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2009.11.14(土) 16:59
万事屋じいちゃん

帰宅した神楽は、楽しそうに銀時に話しかけた。

「今日、面白い人を助けたネ」
「ふ〜ん?」

あまりに神楽がくつくつと楽しそうに笑っているので、 銀時は手を休め、神楽のほうへと向き直った。
神楽は、本当に楽しそうだ。

「自分の歯に噛み付かれている人を助けたアル」
「一体、どこの天人だ?」
「ちがうヨロシ、それが」

神楽は、にやにやと、銀時を見つめる。

「銀ちゃん、銀ちゃんも、ああいうことやりそうだから、気をつけてネ」
「は?」
「入れ歯はお尻で踏むと、怒って噛み付くみたいアルヨ? でも、もしそうなっても、ちゃんと助けてあげるから、心配しなくていいヨロシ」

2009.11.14(土) 16:38
大人は汚い

中学生のミツバさんが、うきうきと楽しげにドアを潜った。

「総ちゃん、今日、クラス中が答えられなかった質問に、総ちゃんだけが答えたって本当?」

部屋の隅で、藁人形を作っていたミツバさんの弟は、びくりと振り返った。

「ええ、……えっと、まぁ、そうなんですが……」

照れくさいのか、嫌に歯切れの悪い弟の様子に、ミツバさんはきらきらの笑顔を振りまく。

「どうしたの。もっと自慢していいのよ。総ちゃん。わざわざ、銀八先生が連絡くださったの。是非、総ちゃんからその話を聞いてやってくれって。一体、どんな質問に答えたの?総ちゃん」

おどおどとしていたはずの総悟が、銀八の名を聞くと、俯いたまま小さな舌打ちの音をさせた。
いかにも悔しげなその態度に、ミツバさんは首を捻る。だが、まだ、姉の顔は幸せ一杯だ。

「一体、どうしたの? さぁ、そんなに勿体ぶらずに、私の弟がしたすばらしいことを、是非、教えてちょうだい」

総悟は立ち上がると、ミツバさんをクッションへと誘導し、座らせた。今だって十分にハンサムな少年がじっと姉の目を見つめる。弟の手は、すがりつくように姉の手を握っている。

「……お姉ちゃん。俺のこと嫌いにならないでくだせェ。……俺にされた質問は、誰が教室の窓を割ったか。でした。確かにそれは、俺にしか答えられない質問でした。だから、俺だと、答えたんです……ごめんなさい!」

2009.11.14(土) 16:28
厳しい!

総悟は、姉を付けねらう男を捕らえた。
総悟はミツバと、その男を前に、深いため息をつく。

「生きる価値について、悩んでいるんです。……俺のじゃありやせんよ。その男のです」

2009.10.28(水) 10:01
信頼

近藤は総悟の弁護をしていた。

「それは見間違いだ。銀八」
「先生つけろ。殺すぞゴリラ」
「総悟はそんなことをする子じゃない。もう一度よく探してほしい。絶対に総悟は、そんなことはしない!」

銀八が次の授業のために用意していた作文の用紙が紛失したのだ。
近藤は、弟分の無罪を強く主張している。

「絶対に総悟なんかじゃない。たとえ、誰かが総悟をその付近で見かけたと言っていたのだとしても、決して総悟などではない」
「ああ、悪かった。疑った俺が悪かった」

十中八九、総悟が犯人だと未だ思いながらも、銀八は、真剣になって弁護する近藤の手前、その場を引いた。
銀八が立ち去った後の総悟は、きょとんとしている。

「もう大丈夫だ。総悟。しかし、お前も、いきなり銀八に怒られて一言の反論もしないなんて、そんな情けないことじゃいけないぞ。いつまでも、俺を頼るばかりじゃだめだからな」

近藤は、罪を着せられそうになっていたかわいい弟分の頭を撫でる。

「ほら、無罪放免だ。もう行っていいぞ」
「えっと」

総悟は、困ったように頭を掻いた。

「ねぇ、近藤さん、俺の机の中にある作文用紙は、どうしたらいいと思いやすか?」

2009.10.23(金) 17:32
温度差

愛しの恋人の元で寛いでいた銀時は、午後の暖かな日差しに包まれていた。

「銀さん」
「あ?なんだよ」

可愛らしい妙の微笑む姿を思い描きながら振り向くと、縁側の景色とは正反対な光景が広がっていた。

「槍の餌食になりたくなければ、テメーが食った私の破亜限堕取今すぐ買って来い。」

その時俺を見据える妙の瞳は、冬の夜の冷たさをも超へ、俺を心の底から震え上がらせた。初めて彼は百鬼夜行を垣間見た気がした。

2009.10.18(日) 17:42
お望みのままに

追い詰めた最後の攘夷浪士を前に、総悟は、刀を構えていた。

「ちっ、どうせ、ひと思いにやるつもりなんだろう。畜生、警察のくせに!」

総悟の強情な面構えに、浪士は震えを抑えることも出来ず怒鳴った。
少しも口を割ろうとしない浪士に総悟が大きく振りかぶる。

すると、土方が総悟を止めた。

「なぁ、じゃぁ、総悟。警察らしく、誠実に、一寸刻みにじっくり時間をかけてやることにしようか。どうだ。それの方がいいんだろう?」

男は総悟がいやらしく唇を舐めるのを見た。

2009.10.18(日) 17:33
モテないワケ

「あの…これ…私からの気持ちなんだ。受け取ってもらえるかな。」

もじもじしている様はいじらしくて真摯なものだった。証拠に、その便箋にはぎっしりと思いの丈が―。

「ん」

男は何のためらいもなく、肯定とも否定ともとれぬような態度で受け取った。あまりにのことに歓喜が沸き起こるのも仕方がない。

「きゃあ―!やったぁ!」
「…って、指示書渡すのにいちいちうるせぇ!」

それが可愛らしい女子なら分かる。土方の目の前にいるのは、真撰組の局長で、花も恥じらうどころか枯れるような男だった。

「えー?つまんないか?」

否、疲れるのだ。

2009.09.15(火) 16:25
…相当怒ってますね?

めずらしく総悟が内勤している。
イライラした様子ではあるが、机を一歩も離れることなく、もう半日が過ぎている。

「どうやったんすか、副長?」

どこにそんな弱みがあったのか、これから先の付き合いを考え、山崎は総悟との付き合いが長い土方から、その秘訣が聞き出したかった。

「あん?大したことじゃねえ。書類に涎で水溜りを造ってる間に、手錠で机に繋いだんだ。それだけよ」

土方は書類から目を上げることもなく答えた。

2009.09.02(水) 15:07
まだまだ餓鬼

「自分だけが不幸になるために生まれてきたみたいな顔するなよ、新八。眼鏡の癖にちょっとばかりムカつくからな」

それは、もしかすると眉間に皺をよせて難しそうに黙り込んだ新八の気を紛らわそうとした言葉だったのかもしれない。
だが結果的にそれは新八の頭を唐突に叩いたようなもので、横で秘かに心配を覚えながら二人を見ていた妙は思わず頭を抱えた。もっと遠回しな表現はできないのだろうか――思わずそう考えてしまうほどだった。銀さんはほとんどにおいて率直すぎ、それでいて余計なところで変な洒落をきかせる男だった。そして物事をごちゃごちゃと考えるのはあまり好まない。そう、よく言えば本当に正直すぎる男なのだ。
それは長所であり、大変な短所でもある。
そしてそれは妙の弟である新八にしてもそうだった。少しばかり自制の度合いが強くなってはいるが、やはり正直すぎるように思えた。心を隠す術を得たところで、やはり彼は浪士には向いていないタイプそのものだ。

「人の気も知らないでよく言えますね!だいだい眼鏡言うな!いつもいつも、そればっかりしかいえないのかよ!」

眉間の皺をそのままにキッと強く銀時を睨みつけた新八に、今度は睨まれた銀時がいらだたしげに眉をしかめた。
今まさに馬鹿げた言い合いをし始めようとしている二人の青年から目をそらすと、妙は仕方なく溜息をついた。


2009.09.02(水) 14:22
あれ、いつの間にか別人

近藤は一瞬、目の前で行われているやりとりを理解できずに目を瞬かせた。
すると落ち着いた様子で隊士達に指示を出していた総悟はそれに気付いてきょとんとした。その視線を追うように、彼と向かい合っていた隊士も局長に視線を向ける。

「どうかしやしたかィ――近藤さん?」

映し出された調査報告書を目で追っていた総悟が顔を上げて自分を見ているという事実に、数秒遅れて気付いた近藤は、はっと一人での思考に浸りきりだった頭を現実へと引き戻した。

「いや、大した事ではないんだ。気にせず続けてくれて構わない」
「ほんとうに?」
「嘘なんてつかないよ」

微苦笑を浮かべて答えれば、総悟は訝しげな顔をした。けれど彼は溜息をついて報告書へと意識を戻した。近藤はそれを少しばかり安堵しながら確認すると、総悟に読み取られぬよう気遣いながらも微かに首をかしげた。

いったいあれは誰だろう? 俺の元弟子なら、つい先ほどまで喧嘩を売るかのようにむくれ面をしていた気がするんだが。

冷静に指示を出す、いかにも指揮官らしい総悟の姿はなんだか新鮮で、ひょっとすると目の錯覚か別人かと近藤は思わず考えていたのだった。


2009.08.23(日) 18:10
何か問題でも?

ある悪人の辿った末路について、山崎は近藤を始めとした幹部達に報告していた。

「追跡しておりました彼ですが、残念なことに、彼を恨む組織の方が先に拉致しまして暴虐の限りを尽くし、撲殺致しめたものと思われ」

幹部のメンバーは、山崎の話に耳を傾けていた。

「ですが、彼は、その前日に、全ての現金及び、有価証券を偽名で銀行へと預けたのです。ですから、幸いなことに、被害は、彼の命だけに留まっております」


2009.08.23(日) 16:58
褒めてねえから

土方は、捕まえた罪人の前歴を聞き、眉をひそめた。

「スリ、強盗、詐欺、恐喝、強盗、詐欺、恐喝、詐欺、恐喝、詐欺、詐欺、詐欺、詐欺……」

今回この男は、大掛かりな詐欺を働き、それを捕らえるため土方に任務が下されたのだ。

呆れた気分のままに、土方は男を眺めた。

「結構な前歴だな」

「ええ、まぁ、何分若いうちは、何が自分にあっているのか、よくわからなかったもんで……」

照れたように男は頭を掻いた。

2009.08.23(日) 16:42
とりつく島も無い

「陸奥さんー!ミズマストがへし折れて船長が海に投げ出されました!」
「なんじゃと…またあのもじゃもじゃ!わかった、これをもっていけ」
「……鉈ですか」
「折れたマストと船とを繋ぐシュラウドをこれで切り離せ。このままでは船が転覆する」

彼女は即断した。

「しかし船長は必死で泳いでいます、もう少しで」
「船を沈める気か? 200人のシップメイツを犠牲にしたいのか?」


2009.08.20(木) 15:57
if初期設定…。

ある隊務の途中で、被害者の娘らしい小さな女の子と、土方が話しをしていた。今ではすっかり、泣き止んでいる。

「おじさんのお人形もかわいいの?」
「ホントはお兄さんって読んで欲しいなこの糞餓鬼。
そうだとも、君の持ってるお人形と同じ金髪でね。君のと、同じくらい、かわいいんだよ」

真撰組副長は、沖田に軽い目配せをした。野郎は、甘く笑う。
沖田は可哀相なくらい、赤くなった。
しきりに顔を振り、この痛いおっさんに、会話を打ち切るように、目配せした。
だが、おっさんはやめようとしない。

「それは、もう、かわいい、かわいい、お人形でね。俺は、この十年来、手放したこともないんだよ」
「そんなの」

女の子は、自分のかわいいお人形より土方が、すばらしい人形を持っているというので、悔しくなったようだ。

「私のの方がかわいいわ。私のお人形はね、ネンネすると、ちゃんと目を瞑るのよ。おじさんのは、そんなことできないでしょ?」
「いいや。それがね。おじさんのお人形も、上手にネンネさせえてやると、ちゃんと目を瞑るだよ。まぁ、そこまでの手順が難しいんだがね」

したり顔で少女と会話する土方の背後に、そのかわいいお人形が般若も逃げ出す、ものすごい顔で立った。

2009.08.20(木) 13:41
それは言わない約束だろ

神楽が朝刊の新聞に掲載されてある掲示板伝言のコーナーを見たとき、このような文章がアップされていた。

「エリーを送り返してくださった方へ。そろそろ中身を返してください」

かわいいペンギンお化けが行方不明になってから、まるっと一月たっていたが、桂以外、攘夷浪士の誰もが全く心配していなかった。

2009.08.20(木) 12:40
証される真実

「じゃぁ聞くが、警察は罪を犯さないのかね? 生涯のうちで、一度も罪を犯さないと言い切れるのかね?」

ずっと、わめきとおしている男が、またもや屯所で吼えた。

男の煩さに、うんざりした顔で、犯罪者の後ろを歩いていた土方は、告白した。

「いや俺だって、罪を犯すことはあるよ。俺ァ、一度盗みを犯した」

名高い鬼の副長の告白に、男は興味を示した。

男がはじめて人の話を聞きたがる。

「ほう。それは、一体どこから?」

「教えてやっても良いが、質問に答えたら、しばらく黙っていてくれるか?」

「ああ、勿論」

「……銀行からさ」

土方の言葉に、男は顔つきが代わった。犯罪の中にもランクがある。銀行を襲って成功したとすれば、それは、かなり上等な犯罪だ。

男は、あと一つだけだと断り、実は、どうやらかなり悪いらしい国家公務員に尋ねた。

「それは、すごい。一体どこの銀行を襲ったんだ?」

「子供銀行さ。小銭が欲しかったから、先輩の貯金箱から、少々拝借したんだ」

男のあんぐりした顔に、土方は、人の悪い笑みを口元に浮かべた。

そんな土方の後ろから、背中をつつく者がいた。

「土方。……俺ァ、忘れてねえぞ。……あの時、俺が絶対におかしい。って騒いでたのに、あんたシラをきってたよな?やっぱり、テメエだったじゃねえか!!」

前の男は、わめかなくなったが、後ろの男がわめきだした。

2009.08.19(水) 12:49
どうだろう。

土方十四郎と沖田総悟は、厳しい試験に選抜された新入隊士たちの前に立っていた。

若者達は、局長から語られる侍の未来に目を輝かせながら、聞き入っていた。

「野郎共に正しいことと、悪いことの区別を教えなきゃならねえ。絶対に首を飛ばされねえ様にな」

副長は、決意を込めて隣に立つ総悟に言った。

「よしわかった。じゃぁ、お前、お前が正しい方を受け持ってくれ」

沖田総悟は、にやりと笑った。


2009.08.19(水) 12:37
よくそれだけですんだよね

「ったく、昨日は酷い目にあった」

銀八先生は、腰をさすりながら、全蔵先生に話しかけた。

「ああ、銀八、窓から見てた。お前の白衣が飛んじゃってただろ?」

「そうなんだよ。あれに中身が詰まっていたことにお前は気付いたか?志村の尻をちょっと掠めたら、偉い目にあったよ」


2009.08.19(水) 12:20
ぺこぺこバスター2

「神楽ぁあ! お前が食堂にこっそり入るのを見た奴だっているんだぞコラァ」

銀八は自分用に取り置きしておいてもらったデザートを生徒に掻っ攫われて、ご立腹なのだ。

しかし神楽は、傷ついた顔をして銀八を見上げた。

「……うん、私、食堂に行ったアル。でも、そんなことしてません。私が先生のデザートを盗み食いして、食堂から出てくるとこ見た人がいるアルか?」

「それは……いないけどよ……」

悲しげな目をした生徒にじっと見上げられて、銀八の口調は、弱まった。

しかし、銀八のデザートを盗むには神楽以上に疑わしい人物が担任には思いつけない。

健気にも神楽は、にっこりと笑って銀八を許した。

「じゃぁ、きっとネ、私は、まだ、食堂にいるヨロシ。銀ちゃんが理由もなく私のこと疑うはずないもん。今頃、銀ちゃんのアイス食べてるアルか?
不思議アルネ。なんで私、ここにいるんだろう」

「……神楽ちゃん、アイスだって、誰が言った?」

子供は舌を出して逃げ出した。



2009.08.19(水) 11:54
違う漫画だから

風邪をひいたかもしれないという新八に向かって、山崎は前をはだけるようにと言った。

山崎の指が、こつこつと薄い新八の胸を叩く。

「山崎さん?」

「しっ、静かに新八くん」

新八は、まじめな顔をした山崎に思わず口をつぐんだ。

新八の目には、監察は医術にも通じていたのかと、かすかな尊敬の色が見える。

しかし、しきりと胸を叩くばかりで山崎さんは何のコメントもしなかった。

おずおずと新八は聞いた。

「あのぉ…山崎さん、何かわかりましたか?」

「いいや、どうもしっくり、さっぱり。いつも医者がこうするから真似をしてみたんだけど、一体彼らは、これで何がわかるんだろう?」

くしゅんと、くしゃみをした新八は「僕、自分が風邪を引いたということだけはわかりました」と、答えた。


2009.08.19(水) 10:51
ぺこぺこバスター

机の上には最後の一個であるスイーツが残っていた。
総悟は、それほど甘い物が好きではない。

そして総悟の隣の彼女は、とても好きだ。いや、甘いものと言うより、食べること全般が、好きだった。

だが神楽は面子があるのか、素直に「よこせ」も言えず、それにずっと手を出さなかった。
残念ながら、可愛らしく「ちょうだい」、とおねだりできる二人ではない。

彼は食物相手にそんな健気になる人が、いっそ哀れになった。
意地悪するかわりに、にっこりと笑って彼女の斜め下に最後の一個を勧めた。

「俺のかわいらしいぷくぷくお腹ちゃん。どうぞ、太ってくだせェ。俺、いらねえから」

最初に机に出されたスイーツの数が、奇数だったのだ。

2009.08.18(火) 14:46
難しいね

またもや姉が総悟のために小学校に呼び出されることになったその日、小さな総悟は、本屋にて、姉の機嫌を取るためのプレゼントを一生懸命探していた。しかし、総悟は、迷っているようで、なかなか決まらない。

「プレゼントされる人は、どんな物語が好きなんだい?」

親切な本屋の主人が口を出した。しかし、総悟は首を振る。

「お話しは嫌いかい? じゃぁ、偉い人の伝記なんかは、どうだろう?」

総悟は困ったように眉を寄せる。

本屋の主人は、次々に本を出していく。

「そうかい。じゃぁ、何かの実用書? ああ、それとも、ユーモアのある面白い話なんてのもいいかもしれない」

それでも、総悟は頷かなかった。

「あっ、坊やは剣道やってんのかい? じゃぁ、体術の本なんていうのは、いや、それはいらないか」

「うん……」

積み上げた本の山を前に、本屋の主人は、すこしばかりイラついた顔をした。

「じゃぁ、坊や。君のおねえちゃんが欲しがってるものは、何だね?」

「多分……素直でかわいい男の子」

思いつめたような深刻さで口にする総悟の様子に、本屋の主人は顔色を変えた。

またもや、ミツバに苦難が降りかかった。


2009.08.18(火) 13:28
しっかりして、銀さん!

銀時が依頼を終え、家に帰ると、そこはきちんと片付けられ、かわいらしい笑顔の女の子が「おかえり。」と飛び出してくる。これは夢かと、銀時は思う。

夢ならばまだいい。多分、銀時は帰る家を間違えたのだ。

2009.08.18(火) 12:14
ハッピーエンド

「悪くない」

土方は、報告書を読みながら小さく頷いた。それは、事前に山崎も目を通していたが、報告書が伝える情報提供者の死は、幕府にとって、決して有益なものではなかった。

「え?副長? 」
「ああ、山崎はあのろくでなしを知らないのか?。……一度野郎の妻に会ったことがあんだが、奴のせいで随分苦労しているようだった。あいつには一銭の値打ちもないと愚痴をこぼしてたよ」

土方はにやりと笑って報告書にサインを入れる。
報告書には特別補足事項がある。そこには、土方が立会い人となり、彼の妻との間に、いかなる場合にも関わらず夫の死亡時には円で1000万払うとの記述が。
土方は山崎に報告書を渡す。
つまり、彼は、酒場で乱闘を起こし死亡することによって、その価値をいきなり高騰させた。

「ハッピーエンドだな。山崎」

2009.08.18(火) 11:59
言い過ぎましたよね、ごめんなさい

春もうららな18歳になり、総悟は必要以上に神楽に対して、意識をするようになった。

幼い頃から、たった一人で剣術について学び、それが世界の全てになってしまった青年にとって、これは、非常事態だった。

総悟は、父親であり兄である近藤から呼び出しを受けた。

「なぁ、総悟。チャイナ娘は、確かにいい子だ。さっさと思いを告げたらどうだ。総悟、仕事に死傷がでてしまったらどうするんだ。わかるな」

近藤は、穏やかな声で若い弟子を聡そうとした。

賢いこの子は、傷つきやすい。

だが、若く、性欲を抑えることなど難しい総悟は言い返した。

「近藤さん。あんた、ゲームに参加することも出来ないくせに、ゲームのルールをとやかく言わないで下せェ!」



2009.08.18(火) 11:34
じっさま

敏木斉は、東城に背中に背負うようにと言った。

「ダメです。どうして敏木斉様は、時々、そういうことをしたがるんですか?」

これから会議にでるという大勢の門徒たちの前だった。

栄えある君主敏木斉を背中に負ぶうなど、東城にとっては、どちらに対しても礼を失した態度だった。

しかし敏木斉は、いかにも疲れたように杖を着き、東城を見上げた。

「東城、わしは、疲れたのじゃ。どうしても、ダメか?」

時々敏木斉はこうやって年寄りぶった遊びをしたがった。

「ダメです」

東城は、先ほどまで敏木斉が刀を振り回し、三人の見習いを相手にトレーニングをきびきび行っていたことを知っている。

「東城。もし負ぶってくれたら、お主のかわいいかわいい九兵衛が、門徒の耳元で囁いたことを教えてやるぞ」

敏木斉が東城の袖を引いた。

東城は慌てて敏木斉の足下にかがんだ。

「どうぞ、背中に乗ってくだされ敏木斉様!私は、若に一生仕える者として、そのことについて知らねばなりません」

東城の心は、若い娘の動向に千々に乱れていたが、表面上は柳生四天王筆頭として君主を心配する態度を必死に守った。

敏木斉は東城の背中でほくほくと笑いながら言った。

「九兵衛はな、会議はいつ始まるのか?と、言ったのじゃよ。東城」

2009.08.18(火) 10:26
フォロシロー
  
ある夜、土方と近藤が夜の見回りに出かけていると、橋の上から身を乗り出している男がいた。

「おいっ! そんなことしてると危ないぞ!!」

駆け寄る近藤の後ろを土方が付いていく。

男は、死ぬしかないんだ。邪魔しないでくれと、近藤に怒鳴った。

土方が、ぐいっと前に出る。

「じゃぁ、ぜひ、ここで飛び込むのだけは考え直してくれ。あんたがここで飛び込んだら、この人が間違いなく飛び込む。だけど、近藤さんは、あんたを助けるどころか、一緒になっておぼれることになるだろう。そうすると、必然的に俺も飛び込まなくちゃならないことになる。俺は、二人も助けなくちゃならない。挙げ句の果てに、この人は、自分一人でもなんとかなったとか、文句を言って、俺は、今晩一晩、すっかり小言を聞くことになるだろう。今夜は、冷えるし、なぁ、あんた、ここで飛び込むのはやめて、家に帰って首を括ってくれよ。なぁ、そうしろよ」







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