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パロ
ずっといっしょ 番外編 バレンタイン(柔勝)




世間ではもう直ぐバレンタインとか言う好きな人にチョコを送るイベントの日らしい。
ありとあらゆる店がバレンタインの看板を掲げている。


バレンタインって・・・
女の子が好きな人にチョコを送る日やんな?
俺は女ちゃうし、こんなん関係あんのかなぁ?

などとぼんやり店の前を通りながら思う。


柔造はきっともてるから、毎年たくさんもらっているのだろう。

本来、柔造のような素敵な男の恋人ならばやはりそんなイベントの日にはチョコを渡すのが有体なのだろう。
けれど、いかんせん今現在の恋人である自分は男だ。

男でもやはりチョコを送るべきなのだろうか?

と、考えてバレンタインコーナーとやらに目をやると、何処も彼処も女の子で溢れている。

あんな中でチョコを買うだなんて、俺には到底無理や。
恥ずかしすぎる。

作って渡す、なんて方法もあるのだろうけれど、俺にはそんな技術はない。

どうしたものか・・・・と考えてはみるが良い案も浮かばないので、この日はそのまま帰宅した。




***



2月14日バレンタイン当日。

朝、学校に着いて靴を履き替えてる時、奥村がだだっと走り寄って来た。

「おはよ!勝呂!」

「おう、おはようさん。なんや朝からどないしたん?」

「これ!」

そう言ってぐっと差し出された紙袋。

「なんこれ?」

「チョコ作ったんだ!」

「・・・・チョコ・・・・」

「おう!結構上手く出来た自信作なんだぜ!」

「俺がもろてもええのん?」

「もちろん!勝呂の為に作ったんだから!」

「なんで俺の為やねんな。もっと他にあげる人おらんのんか。って言うかお互い男同士やないか」

「勝呂にあげてぇんだから作ったんだろ!もらってくれねぇのかよ?」

「そうなん?ほんなら・・・せっかくやし、もろとくわ」

奥村の料理はハッキリ言って上手い。
せやからきっとこのチョコも美味いんだろう。
俺の為に作るってのはどうも納得いかへんけど、こうやって朝一番に持って来てくれたんやからありがたく受け取ることにした。

「おおきにな」

そう言って、笑って受け取った。



教室に入れば、奥村君が声を掛けてきた。

「おはよう、勝呂君」

「おはよう、奥村君」

「これ、受け取ってもらえないかな?」

と、満面の笑みでまたしても差し出された紙袋。

「・・・・なんやろか?これ?」

「もちろんチョコレートだよ」

「・・・・えっと・・・・」

「ネットでね、美味しそうなのを見つけて。コレ勝呂君に食べて欲しいなぁって頼んだんだ」

そう、ふわりと笑って告げる。

「もちろん本命だから」

と、耳元で囁くように告げられる。
思わずかぁっと頬が熱くなった。
そんな事を言われても、俺はコレをどう受け取ればええんや。

「もらってくれるだけで良いよ。折角買ったんだし。ね?」

「せやけど・・・」

「勝呂君がもらってくれないならコレ、ゴミ箱行きだよ?もったないでしょ?勝呂君以外に渡すつもりなんてさらさらないし。僕が食べるなんてそんな惨めなことしたくないし」

「そんなん・・・」

「はい。だから受け取って」

「・・・・おん・・・」

結局紙袋をしっかりと手に握らされた。
中を見れば綺麗な包装紙に包まれた小さな箱。
外装から見てもなんだか高そうなものに見えた。

「こないな立派なもん、ホンマにええのん?」

「もちろん。勝呂君のためだから」

そう言って、またにっこりと奥村君は微笑んだ。
まぁ、本命言うてもどこまで本気かも分からへんし。
いつもの冗談かも知れんから、受け取っとこか。

「おおきに。ほんならありがたく頂くわな」

そう言って俺もにこりと笑って礼を言った。



女の子からも数件チョコを渡したいと言われたが、流石に女の子から受け取るのは良くないと申し訳ないが断った。


俺のカバンの中には奥村兄弟からもらったチョコが二つ。
バレンタインちゅうもんは男でも渡すもんなんやな。

せやけど・・・俺は・・・・。

やっぱり店で買うとか恥ずかしいことは出来へん。

そんな事を考えながら帰り道に多くの店が立ち並ぶ大通りを通って帰った。

柔造は俺からのチョコなんか欲しい思うんやろか?
もしそうなんやったら、やっぱりなんかせなアカンやろ。

うんうん悩みながらとりあえず何か代わりになるようなものはないかと、大きめの雑貨屋へと足を踏み入れた。



***



自宅に帰ると、俺宛の宅急便が届いた。
差出人は「志摩金造・廉造」の連名。

なんやろか?

と、開けてみれば、出てきたのは綺麗に包まれた箱。

「チョコレート・・・・」


なんや今年は男が男に送るんが流行なんか?

中に入ってる封筒に書かれたメッセージは

『愛してます!!!(金造)』

『めっちゃ好きです!(廉造)』


「・・・なんやこれ・・・」

でかでかと乱雑に書かれたメッセージを見て思わずくすりと笑ってしまった。

まぁ、ありがたく受け取っとくか。




それから暫くすると柔造が帰ってきた。

いつも通り出迎えて、お帰りとチュっとキスをする。
外の寒さで冷えた唇は冷たかった。

「おかえり」

「ただいまです」

「今日もよう冷えたなぁ」

「そうですねぇ」

カバンを置き、マフラーとコートを外し、ダイニングの椅子にとりあえず掛けながら会話する。
柔造は俺の名を呼んでニコニコしながら「はい」と何かを差し出した。

「なんこれ?」

「ハッピーバレンタインです」

「チョコレート?」

「はい。坊のために買うてきました」

「・・・柔造も買うたん?」

「・・も?」

「おん。なんや今年は男からチョコもらうんやけど、流行なんか?」

「・・・誰からもらいましたん?」

「えっとな、奥村兄弟と、金造と志摩」

さっきまでニコニコしとった柔造の顔が、いっぺんにしかめっ面になる。

「なんでそないなもん受け取るんですか」

「やって、別に女の子からとちゃうし・・・友達やし・・・アカンかったん・・・?」

「友達て・・・・」

「友チョコ言うヤツやろ?男も男にあげるんが流行ってるのんか?俺はよう分からんのやけど」

やっぱり恋人が居ったら男女関係なくチョコって名の付くもんはもらったらアカンかったんやろか?
せやったら、柔造に悪いことしてしもたかも知れん。

「もろたアカンかったんやな・・・堪忍・・・俺そこまで気ぃ回らんかった・・・。怒ってる?」

「坊が友チョコ言いはるんやったら、まぁ。ええです」

柔造は苦笑しながらそう言った。

「あ、でも俺のは友チョコちゃいますよ?」

「そんなん、知ってる」

くすりと笑って返すと、柔造も機嫌を直してくれたんか笑い返してくれた。

「開けてみてください」

「おん」

受け取った包みを開けてみると、それは俺がこの間テレビで見たチョコレートだった。

「これって・・・」

「美味しそう言うてはったでしょ?食べてみたいって。せやから買うて来ましたんや」

「コレ、めっちゃ並ばな買われへんって、あん時テレビで言うとったやん」

「ええ。並びましたね」

「並んでるの女の子ばっかりとちゃうん?」

「そうでしたね」

「恥ずかしなかったん?」

「いえ、別に」

柔造はニコニコと笑って返してくれる。
恥ずかしないって・・・。

俺はチョコを買うのがめっちゃ恥ずかしくて、柔造に上げるのもよう買わんかったのに。
せやのに、柔造は並んでまで買ってきてくれたやなんて。

「堪忍・・・」

「坊?」

「俺、なんも買うてへん。買おうかと思ったんやけど・・・やっぱ店の前行ったら恥ずかしゅうて・・・」

シュンと頭をもたげると、柔造がぎゅっと俺を抱き締めてくれた。

「買おうと思ってくれはったお気持ちだけで、柔造は幸せですよ?」

「堪忍な・・・」

「気にせんといてください」

「あ・・・せやけどな」

「はい?」

抱き締められた腕の中からひょこりと顔を出して、くっと柔造のお腹を押して少し体を離した。
すると、柔造が腕を緩めてくれたので、そのままするりと抜け出し近くに置いてあった小さな袋からまた小さな袋を取り出した。

「これ」

「?なんです?」

柔造にその小さな袋を手渡した。

「えっとな・・・なんや、チョコの入浴剤やって」

「入浴剤?」

まじまじと板チョコのイラストが描かれたパッケージを柔造は見ていた。

「なんやチョコの代わりになるもんないかなって、雑貨屋行ったんや」

「はい」

「でな、そこで女の子が会話しとってな、この入浴剤使うとなチョコになった気分になれるんやって」

「?」

「めっちゃ甘いんやけど、自分がチョコになった気分になれて幸せやぁとか言うて話しとってな」

「ええ」

「せやから・・・」

「はい」

「俺がこの風呂入ったら、チョコの気分になれるんかなって思って」

「???」

「チョコの気分になった俺とかやったら・・・アカンかな・・・って・・・」

「?!」

柔造が目を見開いて、静止した。
ああ、やっぱこないな素っ頓狂な話面白くも何ともないか。
シャレにもなれへんか。

「あ・・やっぱアカンか・・・そないな阿呆みたいな話やったらやっぱアカンよな」

あははっと、乾いた笑いを漏らしながら柔造を見やると、真剣な眼差しとかち合う。
あれ?急にどないしたんや?

「坊・・・・」

「なに?」

「それは・・・チョコみたいになった坊を、美味しく頂いてもええって事ですやろか?」

美味しく頂く?
って・・どう言う事や?

「体中甘ぁなった坊を全部食べてしもてもええと・・・?」

食べるって・・・あれ?
え・・あれ?

あ・・・そうか・・・俺、チョコを渡すことしか考えてへんかったけど、チョコって・・・・食うもんや・・・。

え?食べるって事は、え?え?

「えっと・・食べるって・・・・その・・・どうやって?」

「もちろん、ベッドの上で美味しく頂きます」

そう、笑った柔造の笑顔は今まで見たこと無いような艶めいた笑みだった。

「今すぐこの風呂入って、柔造にもチョコください」

「え・・・こんなんでええのん・・・?」

「それに勝るチョコなんてありません」

「そう・・・なん?」

「はい。早う、柔造に極上のチョコ・・・食べさせてください」


それから早々に風呂に入らされて、夕食を取る前にもう勘弁してくれって言うくらいにあちこち散々舐め回されて、食われた。

来年からはやっぱり恥ずかしゅうてもチョコを買うべきやと、くらくらする頭で思った。



そんなバレンタインのお話。










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