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お嬢
ぶち壊せ!3(柔嬢←金)




その日の朝、俺はめっちゃ気合を入れて髪をセットした。
もちろん服もバッチリや!!

鏡の前で何度も何度もチェックする。

よっしゃ!
これで大丈夫や!!!

なんて言ったって今日は俺とお嬢の初デートなんやから!

ふんふんと自分のバンドの曲を歌いながら準備していると、洗面所に柔兄が来た。

「なんや?今日はライブか?エライ気合い入ってるやないか」

「や、ライブちゃう。今日はお嬢と初デートやねん!」

「は・・・・?」

「今からお嬢に会いに行って来るんや!」

「何言うてんのや」

俺が満面の笑みで返せば、柔兄の表情が一気に怪訝なもんに変わった。
眉間にふっかい皺寄せて、俺をぎろりと睨む。

ああ、怖っ。

せやけど俺は怯まんで!

「付き合いだしてからな、ずっとメールしかしてへんかったんやけどな、やっと今日会えるんや」

「付き合うって、お前・・・」

「言うたやろ?俺がもらうって。この間告白してきたんや」

「・・・・・・」

「ほんならお嬢直ぐOKしてくれてな。で、今日初デートやねん」

俺は怯まずそれを嬉しそうに報告した。
ほらほら、どんどん柔兄の顔が怖くなってくる。
まるで鬼の形相や。

「お嬢は勉強しに行っとるんやぞ。遊びに行ってるんとちゃうやろ?なんでそないな誘惑しとるんや?」

「やって、お嬢って放っといたら根詰めてまうやん?そんなん柔兄が良く知ってることやろ?せやから俺が少しでも和らげてあげようと思たんや。今まではそれが柔兄の仕事やったんかも知れんけど、恋人になったらそれはやっぱり俺がすることやろ?」

「・・・・・」

「この間会うた時も、目の下に隈出来とったし。きっと無理してんねやろなって思って」

「・・・・・」

不図視線を下にして見れば、うっわ、柔兄の握った手がごっつ白なってる。
どんだけ力込めてんねん。
どんだけイライラしてんねん。

そんな怒るくらいなんやったらなんか言えや!

と、思ったのに、柔兄はぐっと一瞬目を瞑ると、盛大に息を吐き出した。

「?」

「・・・・・・お嬢に無理させんなや」

そう小さく呟くと、踵を返して静かに出て行った。

出て行ってから気付く。

俺も握った手の平にごっつ汗掻いてた。
やって、あの怒った勢いで殴られるか思ったんやもん。

そんなん柔兄の怒りが篭った拳を一撃喰らったら、骨なんか粉砕してまうわ。

めっちゃ怖い。

せやけど・・・・
やっぱりあんなに怒ったり、イライラしたりしてるのに、「行くな」とは言わんかった。


柔兄はどこまで自分の気持ちを我慢するつもりなんやろ?




***



今日のデート先はメッフィーランド。
やっぱりデートって行ったらいっぱい遊べて、色んなもん食べれて、笑えて、楽しめるところが一番や!

と、決めた行き先。

お嬢も任務では行ったことあるらしいけど、それ以外では行ったことなくて、一度は遊びに行きたかったらしい。

せやから俺が『今度のお休み良かったら息抜きにメッフィーランド行きませんか?』ってメールしたら、すんなりOKもらえた。

10時にメッフィーランド前で約束して、只今その10時!

お嬢は時間より前に来て待ってたみたいやった。

「お嬢!!!」

「あ、金造」

「すんません!大分待ちました?」

「ううん。今来たとこや」

そうにっこりと笑う。
もしかしたらお嬢の事やから、かなり前に来てたんかも知れん。

これが柔兄やったらきっとお嬢を待たせることなんてせぇへんねやろなぁ。

「堪忍です」

ぺこりと頭を下げると、「かまへんよ」ってくすりと笑う声が聞こえた。
お嬢が笑ってくれるから、俺もにっこりと笑って返した。

いつも可愛らしいとは思ってたけど、今日のお嬢は三割り増しやった。

服装がいつもと違う。
いつもはパンツがメインやのに、今日はスカート履いてはる。
しかも結構短い。
上の服もTシャツとかやなくて、可愛らしいチュニックや。
髪も珍しく飾りが付いてる。

「今日のお嬢めっちゃ可愛いですねぇ」

「そう・・・?で・・・・デートの服とか・・・なんやどないしたらええか分からんから、友達に聞いたんや」

そう言って、顔をぽっと赤らめる。

ああ、ホンマに可愛らしいなぁ。

「なぁ、お嬢、写メってもええです?」

「うちなんか撮ってどないするん!」

「かいらしいから待ち受けにでもしますよって」

一緒に撮りましょ!
って、お嬢の肩を抱いて携帯のカメラで自分撮りした。

お嬢の顔は急に引き寄せられたせいか真っ赤やったけど、やっぱり可愛かった。

それから中に入って、色んな乗り物に乗った。
ジェットコースター、メリーゴーランド、マジックハウスにお化け屋敷にコーヒーカップ。

手当たり次第に乗りまくって、お嬢はそれはそれは楽しそうにしてた。
こんなに笑ってるお嬢を見るのは久しぶりかも知れん。

ああ、そう言えば、お嬢は中3くらいから少しづつ笑うことが減ってきてた様な気がする。

勉強や家の事なんかで色々考え詰めとったんやろか?

正十字学園に来てなんかええ風に変わったんやったんならええんやけど。

お嬢の笑顔を見ながら俺はそんな事を思った。

「お嬢!」

「なに?」

呼び止めて、振り向いたと同時に俺はお嬢の手をぎゅっと握った。

「手、繋ぎましょ?」

「え・・・あ・・・・うん・・・」

お嬢の顔がまた赤くなる。
ホンマに純粋に出来てはるわ。
可愛らしくて仕方がない。
お嬢の手は柔らかくて、思ったよりも小さくて、俺の手ですっぽりと包み込めた。

「お腹減りましたね」

「せやね」

「お昼食べに行きましょか!」

「うん!」

もう一度ぎゅっとお嬢の手を握りなおしたら、お嬢もそっと俺の手を握り返してくれた。




それから近場のショップで食べ物と飲み物を買い、天気も良いので通りに面した席を確保し、席に着いた。

「ねぇねぇ、お嬢!大き目のドリンク買ったもんやからこないなもん付けてくれましたよ!」

ドリンクを二つ頼むより、大きなサイズを1つ買った方が適当な量が飲めると思って買ったら、ご丁寧に先が一つで飲み口二つの、いわゆる恋人飲みが出きるようなストローを付けてくれた。

「コレ使いましょね!」

「ちょ!!それちょっと恥ずかしいやん!」

「え〜〜、なんで?やって恋人やし!」

「そんなん言うても」

「俺こっち咥えますから、お嬢こっちね!一緒に飲みましょ!」

「っ・・・・」

俺がストローを咥えて待ってると、お嬢は真っ赤な顔で躊躇いながらも、片一方の口を咥えてくれた。

ちらりとお嬢を見てにこりと笑えば、お嬢は恥ずかしげにはにかむ。

それからゆっくりと飲んで口を離せば、開口一番、

「もう!めっちゃ恥ずかしい!」

とくすくす笑いながらお嬢は言った。

「こうやって飲むとなんかめっちゃ美味しいもん飲んだ気がしますわぁ」

「そんなわけないやん!」

とまたくすくすお嬢は笑う。
今日はホンマに良く笑いはる。

ここにお嬢と一緒に来れて良かった、と俺は心の底から思った。





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