パロ
ずっといっしょ 3(柔勝)
≪勝呂side≫
次の日、柔造に教えてもらった店で、髪を切って染めてもらった。
今までよりもちょっとワイルドでええ感じになったな、なんて自分では思うけれど・・・・。
やっぱり柔造は嫌がるやろか?
気合入れるつもりで変えた髪形は、今までとはあんまりにも雰囲気も違うさかい。
今日の夕食は二人で取る予定。
柔造の仕事の帰りが遅い日もあるから、今後は一人で食べないといけない日もある。
朝食と、弁当と、夕食は全部柔造が作ってくれる。
俺は飯なんて作った事がないから、任せるしか仕方ない。
でも、やっぱこの機会に自分でも作れるようにもならんとアカンのやろな。
忙しそうな柔造の手を煩わせる訳にもいかんやろし。
掃除は好きやから、掃除は自分でする。
洗濯は機械に放り込んで、洗剤入れて回したらええだけやねんから、それくらいは出来る。
一緒に住む以上は迷惑ばっかり掛けられへん。
自分の事はちゃんと自分でせな。
柔造が帰ってきた気配がしたから、自室を出た。
「おかえり」
「ただいまです」
そう言って、振り返った柔造が「おお」と、目を丸くして驚いた。
「またえらい髪形になりはりましたね」
「へん・・・・やろか?」
「いえ、ごっつ似合てはりますよ。どないなってるんですか?」
「あんな、真ん中だけちょっと長めでな、サイドだけ短こしてもろてん」
「へぇ・・・」
「ほんでな、あんま長さ違うの分からへんから、真ん中だけ黄色くしたんや」
「中々お洒落やないですか」
「そう・・・か?」
なんや柔造に褒められると嬉しい。
「女の子にもモテるかもしれませんね」
「別にそんなつもりでしたんちゃうし」
などと、柔造はネクタイを緩め、するりと解きながら会話をする。
それから、「ご飯の用意しますねぇ」と、キッチンに足を踏み入れ、朝から仕込みだけだけはしていってた食事を用意し始める。
「なんや手伝う事ある?」
「ああ、ほんならお皿の用意とかしといてください」
「おん」
対面式のキッチンやから、柔造の姿はよう見える。
手際よく食事の準備をしていくのは流石やなぁと思う。
「柔造は・・・・彼女とかおれへんのん?」
ずっと気になってたことを聞いてみた。
モテるモテへんの話が出たんやったら、タイミングは今や思たから。
「いてますよ」
さらりと返事は返された。
瞬間、ズキンと胸が痛くなった。
「せやわな・・・柔造昔からモテとったもんな」
「そないな事ないですけど、まぁ、この年ですし、おらへん方がおかしいですやろ?」
「せやわな」
平然を装って会話を続けるけれど、ずきりずきりと痛む胸の奥。
あっさりと返された返事は、ごく自然なもので、何の躊躇いもなく。
俺は柔造の事を慕っていて恋愛対象ではあるけれど、柔造はそんな感情なんてきっと微塵もないし、弟みたいなもんやし、家族みたいなもんやし、聞かれて難なく答えるのは当たり前なんやろ。
せやけど・・・分かってはいたけど・・・・息が苦しい。
「か・・・可愛いん?」
「さぁ・・・どないですやろか」
「綺麗なん?」
「どうですかねぇ・・・」
「長い事付き合うてるん?」
「どうでしたかねぇ・・・」
「結婚とかすんの?」
「いえ。そんなつもりはないです」
「俺、邪魔やない?」
「え?」
ずっと、下を向いて調理していた柔造がぱっと顔を上げて、俺の方を見た。
「なんでです?」
「いや・・・やっぱ、彼女さんと会うのに、この部屋とか使うんやろ?」
「家には入れた事ありません」
「そうなん?」
「会うのはずっと外か、相手さんの家ですね」
「そうなんや」
「ええ」
「ほんなら、仕事帰りとかに会うんやろ?俺の事気にせんでええし、今まで通りにしてな」
心にも思ってない事をすらすらと言う口。
案外平気で居れるもんなんやな、と思た。
しゃぁないやん。
元から叶わへん願いなんやし。
こうやって、少しでも一緒に居られるだけで満足なんやし。
今までみたいにずっとずっと、会われへんわけちゃうし。
せやけど・・・
「ええなぁ・・・」
なんて。ポツリと口を吐いて出た言葉。
きっと、柔造のことやから、大事にしてあげてるんやろな。
昔、俺が良くされてたみたいに、大きな手の平で撫でてあげたりしてるんやろな。
柔造の愛を一人で受け止めてるんやろな。
なんて思うと、羨ましくてしかたなかった。
「坊にもすぐ彼女出来ますよ」
柔造はふわりと笑ってそう言うと、
「出来ましたから食べましょか」
配膳の用意をしだした。
俺が羨ましいんは、柔造に彼女が居る事やなくて、柔造の彼女になれること。
俺が女やったらちょっとでもそんなチャンスはあったんやろか?
なんて、考えたってどうしようもない事を考えて、小さく息を吐いた。
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