んだ。
ピシリと冬の早朝のような清々しさと厳しさが混じった張りつめた空気が部屋に満ちる。
互いに何も言葉は交わさない。けれど二人の手は自然と腰のベルトに装着したモンスターボールに伸びていた。
指が六つのモンスターボールをなぞるように移動して、一つ目当てのボールを掴む。


「……新年一発目なんですから勿論、普段の三倍はありますよね」

「それは君の奮闘次第…とでも言っておくかな」


ユウキの放ったボールから飛び出したボーマンダと、ダイゴの放ったボールから飛び出したアーマルドが睨み合う。
一触即発の中、二人は挑戦的な光を宿す瞳を細めてニヤリと笑った。

因みに家の中でホウエンチャンプのポケモンが戦いなどしたらどうなるかなど火を見るよりも明らか。
ダイゴの予想通りおせち料理片手にトクサネの地に降り立ったミクリを待っていたのは、半壊した家の前で大人げなく子供と取っ組み合う友人兼ライバルの情けない姿だった。



(ポケモン勝負では決着がつかなかったようです)

(明けましておめでとうございます)




2013.10.10(木) 22:47
20.きみと過ごす熱帯夜(ユウダイ)



向けられた背中にそっと手を伸ばす。温い肌は汗でじわりと湿っている。
飄々として、風のように掴めない自由気ままな人だから。たまにこうして同じベッドで眠れる時は、真夜中こっそり起きて彼が此処にいる証明を探している。






2013.10.09(水) 20:40
6.きみの小さなつぶやき(ジョニ+ジョセ♀混部)



従兄弟のジョニィ君はジョナサン君の一つ下。ジョセフちゃんとは六つもも年が離れています。
ジョセフちゃんは小さな頃から面食いで、特に金髪美少年に目がありません。典型的金髪碧眼美少年(※アメリカ産)ジョニィ君はジョセフちゃんの好みドストライクでした。「じょにぃちゃん(ジョニィお兄ちゃん→ジョ兄ちゃん→じょにぃちゃん)、じょにぃちゃん」とジョニィ君の後ろをついてばかりで、本当のお兄さんが拗ねてしまうくらいにジョニィ君にメロメロでした。

やがて年月は流れジョセフちゃんは十四歳の中学生に、ジョニィ君は二十歳の大学生になりました。
思春期真っ只中、ちょっとエッチな漫画を友達から借りるような、そんなお年頃のジョセフちゃんは昔のようにジョニィ君に甘えることが出来なくなりました。ジョニィ君がお家に遊びに来ると挨拶もそこそこにジョセフちゃんは居間から出ていってしまいます。
けれども決してジョニィ君が嫌いになった訳ではないので、ジョナサン君と話しているところを台所からこっそり覗いては新しいお茶やお菓子を運ぶチャンスを窺っていました。大好きな大好きな年上のお兄ちゃんにどう接してよいのか、ジョセフちゃんは考えあぐねていたのです。

そんなよそよそしいジョセフちゃんが面白くないのはジョニィ君です。
ジョニィ君にとってジョセフちゃんは初めての年下の身内でした。初めて赤ん坊だったジョセフちゃんを抱き上げた感動を今でも忘れていませんし、「じょにぃちゃん、じょにぃちゃん」と後ろを追っかけていたジョセフちゃんのビデオはジョニィ君の宝物の一つです。きっとずっとジョセフちゃんは自分を慕ってくれるとジョニィ君は思っていました。
けれど年を重ねるごとにジョセフちゃんは徐々にジョニィ君から離れてゆきます。「じょにぃちゃん」の呼び名は何時しか「ジョニィさん」に変わり、何時も真っ直ぐ自分を見つめていた大きなターコイズブルーの瞳は視線がぶつかる度に逃げるように床を見つめるのです。

ジョニィ君は自分に正直ではありますが、素直な性格ではありません。男としての矜持だってあります。「最近冷たくて寂しい」なんて六つも年下の少女に言える筈がありません。そして自分に正直なあまり口がよくないのです。

構いたい、けれど素直にはなれない。その上口が悪い。
そうなれば訪れる未来は分かりきっています。


「ジョセフ、また太った?豚通り越して牛になる気?」


思春期…というか全女性に対して間違っても口にしちゃいけない言葉を、冷めたお茶を下げにきたジョセフちゃんにジョニィ君はつい口走ってしまいました。

ジョニィ君の気持ちは分かります。「にゃにおー!?この俺のナイスバディがちゃんと見えてんのかァ〜?」なーんて近所のツェペリ君(※医学生の愉快な方ではありません。高校生の元ヤンことスケコマシこと弟君の方です)と交わしているような陽気なつっこみを期待していたのでしょう。
しかししびあこなお兄さんにかなり直接的に「デブったんじゃね?」と言われたジョセフちゃんの気持ちになって下さい。そんなおふざけな台詞が吐ける筈もありません。
真っ赤になった途端、さぁーっと色を失った顔にジョニィ君が異変を察知したと同時、ジョセフちゃんの瞳からポロリと水晶のような綺麗な涙がぽとりと落ちました。
ジョニィ君はぎょっと目を剥いてから、自分の失言に漸く気が付きました。しかし気付くのが遅すぎました。謝ろうと開いたままだった口を動かそうとすれば、「ご、ごめん…何か目にゴミ入ったみてーだ」なんて分かりきった嘘をついてジョセフちゃんはバタバタと自室のある二階にかけていってしまいました。

居間に残されたのは先程のジョセフちゃん以上に色をなくした顔で呆然とソファーに座り込むジョニィ君と、にこやかな笑みを浮かべながらも目に漆黒の意思を宿し拳を握りしめたジョナサン君(M(マジで)N(泣くまで殴る)3(3秒前))でしたとさ。





〜この数年後、「おい処女ビッチ」「うっせこのヤリチン」と軽口を言い合う二人の姿が〜

2013.06.29(土) 02:53
46.きみは恋を知らない(シー→ジョセ)




何時か見た少女漫画のままごとを親友は本物の恋愛だと勘違いしている。あれは女の夢だけが詰まった絵空事だと諭してみても聞く気なし。


「へーへー。モテる男は言うことも違いますねェ」


なんて皮肉が返ってくるばかりだ。
嫌みったらしいとあいつは言うが、俺は親友であるお前のことを思って助言してやってるんだよ。
甘い砂糖菓子のような愛の言葉や温もりは内に秘めた獣と同じ肉欲を隠す為。四六時中考えるのは恋人のことではなく恋人とヤることだけ。
精力有り余る男子高校生なんざそんなもんだ。お前も同じ男なら分かるだろうに。それでも頑なな態度を崩さないのは見た目に似合わずロマンチストだからなのだろう。

それでも言いたい。まだ恋を知らないお前にだから、尚更言いたい。
本人に煽る気は更々なかったとしてもふとした瞬間に煽られ惹かれてしまう者がいることを。

無防備に晒された脇腹に噛みつきたいと、マフラーからちらりの覗く首筋に所有の証を刻みたいと、誘うように半開きになった唇にむしゃぶりつきたいと。
恋をこじらせそんな妄想に耽って、最近歯止めがきかなくなりつつある親友が今、隣で悶々としていることをお前は知らない。









2013.06.29(土) 02:53
32.きみが咲かせた赤い花(ミクダイ)



「………」


何も言わずとも私の気持ちが分かるんですね。昔からの腐れ縁だというのにまるで通じる気がしなかった思いがやっと一つ、通じた気がします。
人のことを省みることのなかった彼にしては大きな一歩です。前進です。進化です。かつての彼だったらこう言ったことでしょう。「うわ、汚い。早く着替えてきたら?」と。

「あの、ミクリ…」

……しかしどうして何故私はこんな男と恋人なんてやってるのか。何だか放って置けなくて世話を焼いている内に何故か体の関係が出来てこんな不健全な関係はいけないと考えて考え抜いた結果がこれだ。
何故恋人になるという結論に落ち着いたんだあの時の私。そこは爛れた関係を見直して清く正しい友人同士に戻るという道があったじゃないか。まあ、これまで一度足りとも私達が清く正しい友人同士だったことはありませんけど。ワロタワロタ。

「ごめんって、悪かったよ」

なら私達の関係というものは何なんだ。恋人というのも私が「セフレは嫌なので付き合いましょう」と提案したのが始まりで、彼も「うん別にいいよー」とちゃんと考えたのか怪しい実に軽い返事を返して始まったものだし。
というか彼はちゃんと私達が恋人同士だと認識しているのか。いや、そこまで彼も馬鹿じゃない。きっと、多分。

「い、衣装にケチャップかけてごめんなさい…」









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