ありがとう。
健気×浮気
中学生/別れ/身勝手(?)
『好きだよ。』
僕が同じ塾に通う君から告白されたのは、中学校一年生の冬だった。
君は男で、僕も男で。同性同士の恋愛が認められない中、君は勇気を出して告白してくれたよね。
その当時の僕は、どちらかと言うと地味な方で、勉強だけが取り柄の『がり勉』と呼ばれているような奴だった。
親からの愛情は僕の勉強面に対してだけ注がれているように感じていた。
友達と呼べるような人なんかいやしなかった。
そう、君は初めて認めてくれた人だったんだ。
僕自身の存在を。
だから。
だから、君の告白を受け入れたんだ。
僕を認めてくれる唯一の人。そんな君を、ならば、僕だって愛することができる気がした。
――友達を作ることも、親の愛を素直に感じることもできないような僕でもね。
最初のうちは、本当に楽しかった。
塾で会う度に、こっそり『好きだよ。』と言い合ったり、帰り道で不意打ちでキスされたりした。
休みの日には、2人きりで遊びに行ったり、時には勉強したりもしたね。
『好きだよ。』という言葉が、『大好きだよ。』に変わった春、そしてその言葉が、『愛しているよ。』に変わった夏には、僕の性格は随分と明るくなった。
学校にも塾にも、たくさんの友達ができた。
親だって僕自身を愛しているからこそ、僕の将来に期待していると思えるようになった。
すべては君の惜しみない愛のおかげだよ。
友人関係、家族関係が良くなったことで、僕の成績は更に上がっていった。
もちろん君との仲も良好で。
充実した日々。
でも、それは長くは続かなかった。
「またメールきたし。面倒くさいなぁ」
――いつからだっただろうか。
君という存在を重く感じ始めたのは。
毎日、欠かすことのないメール。
今までの僕にとってそれは、精神安定剤。
毎晩のおやすみコール。
今まではそれがなければ眠れなかった。
会う度に言う『愛しているよ。』
僕にとっての御守り代わり。
でもね、今はもう違うんだ。
僕にメールをしてくれる人はたくさんいる。
みんなに返さなきゃいけないからたくさんのメールは困るんだよね。
電話だって、もうなくても眠れるし、他に電話をくれる人がいるから正直、君からの長電話はメイワク。
それに――
「なぁ、スキだよ」
「僕、コイビトがいるから……」
「いいじゃん、お前だって俺のこと好きなんだろ?」
「そうだけど……。んっ!」
「可愛いやつ。ほら、」
「あ、せんぱ、い……」
憧れだった先輩も僕のことを見てくれる。
今、僕、シアワセなんだ。
いつだって僕の幸せを一番に考えてくれる君なら分かってくれるよね?
変な意地で僕を縛り付けたりはしないよね。
僕を変えてくれた君への最後のプレゼントは、最近全くしていなかったデート。
そして、そのデートを僕らの『最後』にしよう。
始まりは君だったから、終わりは僕の担当だね。
何て言うかはもう決めたんだ。
――君を嫌いになったわけじゃない。
けれども、
『終わりにしよう』
今の僕があるのは君のおかげ。だから、
『ありがとう。』
こんなシアワセなお別れって、珍しいよ、ね?
――僕らの恋は二度目の冬を越すことができなかった。
【END】
━━━━
あとがき
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思い付きで書いたSSです。
ほのぼの、ハピエンを目指しているのに何故か、シリアスというか、暗いし、別れる話になりました。
管理人がハピエン主義ですので、それなりの続編の構想もありますが、まだどうなるかわかりません←
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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