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パロ
ずっといっしょ 8(柔勝)





≪勝呂side≫




目が覚めると、手をしっかりと握る感触があった。
少し頭を動かして、横を向くと、俺の枕元に頭を寄せ座りながら眠る柔造が居た。

「じゅ・・・ぞう・・・」

ああ、そうか。
昨日学校から帰ってあのままずっと寝込んでしもて、それから・・・夜中に柔造が帰ってきて・・・・。



『手・・・繋いどって』



なんて事を言ったのを思い出して、顔から火が出そうになる。

何言うたんや、俺は。
子供やあるまいし、そんな恥ずかしいこと・・・。

せやのに、柔造はこうやって手を繋いだまま、こんな無理な体勢で俺の側で寝てしもて。


「堪忍・・・」


柔造の黒髪を見詰めながら、ポツリと呟く。

(今、何時やろか・・・?)


枕元にある時計を見上げ、時間を見るともう既に7時を回っていた。

(あ!!!こんな時間やんか!柔造遅刻してまう!!)

そう思って、柔造の手をそぉっと外し、上半身を起こすと柔造の肩をゆさゆさと揺する。

「柔造!柔造!!!朝やで!!!起きな遅刻してまう!!!」

「ん・・・・・ぼ・・ん・・?」

「起きて!」

「あ・・・・坊!!熱は?!」

ぱちりと目を開けたかと思うと、ガバっと頭を上げ、俺を見た。

「え?ああ、大分マシや」

「そうですか!!良かった!!!」

「堪忍な、こないな所で寝かせてしもて・・・体しんどない?」

「そんなん気にせんとってください!そんなんより坊の体の方が大事です」

「ありがとう・・・・あ!せやけど、時間!!」

「今日は休みますからええですよ」

「昨日帰ってくんの遅かったのに、俺が無茶言うたからか?やっぱりしんどいんちゃうん?堪忍・・・」

「ちゃいます!!ちゃいます!!今日は坊の側で看病したいから休むんです!」

「え?」

そう言うと柔造は、こきっと首を鳴らして立ち上がり、う〜〜んと一つ伸びをするとにこりと笑った。

「お腹すいてませんか?おかゆさんでも作りましょか?」

「やって、柔造仕事・・・・」

「せやから、休みますって!気にせんとってください」

「そう・・・なんか?」

「はい。待っててくださいね。作ってきますよって。あ、学校にも連絡いれとかなあきませんね」

「おん・・・せやな・・・」

「ほんなら、また寝とってくださいね」

またふわりと微笑むと、柔造は俺の部屋から出て行った。



起こしていた体をぽすりとベッドに落とす。
柔造のふわりと微笑む顔を思い出すと、口元がじんわりと緩んだ。

看病なんかさせて柔造には悪いかも知れないけれど、なんだかとても嬉しかった。

昔みたいに構ってくれることが、あの頃のように・・・・いや、あの頃以上に嬉しくて、少しでも柔造が側にいてくれるかと思うと、本当は思っちゃいけないだろうけれど、風邪を引いて良かったと思った。

手に残る柔造の握った感触。

きゅっと手を握り締めて、胸元で抱き締めた。


こんなに柔造の事が好きだったなんて、自分でも気が付かなかった。
ただ側にいられるだけでいいと思ってたのに。
本当は、もっと近くに居たかっただなんて。


女やあるまいし・・・・。
こないな女々しいことばっかり思うやなんて。

情けないなぁと、天井を見上げ苦笑した。



**



暫くすると、柔造がトレーにおかゆとお茶を載せ、部屋へと入ってきた。

「起きれますか?」

「ん。平気や」

一度机の上にトレーを置くと、椅子をこちらまで持ってきてテーブルの代わりにしてトレーを置いた。
俺が起きるのを確認すると、かゆを一匙掬って、ふぅふぅと息を吹きかけ冷ますと、俺の口元まで持ってくる。

「・・・・柔造・・・」

「なんですか?」

「俺・・・もう、子供やないし、一人で食べられるで?」

「え?ああ!!!そうですねぇ。なんや昔の癖で」

「碗ごとくれへんか?」

「ああ、はい」

そう言って、茶碗ごと受け取って、自分で食べる。
そんな俺の様子を見て、柔造が苦笑した。

「ホンマ、大きくなりましたんやねぇ」

「3年もあんまり会うてへんねんから・・・しゃぁないやん」

「ホンマに。何やもったない事したんかも知れません」

「なんで?」

「坊の成長が途中から見れてないんですから」

「まだ成長途中やし、今からでもようさん見れるやん」

「そうですねぇ」

くすりと穏やかに笑う柔造。
こういう気持ちは兄のような心境なんやろか?
それとも親のような心境?

どっちにしたって、子供を見るような目で見てるのに違いは無い。

もう少し年が違ってたら、関係は変わっていたんやろか?

年が違えば、もしかしたらこないに柔造の事を好きにならずにすんだのかもしれないけれど。


「坊」

「ん?」

「これから当分、夜は早めに帰ってきますね」

「なんで?」

「抱えてた仕事大分減りましたから。定時で上がれると思いますよって」

「・・・・そうなん?」

「それから休みもちゃんと取れると思います」

「大丈夫なん?」

「はい。まだ東京案内もろくにしてませんでしたやろ?せやからどっか行きたい所あったら一緒に行きましょね?」

「ええのん?」

「はい。何か希望あったら考えとってくださいね」


なんやごっつ嬉しいこと聞いてる気がする。
そしたら・・・柔造と居れる時間が少し増えるんや!
それだけで十分やないか。


「俺、柔造と一緒に居れるんやったらどこでもかまへんよ」


そう言って笑いかけると、柔造は俺をじっと見てピタリと静止した。

「どないしたん?」

「いえ・・・・あの・・・あ!!!お薬っ!!!」

「?」

「お薬買いに行ってきますっ!!!!お茶碗そこ置いとって下さいねっ!」

そう言うといきなり立ち上がり、バタバタと部屋を出て行った。

なんや?
急にバタバタしだして。
ちょっとびっくりしたが、まぁええか、と俺はそのままもぐもぐとかゆを食い続け、食べ終わるとまた布団に潜り込んだのだった。


昨日帰って来た時の寂しさは、柔造のほんの些細な言葉で姿を消した。






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