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お嬢
好きの気持ち 2(柔嬢)





約束の時刻少し前。
待ち合わせの場所に行くと、もうそこには柔造が立っていた。
遠くから見ても目立つくらいに背が高く、カッコいい。
周りにいてる女の子達が時折柔造を見ては、なにやらこそこそ話してるのを見かける。

(あんな目立つところに立っとったら行き難いやん)

柔造の側にこんな子供が現れたら、不釣合いも甚だしい。

やけど時間に遅れるやなんてそんな事出来へんから、意を決して足を進める。
こちらが辿り着くよりも先に、柔造がうちに気が付いてこちらに歩み寄ってきた。

「こんな所に呼び出してすみません。寒ぅなかったですか?」

そう言ってうちに話しかけてくる。

「ううん。大丈夫。柔造こそ寒なかった?」

「いえ、大丈夫です」

「そやったら良かった。なぁ、何処行くん?」

見上げれば、じっと見詰める柔造と目が合った。
けれど、それはいつものように優しいような目じゃなくて、なんだか少し曇りを含んでいた。

「どない・・・したん?」

気になって、問いかければ、溜息と共に、

「なんでもないです」

と、返事が返ってきた。

なんや・・・いつもと違う。
なんでやろ?
ちょっと怖い。

「とりあえずここは寒いですし、中入りましょか?」

そう言うと、目の前にあったショッピングモール目指してサクサク歩き出してしまった。

なんやろ・・・・うち・・・なんかした?

さっきまで、もしかしたらデートなんかも知れん、なんてドキドキしていた自分の心は急速に冷えて行った。
やっぱりただの買い物なんやわ。
それに、志摩達みたいにうちの事見ても何も言うてくれへん。
こんな時期に柔造の側を歩くんやったら、それなりに着飾って歩きたいなんて思っていたのに。
やっぱりうちの服装なんて、そないにええもんとちゃうかったんやわ。
やっぱり、こんなん似合わへんのやわ。
いつもと同じような服で来たら良かった。

なんだかすごく悲しくなった。


暫く無言で歩くと、急にピタリと柔造が足を止めた。

「どなしいたん?」

「ああ!!!もうっ!!!」

声を掛けた途端に、柔造がいきなり叫んだ。

「?!」

そして、腕を掴まれてぐいぐいと引っ張られる。

「え?!ちょ!!!なにっ?!?!」

引っ張られて、着いた先はショッピングモール内の人気のない場所。
誰の目にも留まらない様な死角的場所。

着くなりいきなり、抱き締められた。

「え?!」

「ホンマお嬢は何も分かってない!」

「じゅ・・・ぞ?」

「何で俺に会う前に、他の奴等にそんな姿見せるんですかっ!」

「え?なに???」

「何であんな写真撮ったりするんですかっ!」

「え?・・・写真?」

「今日、呼び出した理由かて分かってないでしょ?」

「え・・・買い物・・・とか?」

はぁぁぁ、と抱き締められたまま、うちの肩に頭を乗せて盛大に溜息を吐く。

「な・・んなん?」

「知ってますか、お嬢」

「何?」

「柔造はお嬢が思ってるよりヤキモチ焼きなんです」

「やきもち?」

「いくら兄弟や言うたかて、あないな仲良さげな写真をこんな日に撮るやなんて、イライラして胸が焼け焦げそうですわ」

「何の話?」

「せやし、俺のところに来る前になんで廉造の部屋なんかにそんな格好のまま行くんですか?」

「志摩の部屋・・・?」

抱き締められていた腕がスッと離され、柔造はポケットから携帯を取り出すと、画面を開いてうちに見せた。
そこに映っていたのはさっき撮った、金造との写メ。
それから、携帯を弄ってまた出した画像はやはり志摩がさっき撮ったうちの写メ。

「そないな格好・・・・柔造が一番最初に見たかったのに・・・・」

「なんで、その写真・・・」

「アイツらから嬉しそうな文章と一緒に送られてきましたわ」

「や・・・やって!!!こんなんあんまり着た事ないから、似合うかどうか分からへんで・・・志摩やったら似合てるかどうかわかるかと思って聞きに行っただけやし・・・」

せやのに、柔造がそんな事で機嫌悪くなるやなんて思わへんやん。

「こんな日に柔造の側を変な格好で歩かれへんって思ったから・・・」

「お嬢はいつだって、どないな格好してたかてかいらしいって何時も言ってますやろ?」

「そんなん、何時も何時も言うことが同じ過ぎて、ホンマなんかどうなんか分からんもん!!」

「お嬢・・・?」

「柔造は何時も可愛いとか、好きやとか言うけど、どこまでホンマにそう思てるんかちっとも分かれへんもん!!!」

「いつだって本気で言うてますえ?」

「嘘や!ずっと小さい頃からいっつも同じ事しか言わへんやん!!!いっつも同じ顔して、いっつもおんなじような事言うもん!!せやから・・・」

「せやから・・・信じてもらえませんのですか?」

「せやから、どこまで・・・本気なんか分からんもん・・・・今日かて・・・何でこんな日に出かけようなんて言ってくれたんか分からへん・・・」

また柔造にぎゅうと抱き締められた。

「柔造はいつだってお嬢が好きなんです。お嬢が小さい頃からずっとずっと。今も昔も好きな気持ちはちっとも変わってへんのです」

「そんなん・・・」

「お嬢がこないに大きくなりはったから、漸く自分の気持ちを打ち明けることが出来ましたんに、ちっともお嬢は柔造のことを信じてくれへんし・・・」

「やって、そんなん・・・からかってるだけやと思てたもん」

「会いたかった言うても、何の反応も示してくれへんし、こんな日にお誘いしても返事は素っ気無いもんやったし」

「やって、ホンマにそう思ってんのか全然分からへんから。あんまり期待して、ちゃうかったらショックやんか」

「こんなに好きやのに・・・他の誰かが俺よりも先にお嬢のかいらしい姿見ただけで、こないにイライラするのに・・・」

「ホンマ・・・に?」

「今日かて、お嬢とデートしたいと思て誘いましたのに」

「クリスマス・・・やから?」

「したかったんでしょ?クリスマス」

「なんで知って・・・あ!!!」

「前に見てはったやないですか。あの本・・・」

「知ってたんや・・・」

「お嬢の事やったらなんでも知ってたいんです。何でもしてあげたいんです」

「じゅうぞ・・・」

「今日は1日独占してデートしたいって思てたのに・・・せやのに、最初からあんな・・・」

「うち・・・ごめんなさい・・」

「どないしたら、柔造の気持ち伝わります?どないしたら柔造がお嬢の事ばっかり考えて、好きで好きでたまらんて言うことが伝わりますか?」

「そんなん・・・」

「お嬢・・・どないしたらええですか?」

「・・・手・・・・」

「て?」

「やったら・・・・手・・・・ずっと繋いどって・・・・」

「手をですか?」

「そしたら、手から柔造の気持ち、流れてくる気がするから・・・」

「お嬢・・・」

「ずっと放さんとって・・・」

うちもぎゅっと柔造の背中を抱き締め返した。
大きな背中。
あったかい胸の中に顔を埋めて。
柔造の匂いを吸い込んだ。

「お嬢、好きですえ」

「うちも・・・好きになってええの?」

「もちろん。いっぱいいっぱい好きになってください」

「柔造・・・」

「お嬢・・・大好きですえ」




それから仕切りなおして、うちらは二人でクリスマスデートを満喫した。
初めてしたクリスマスイベント。

寺の子のうちらがするのはおかしな話やけれど、それでも、たまにはこんな雰囲気に飲まれてみたかったんやもん。


大好きな人と、過ごす素敵な1日。
とてもとても、幸せだった。




●好きの気持ち 2●


せやけど・・・

「意外やわ」

「何がです?」

「ヤキモチなんて妬くようなタイプと思わへんかった」

「そりゃ好きな人が他の男と仲良う喋ってたら、イライラして掻っ攫いたくなりますよって」

「ふぅん・・・・」

「独占欲が強いんはお嫌いですか?」

「・・・ううん・・・多分、うち鈍感やから、ちゃんと攫ってくれな分からんと思うよ?」

「お嬢・・・・!」

「やから、ちゃんと・・・・繋いどってな?」

そう言って、うちは柔造の手をぎゅっと握り締めた。




!!MERRY CHRISTMAS!!

素敵な日をお過ごしくださいませ。




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あきゅろす。
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