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横溝少年の事件簿
(2)




「情報部……き、聞いたことないよね?」



 芽が頭の上にはてなを浮かべながら、宮内少年と横溝少年に尋ねた。



「んー、いや。そういえばどっかで聞いたような……あ!」


 宮内少年は思い出した。“情報部”に入部した友人がいるのだ。その人物とは……。


「上田、だろ?」


 ご存知でない方が圧倒的に多いだろう。上田少年というのは、宮内少年と横溝少年の共通の友人である。宮内少年は上田少年さらに田代少年という友人を含めて三人で帰ることが多いのだ。(宮内少年は横溝少年に一緒に帰ろうと誘ったこともあるのだが、帰り道が違うだろ、と断られてしまった。)



「あー、じゃあその上田って奴すげぇな?」



 木下が感心したように言った。


「え? 何でですか?」


「情報部ってのは、秘密機関みたいなもんで、部員から勧誘されねぇと入れねぇ。それに部員は一学年に一人だけ。……つまり、今その上田って奴は柏木と二人っきりで部活動してるってわけ」


「……考えただけで恐ろしい」


 宮内少年の素直な感想は多くの人達に共感してもらえるだろう。



「……まあ、今日はこの辺にして帰るか?」


 木下の言葉に、他の三人が壁の時計を見ると、時刻はもう午後七時をまわろうとしていた。


「い、いつの間にこんな時間に――」


「たのもーっ!」


「お、おいっ?」


 芽が驚きの言葉を言ってる途中にいきなり生徒会室のドアが開き、二人の人物が入ってきた。


「どーもー、お疲れさんでーっす! 宮内きゅん、横溝きゅん、帰りましょー!」


「馬鹿たれ! 部屋に入るときはノックしろとあれだけ……! あ、お邪魔します」


 ハイテンションな上田少年と、上田少年に注意している田代少年だった。


「さあさあ、帰ろうじゃないか! 横溝きゅん、宮内きゅん、用意はいい感じー?」


「きゅ、きゅんって……。普段は呼び捨てじゃん!」


「それに俺は帰り道が違っもがっ」


 急に横溝少年の声がくぐもった。上田少年が手で横溝少年の口を塞いだのだ。


「分かってないなー! 会長とメグきゅんが二人きりになるのを遅らせちゃ駄目じゃん? 何たって二人はラブラブなんだからさ!」


「メ、メグきゅん……?」


 二人(主に上田少年)の出現によって生徒会室内は混沌状態。探偵倶楽部メンバーと木下は唖然としている。


「……ほら、鞄持ってきたから、帰るぞ? はい、村上も」


 教室に置きっぱなしだったはずの鞄を何故か持っている田代少年。


「よっし、帰りましょー! じゃあねー、会長、メグきゅーん!」


 宮内少年と横溝少年の手をむんずと掴んだ上田少年は、その状態のまま手を振りながら生徒会室を何故か全速力で出て行った。


「お騒がせしてすみません。じゃあ、俺はこれで」


 田代少年は礼儀正しく挨拶をして、上田少年たちを追った。



「何なんだ、アイツらは……?」


 呆然とドアを見つめる木下に芽はおずおずと話しかけた。


「優平先輩、聞いてもいいですか……?」


「ん?」


「なんで、上田君たちは僕たちが生徒会室にいるって知ってたんですかね? なんで鞄が教室に置きっぱなしって気付いたんですかね? なんで僕たちが恋人って知ってたんですかね?」


 ちょっと顔を青くしながら、それでも笑顔で尋ねる芽。木下は少し考えた後に答えた。


「芽と俺が恋人ってのは、意外と知れ渡ってるんだと思う。生徒会室にいるのは唯から聞いたんじゃねぇかな?」


「……そうですよね!」


「……あぁ」


「……ゆ、唯先輩、今、駒田先輩にかかりっきりだし、上田君に教える余裕とかあるんでしょうか?」


「……」


「……」



 唯と同じくらい恐ろしい人物がこの学校にいるという予感が二人を支配していたのだった。




【END】



 

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