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幻想スカイブルー
1
赤く染まった空を見ながら、私は一人淡々と歩いていた。
どこからともなく、「夕焼け小焼け」のメロディーが流れてくる。

夕暮れ。
普通の小学生なら家へ帰る時間。
家に帰るとお母さんが用意してくれた温かいご飯があって、家族と一緒に夕飯の時間を過ごしたりするのが一般の家庭だろう。
家族団欒の温かい風景を思い浮かべ、私は歩みを止めずに俯いた。

昔なら、私の家もそんな家族だった。
お母さん、お父さん、お兄ちゃん、お婆ちゃん。
みんなで楽しく、賑やかに暮らしていた。

泣きそうになるのを堪えながら、私は前を向く。
夕暮れは嫌いだ。
周りに誰もいなくなって、一人になるから。
昔を思い出すから。

またあの頃を思い出しそうになって首を左右に振る。
駄目だ、もう泣かないって決めたんだから。
もう一度、前を向いて歩みを速める。
目の前には、大きな豪邸が見えていた。







「……ごめんね、ヒヨリ」

「別にいいって。私もソラと一緒にいれて嬉しいし」

ニッと可愛らしい笑顔で私の幼馴染みであるヒヨリは言った。
ここは、ヒヨリの家。
何故、私がヒヨリの家にいるのか。
それは、私が家にいたくないから。
私は家族やお手伝いの人に嫌われている。

家では居ない者として扱われて、話しかけても誰も返事をしてくれない。
そんな状況がずっと続いていて、私は家に帰りたくなくなった。
だけど、夜遅くに外にいるわけにもいかず、嫌々家に帰っていた。

そんなとき、ヒヨリが声をかけてくれた。
理由を話すとヒヨリは私を家に招いてくれた。
初めは申し訳ないからと言って遠慮していたんだけど、今ではヒヨリの家に行かなきゃ心配して電話がかかってくるようになった。

私はヒヨリに余計な心配をかけない為にヒヨリの家でお世話になることにした。
だから、ここは私の帰る場所。

とは言っても、未だに申し訳ないと思ってるから毎回帰ってきてから謝罪する。
ヒヨリは優しいから良いっていってくれるんだけど。
それじゃあ私の気が済まないから。

「おかえり、ソラ」

「……ただいま、ヒヨリ」

私が謝った後は、いつもこうやって笑顔で出迎えてくれる。
それが私には嬉しくて、温かかった。



「ねぇ、ソラ」

「どうしたの?ヒヨリ」

夕食を食べた後、私はヒヨリの部屋にいた。
他に空き部屋がないからと言って、私とヒヨリは一緒の部屋に寝ている。
今日もいつものようにヒヨリの部屋で私は本を読んでいた。

すると、今まで外で電話をしていたヒヨリが戻ってきて、私に声をかけた。
ヒヨリの顔を見ると、少し嬉しそうな表情をしているように見えた。

「夏休み、予定無いでしょ?」

「え?うん、無いけど」

生憎、ヒヨリ以外に友達と言える人が居ない私は夏休みや長期休暇に予定を立てる事がない。
それがどうかしたの?そう聞こうと口を開く前にヒヨリが声を出した。


「都会に行くわよ」



これが、私の運命を変える出来事になるとは、その時の私は思っても見なかった。



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あきゅろす。
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