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パロ
ずっといっしょ 4(柔勝)


≪柔造side≫




昨夜ベッドに入ってから、朝食を作ってる最中、出勤中、勤務中、そして帰宅している今もなお、俺の頭は必死で打開策を打ち立てていた。

どうすればこの拷問の様な生活を難なくやり過ごせることが出来るだろうか?
どうすれば坊に当たり障り無く接し、それでいて且つ遠くに離れることが出来るだろうか?

まず一つ。
なるべく目は合わせ無いこと。

あの目ではにかむように微笑まれて、「柔造・・・」等とふわりと呼ばれては、思わず手が伸びてしまう。
家に帰れば出来るだけ用事をしながら、話などを聞こう。
そうすれば、坊を避けてるようには見えないだろう。

もう一つ。
出来るだけ一緒に居る時間を減らす。

一緒に居る時間が長ければ長いほど、欲望は対比して成長する。
ならば離れればその逆もまた然り。

食事は夜から朝にかけて、3食分を仕込む。
食事は大事だ。
坊がお腹を空かしたり、栄養不足で倒れたりしたら大変だ。
そこはきっちりとしなければ。

仕事の残業時間を増やして、坊がお腹が減って困ってしまわない程度に遅く帰ろう。
休みも休日出勤すれば良い。

週に何度かは一人で食べてもらうことも・・・・本当ならばしたくは無いがそれも思案に入れて・・・。

余りにも一人にしてしまうと、たくさん人の中で育った彼はきっと寂しくてホームシックになんかにかかってしまうかも知れない。
そして、勉強が手に付かなくなったらそれこそ大変なことだ。


よし!当面はこの作戦で行こう。
徐々に関係を慣らしていけば、きっと乗り越えられるはずだ!



**



帰宅してリビングに入れば、気配を感じたのか坊が自室から出てきた。

その姿は昨日とは打って変わって、まるで別人のようなものだった。
思わず「おお」と声を漏らしてしまう。
素直に感動して、

「またえらい髪形になりはりましたね」

と言えば、

「へん・・・・やろか?」

と、自分の髪をくしゃりと触りながら俯き加減で見上げ、照れたようにこちらを見返す。

ああ・・・・
その角度・・・・
可愛いて仕方ない・・・


と、思い、アカン!!これがアカンのや!
なるべく平然を装って答えを返す。

「いえ、ごっつ似合てはりますよ。どないなってるんですか?」

そう言うと嬉しそうに坊は自分の髪形を説明しだした。

ああ、そんな顔も堪らん・・・


また、はたと思い、落ち着け!と心の中で叱咤する。

数年間、録に会ってないブランクがあるせいか、どんな表情も新鮮で可愛いて仕方ない・・・・。

アカン、もう、こんなん無理や・・・・

と、ネクタイを解き、逃げるようにキッチンへと足を向けた。

キッチンで食事の準備をしだすと、坊がいきなり女の話をしだした。


「柔造は・・・・彼女とかおれへんのん?」


そう言うのが気になる年頃なんやろな。
やっぱり坊も彼女とか欲しいんやろか?
と、少しばかり胸に何か燻るものを感じながら答えを返す。


「いてますよ」


いてるにはいてる。
ただ付き合ってはいるが、一人でいる寂しさを埋める程度の関係やと俺は思てる。
ただ人肌恋しいから付き合ってる。
そんな感じや。
いわゆる恋人ごっこ。
相手は俺のことを好きやと言うてくれるけれど、俺は一度もその言葉を口にしたことは無い。
酷い男かも知れんが、産まれてこの方本気になれる女なんか現れたことなんて無い。

少しばかり良い子がいたとしても、その向こうにはずっといつまでも坊の姿があり続ける。

きっと、それは死ぬまでそうなんかも知れん。

せやから、「可愛い?」とか「綺麗?」とか聞かれてもよう答え切れん。

俺の中でいつまでもずっと可愛いのは坊や。
いつまでも凛として清楚で純真で綺麗なんは坊や。

それ以外の人間になんかそないに興味は無い。
もちろん結婚やなんて考えたことも無い。
せやのに・・・

「俺、邪魔やない?」

なんて言葉を呟きはるから、思わず顔を上げてしもた。

邪魔やなんて一度たりとて思ったことなんてあるはずが無い。
むしろ一緒に居たくて、居たくて仕方ないほどの存在やのに。

そんな風に俺が思ってると、思われてることがショックや。

「なんでです?」

「いや・・・やっぱ、彼女さんと会うのに、この部屋とか使うんやろ?」

「家には入れた事ありません」

「そうなん?」

「会うのはずっと外か、相手さんの家ですね」

「そうなんや」

「ええ」

「ほんなら、仕事帰りとかに会うんやろ?俺の事気にせんでええし、今まで通りにしてな」

気遣わないといけない俺が、坊に気遣われることが苛立って堪らん。

もう、ホンマどないしようも無い俺の気持ち。
なんで、こないに俺は最低なんやろか。


それから、坊がぽつりと「ええなぁ・・・」と呟いたことに、俺のもやもやはまた一層強くなった。


なんで、俺は坊のことを抱き締められへんねやろ。
何で、俺は今にも喉から溢れ出そうなただ一つの言葉を言えることは出来へんのやろ。

こうやって側にいるだけで、どこの誰かも分からん奴に、その手を取られて行ってしまう姿を指を咥えて見ていないといけないのかと思うと・・・。

嫉妬と羨望で胃の辺りがギリギリとした。






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