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.剥がれ.堕ち行く.夢現つ

2017.05.04(木) 22:48
ふと、目を開けたら。
君がとても、安らかに目を閉じていたから。
僕は目を細めて、数秒眺めて。
薄く開いた唇に吐息を重ねて眠りについた。

明日なんか来なければ良いのに。

2016.09.22(木) 01:31
声をあげても、音にならないその声が誰かに届く事はない。
それでも飽きずに胸内に叫ぶ私は、他力本願で、自分から変化を求めようとしない臆病者で、とても弱い人間なのだ。
分かっていながら、私は今日もまた、誰にも聞こえない叫びを繰り返す。

2015.10.04(日) 22:42
私は、臆病者なの。
それを嫌だと言えないのよ。いつも心の奥底で吠えている感情を押し殺して上辺を繕っているの。心が拒絶してる物を無理矢理噛み砕いて飲み込んで、それを正当化しているの。

辛いか?
辛いわ。苦しくて吐き気がする。
だけどそれは誰しも感じるものだと誤魔化しているの。今を徘徊している常識から外れてはいけない。普通に生活をして、普通に仕事をして、普通に生きる。

でも普通に生きるって何か分からなくなるの。いつも繰り返される日常を生きて、私は、私を何度も殺して、そして笑い方を忘れていくの。

ねえ。
私は、何故生きているの。

ーー彼女は最後の最期に、朽ち果てた笑顔で、最初で最後の刃を放って堕ちた。

2014.08.26(火) 03:27



「私と関わらなければ、幸せに、なれたのに」


彼女は目の前でそう、歪めた瞳から涙を流しながら言った。
僅か一滴のその涙はまるで彼女の性格、その物を体現しているかのように美しく映った。
しかしその面持ちにあの強気の面影はなく、ただ無理に作ろうとした笑みが見事に崩れ、悲嘆の色がその全てに広がりきっていた。
誰よりも気高くあろうと身を粉にした彼女の、その終着点がこれであれば、それは何とも皮肉めいた冗談だろう。


「それは違うよ」
「何を根拠に?現にこうして貴方は傷付き、失い、目の前にある不幸を嘆いているのに」
「確かに、それは否定出来ない」


一定の距離を保ちながら互いの言葉はテンポ良く投げ渡される。互いのしがらみさえなければ、漸く叶ったこの現状を素直に喜べただろうに。
現実とは誠に非情だ。それは自分が一番よく知っているはずだった。それなのに。
歓喜に現を抜かせば簡単に足元をすくわれ、堕落する。まさに滑稽な姿だった。
どうかそれを彼女に笑ってほしい。ずっと隣で、あんたは馬鹿だねと。


「でもね。俺は後悔はしてないよ」
「嘘よ。でたらめを言わないで」
「それこそ、何を根拠に?」
「……貴方は、そうやって現実から目を反らして、瞑って、逃避するとでも?」
「違うよ」


例え第三者が悲嘆だ悲惨だと叫ぼうとも、どれだけ彼女が不幸になると言っても、それは些細な点でしかない。
彼女が隣にいるという事が全ての終着点であり、幸福への始まりだと言う事を、きっと彼女にどれだけ説明しても頑なに首を縦に振らないだろう。
そんな事、百も承知で今、立っている。


「  」


彼女の名を呼ぶ。
そうすれば君は鋭い眼光でこちらを見据えてくる。その眼に全ての感情を圧し殺して、そうして、けれども弱音は吐かない。
吐かないからこそ、俺は、俺がする全ては結果的に彼女を傷付けていく。
分かってる。分かっているけど、俺はそうせざるを得ないのだ。







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ラストが迷子になったので打ち切り。
所詮はリハビリ。

2014.07.10(木) 01:46



喉元に添えた手に指先が触れる。
やけに暖かく感じた皮膚に、人の肌はここまで熱せられるものなのかと驚愕して、はたと気が付いた。ああ、そうか。私の手が冷たいのだ。

下から呼ばれる音に流れていた思考を向ける。不思議そうにこちらを見る無垢な目と合った。


「どうしたの」
「熱かったなって」
「指?」
「私の手が冷たいだけだったなって」
「そんなことないと思うけど」
「そうだね。所詮は思ってるだけ」


きっとサーモグラフィーで見れば平均よりも少し低めの値で、けれど生身の人間が持つ体温が確かに映るだろう。


「だけれど熱くて、冷たい」


だけどもし、私の精神の温度を図れる機械があったら、きっと真っ青になってるはずだ。
そうして、喉元に添えた手が徐々に体温を奪っている様が確認出来るだろう。


「なら」
「ん?」
「このまま触れていたら、いつかは同じになるかな」


添えたままの手に覆い被さる手。
その感覚はない。もっと言うなら視認できる輪郭もない。
そう、それは所詮思っているだけ。


「……そうだね」


切り取ってしまった手に目を落としながら、君の体温の、その感覚をこの手に染み込ませた。



.

2014.07.10(木) 01:11


夢惑う子供たちを尻目に視線を落とす。映り混んだ手元には射的に使われるような貧相な銃が、だらりと項垂れて数本の指に引っ掛かっていた。
あれを的に打ち落とさなければならないと思うと、どうにも気落ちしてしまうと共に、脱力してしまう。が、しかし。一つ落とすごとにかなりの額が裸のまま懐に転がり込んでくるのだから、いくら気落ちしようとも止められない。
子供を一瞥する。視界右下にて挙動不審な的は不規則な動きこそするが場所は動いていない。その場足を一歩踏み出した半径内のみの行動範囲。今日一発目には最適かと、目を瞑っていても出来る馴染みの動作で弾を込める。
胸内に重みのない謝罪を述べながら、今晩の献立に思いを馳せる。

ああ。今日も平和になるだろうな。



.

2014.04.26(土) 18:32


――また。
夢だった。そう認知できるほど何度も、飽きるほど見た光景。
まっさらな空間に薄ぼんやりとした輪郭の自分。そして


「―――――――!!」


こちらに背を向け、空を仰ぐ少女。
まるで少女との間に分厚い防弾ガラスがあるかのごとく、いっさいの音が聞こえない。
けれど彼女は。


「―――――――!!」


泣いていた。
崩れ落ちたかのように座り込み、今にも壊れそうな華奢な肩を震わせながら空を仰ぐ姿は、まるで世界に絶望した女神のようだと思った。
目の前の空間がびりびりと震えている。音が聞こえなくても彼女が声をからしながら叫び、嘆き、絶叫しているのが分かる。
彼女は泣いているのだ。見ているこちらが居た堪れないほどに。

思いきって固まっていた腕を伸ばす。
しかしやはり目の前に透明な壁があるのか、手は何か冷たいものに阻まれて彼女に届かない。拳を降り下ろしても、その音は彼女に届かない。

そして俺は声を発する。
当然その声も見えない壁に阻まれ、行き場を無くして消える。
そのはずだった。


「!」


少女の肩がよりいっそう大きく跳ねて動きを止めた。少女がゆっくりとこちらに振りかえる。
彼女にやっと届いたのだと、期待に胸を膨らませる俺はそこで気が付く。
彼女の姿に。
彼女の容姿に。
彼女の出で立ちに。


「あ、あ」


それは忘れられない、忘れてはいけない、彼女の、少女の、――の。


「見つけた」


最後の姿だった。










夢は続く。
彼女を生け贄に捧げた、俺の業が朽ち果てるまでは。

2013.08.18(日) 20:55



「いつの日か訪れるだろう別れに、綱吉ならどうする?」



何時になく覇気のない、言うならば落ち着き払った声に、俺は思わずそいつの顔をまじまじと見た。
何処か遠く、俺の知らない風景を懐かしむようなそんな目で、珠琳は窓の外を見ていた。



「なんだよ、急に」



珠琳には似合わない声に虚を突かれて、言葉が喉に引っ掛かりながら外に出る。
何時もならそんな俺の姿に一つや二つ、からかいの言葉が飛ぶのに今日はない。
ただ。



「綱吉なら、どうする?」



淡々とした声だけが言葉を紡ぐ。



「どう、するって……」
「……」
「俺は……」



どっどっどっと、心臓の音が自棄に大きな音を耳元で立てている。
その音が段々俺の声も珠琳の声も掻き消していく。
ただ悪寒だけを残して全てを消していく。

その中で落ち着いた声が俺を現実に引き上げた。
いやむしろその声は。



「ごめんな」



どこか寂しげな色を滲ませた泣き声のよう。



「珠琳……?」
「なに、ただの私の戯れ言だ。忘れてくれ」
「おい、ちょっ」
「けれどな、綱吉」



名を呼ぶその声が、更に色みを増したような気がした。
正面に捉えたその顔は微笑んでるというのに。



「どうなろうとも、お前が決めた事なら私は何も言わぬよ。……それだけは覚えておいてくれ」



泣いているような気がした。
きっとどこまでも俺の幻想に違いないだろうに。
作り笑いでも、俺は笑えなかった。



「忘れろとか、覚えとけとか……矛盾だらけだろ、お前」
「…はは。そうだな」



おかしそうに笑っていても、俺は、笑えなかった。









去らば、愛しき人よ


あの時言えなかった言葉があった事を、お前は知らない。
言った所で、お前が素直に言うことをきかないだろうなんて考えなくても分かってた。
けど言えなかったのは、まんまとお前の言葉に流されたんだ。

結局はお前も、あの時決めていたんだろう。


.

2013.02.03(日) 20:21


もし夢を共有出来るのなら
私は貴方との安らかな眠りを願う


.

2012.10.03(水) 01:03



どうしようもない物事をそのままに捨て去ってしまって、お前は本当にそれでいいのかと問いかけた人間は厭に笑っていたので怒鳴り散らそうとした口は。

「 それじゃあ勿体ないよなあ 」

楽しげに笑う人間のその言葉にどうしようもなく勢いを飲みこまされて俺を震わせたのだった。

そう確かにその言葉に。

「 ああ、勿体ない 」

多少なりともその言葉に。

「 勿体ねえ 」

俺の頭は同意したのだ。


.

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