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お嬢
ぶち壊せ!2(柔嬢←金)




僧正血統の跡継ぎの柔兄。
矛兄が居らんなって色んな重たいもんを柔兄がいっぱい背負ってるのは知ってる。

せやけど今まで精神が折れんでやって来れたんは、何よりもお嬢のおかげやと思う。
お嬢は柔兄を自分でも知らず知らずのうちに支えてるんやと思う。

柔兄の心の拠り所はお嬢。

おとんにきつく何かを言われた時も、ぐっと何かを心の中に押し込むけれど、お嬢の微笑が柔兄のその重荷を消し去ってくれる。

柔兄にはお嬢が必要なんや。

お嬢もそうや。
お嬢もいっぱい色んなもん背負い込んでる。
祟り寺の子って方々で色んなこと言われて、自分で寺を建て直す言うて、なおかつサタンを倒すやとか突拍子もない夢を掲げ上げて。

いつか余りにもきばりすぎて倒れてしまうんやないかと心配するほどに。

せやけど、何時だってその重荷を柔兄が軽くしてあげてた。

柔兄が側に居るからお嬢は倒れんと、くじけんと進んで行けるんや。


そんなもん、端から見とっても良く分かるほどに、二人は信頼しあってるし、求め合ってる。


せやのに、なんで一緒にはなられへんのん?
なんで別々に違う人と結婚するとか言うん?

俺にはさっぱり分からん。


柔兄は何を考えてるんやろうか。

僧正と座主が結婚したらアカンなんて掟あるん?
血の問題やとかがあるん?

廉造に聞いたけど和尚はお嬢に「好きに生きたらええ」って言いはったんとちゃうん?

ほんなら別に誰と結婚しようが自由やん。

好きやったら好きって言えばええのにっ!

俺には理解不能や。




***



柔兄にお嬢をもらう宣言してから3日後。
やっと仕事が休みになったので、俺は鍵を使って日本支部へ向かった。
そして、正十字学園へと移動する。

学校が終って、今から塾に行こうとしているいつもの3人組を見つけた。

「お嬢!!!!」

俺は久しぶりに見るお嬢に嬉々として叫びながら走り寄った。

「?!金造?!」

お嬢も廉造も子猫丸も皆びっくりしてる。

「どないしたん?!京都でなんかあったん?!」

お嬢はえらい慌てて俺の方へと駆け寄って来てくれた。

「お久しぶりです!元気してはりました?京都はいつも通りですえ?」

「ほんならどないしたん?」

「お嬢」

「何?」

「俺と付き合うてください」

「え?」

ニコニコと笑ってお嬢にそう言えば、

「・・・何処に行くのん?」

なんて、お約束なボケをかましてくれた。

「いや、ちゃいます。どっか行くの付き合ってって事ではなくて、好きやから付き合って下さいってことです」

「え?」

「金兄?!」

「金造さん?!」

お嬢の目が驚きで見開いた。
周りも驚いて大声で俺の名を呼ぶ。

「ほんで、気が合うたら結婚しましょ!」

「「「はぁっ?!」」」

ニコニコと宣言する俺に、目の前の3人は心底驚いた声を上げた。



***


「そんなん急に言われても!!!」

と、真っ赤になって慌てるお嬢に、

「せやったら二人でゆっくりお話しましょ!」

と、腕を掴んでズルズルと近くの公園へと連れてきた。
廉造や子猫丸はもちろん置いてきた。

「うち、塾があるから早よ行かんとアカンのやけど」

「ほんなら直ぐ済ませます!!」

お嬢を公園のベンチに座らせ、俺は近場の自動販売機でジュースを買って渡す。
プルタブのプシュっと言う音が、鳥の囀りだけが響く静かな公園に響いた。
お嬢はじっと缶を持って、そんな俺の行動を見ている。

「なぁ、金造。急にどないしたん?」

「急にとちゃいます。ずっとお嬢の事が好きやったんです」

お嬢がかぁっと赤くなって、缶ジュースを弄りながら下を向く。

「ホンマはね、ずっと言わんつもりやったんですけど、柔兄が見合いするって言うから、ほんなら俺が告ってもええかなぁって思たんですわ」

「・・・・柔造・・・見合いすんの?」

お嬢がゆっくりと顔を上げて、俺の顔をじっと見た。
さっきの真っ赤な顔とは打って変わって、顔色はどんどん白んでいく。

「ええ年やし、結婚するんですって」

「そ・・・・なんや・・・」

「俺ね、ずっと柔兄はお嬢の事が好きやと思ってましたんや」

俯くお嬢。ああ、めっちゃ凹んでもうたな、これ。

「せやからね、お嬢の事好きやったけど、諦めようと思ってました」

少しだけ肩が震えてる気がする。

「やけど、柔兄はお嬢の事は好きやけど、結婚したい好きとちゃうって言うから、ほんなら俺がお嬢に告白するって言うたらね、「好きにせぇ」言うから」

「そう・・・・」

「お嬢は、柔兄の事好きちゃいます?」

「うちは・・・・うちは・・・・・」

お嬢の手元を見れば缶を持つ手に力が込められて、指先が白くなっている。


――――かなりショックなんやろなぁ。


なんてそんな様子を見ながら思った。


「うちは・・・柔造の事・・・ええ、お兄ちゃんみたいなもんやって・・・・思ってるだけやし・・・」

「そうですか。俺てっきりお嬢も柔兄の事好きや思ってました」

「そんなこと・・・ないよ」

「せやから、柔兄はお嬢と結婚するんかななんてめっちゃ思ってたんですよ。そしたら柔兄は違うって言うし、お嬢も好きなんちゃうかったんですね」

「うちは別に・・・・」

「お嬢は今好きな人居ますか?」

「・・・おらへん」

「ほんならお試しでもええんで、俺とホンマに付き合ってください」

お嬢の手をガシッと握って、満面の笑みでそう告げる。

「俺、絶対お嬢の事泣かしたりしませんから!幸せにしますからっ!」

「金造・・・」

こちらを向いた顔は今にも泣きそうな眼をしていた。

ほら、柔兄。
柔兄が見合いするって言うたらお嬢はこないな顔するんやで。

悲しくて、悲しくて仕方ないって顔をするんや。
せやのに、自分の気持ちを飲み込んで嘘を吐く。

お嬢も柔兄も真面目過ぎるからアカンのやろか?

なんで自分の気持ちに素直になられへんのやろ?

こんなに、こんなに。お互いに好きで好きで仕方がないってめっちゃ気持ちが溢れてるのに。

「・・・・ええよ・・・」

「お嬢?」

「金造が好きや言うてくれるんやったら。うちなんかでええんやったら」

「ホンマですかっ!」

「うん・・・・」

「そしたらこれからお嬢と俺は恋人同士ですねっ!」

「もう、今から?」

「そうですやろ?」

「そ・・・うか・・・」

「大事にしますね!」

「うん・・・・」

そして、俺はお嬢をぎゅっと抱き締めた。
お嬢はびっくりして、一瞬押し返そうとしたけれど、直ぐに俺の腕を受け入れてくれた。

お嬢はめっちゃええ匂いがした。






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