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ベフ
よいこの日記

4月31日

最初は軽い気持ちで、ふざけ半分で、ほんの興味本位だったんです。なんて自分が一番被害を被ったのだから弁解する必要も無いですけど。いつもタートルネックを着ていて良かった。ミーの首には赤紫の手形がくっきりと残っています。舌には赤い歯形が残っています。しょっぱいものを食べると染みます。あの堕王子め。

スクアーロ隊長がヴァリアーで平穏に生きていくために必要ないくつかの注意事項を教えてくれた。

1.ボスを怒らせないこと
2.ボスの前では沢田綱吉の話は厳禁
3.スクアーロへの報告書は必ず期日内に提出すること(これは無視しても良さそう)
4.ルッスーリアの部屋に入るときは必ずノックをすること
5.レヴィの秘蔵エロ本棚には手を出さないこと
6.ベルフェゴールを出血させないようにすること
7.ボスに失礼な口を聞かないこと

他はまあ納得できるとして、ベル先輩のはどういう意味ですか。血友病の類?と聞くとそういう訳ではないと。別に命に関わるような問題ではないが、いやある意味命には関わるか…隊長は言葉をにごした。とにかく絶対に破るべきでないヴァリアー7ヶ条らしい。隊長、ご忠告ありがとうございました。

という話を聞いたのが一週間前。昨日ベル先輩とペアでそこそこの難易度の任務に当たったので、禁止事項6番目を早速破ってみることにした。
先輩とミーで戦闘に臨むときは大体先輩が攻でミーが守。先輩は防御より攻撃が好きらしくミーも無駄に動き回ったりしたくないから利害は一致している。不本意だけど意外と息も合うし。
つまり先輩は今完全に油断している。ミーのフォローに全部委ねて攻撃に全ての神経を向けている。例えば敵が放ったあの銃弾、ひょっとしたら先輩の腕をかすめるかもしれない、をあえて撃ち落とさないでいたらどうなるだろうか。
ごめんなさい先輩。これは先輩の戦闘センス云々以前の信頼関係の問題ですよね。けどミーだって間違えること、たまにはありますから。
焼け焦げた隊服の袖の隙間からわずかに赤黒い血が見えた。後ろ姿しか見えないがバリケードを展開しつつ動向を伺う。先輩は傷口を見ると動きを止めて黙り込んだ、と思いきやうししししとあの笑い声を上げてバリケードから飛び出し一瞬で残りの敵を片付けてしまった。いつものふざけているような余裕が失われているのにひどく楽しそうで気味が悪かった。ターゲットはスプラッタ映画の作り物みたいに作り物みたいな肉のかたまりになった。バリケードを解除した瞬間、先輩が突如こちらを振り向いた。
ミーの方を見て笑っていた。
やばい、と思った。
すみませんミーうっかりしてたみたいで、さすが天才の堕王子、弁解しながら後退りをするも聞く耳も持たず距離を詰めて、ミーを突き飛ばすと馬乗りになって何のためらいもなく首に回した手に体重をかけた。

苦しい。

前髪の隙間から開き切った瞳孔がミーを見下ろしているのが見える。転んだ拍子にカエルの被り物が脱げて転がっていったのには目もくれていなかった。やめてやめて、力のこもった手に爪を立てても足をばたつかせてもびくともしない。この人正気を失ってる、ていうかなんで勃起してるの。怖い。狂ってる。気道が押し潰されて息ができない。涙が出る。

痛い!

舌を噛み切られるかと思った。痺れてもうほとんど感覚はないけどそれでも口の中を他人の舌がはいずり回るのは気持ち悪い、嫌だ。血と唾液が気管に流れ込んできてむせそうになるけどそれすらもできない。

殺される。

ようやく理解した頃にはもうギリギリで、でもこんな所で死ぬ訳にはいかない。残りわずかな酸素と意識を術に注ぎ込む。術というよりほとんど願望に近かった。

お願い、通じて、お願い、眠って。

涙でぼやけた視界で先輩が耳の方に顔を近付けたのが見えた。血が止まって冷たくなった耳に熱い息がかかる。


けいれんする筋肉のごうごう鳴る音の狭間からなつかしい声が聞こえた気がするけれど、酸欠の頭に言葉を理解する余裕はなかった。
顔を上げた先輩が首から手を離して崩れ落ちたのはミーか意識を失うとするまさに寸前だった。
た、助かった。
先輩の身体に圧迫されながらも肺が痛くなるくらい酸素を求めた。汗がどっと吹き出て頭が痛かった。もうこりごりだ。先輩を押し退けながらそう思った。


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あきゅろす。
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