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パロ
ずっといっしょ 番外編 柔造誕生日(柔勝)




家に帰ると部屋が暗かった。
灯りが点いていないと不安になる。

もしかして坊が倒れているのではないか?
もしかしてまた家出をしてしまったのではないか?
何かあったのではないか?

と。

いつも家に帰ればリビングの明かりは点いていた。
その明かりを見れば、ああ、安らげる家に帰ってきたのだ、と何時の頃からか実感できるようになった。

もしも坊が帰りが遅い日には、何時だってちゃんと遅くなると連絡があった。

だから今日みたいに何の連絡もなく、部屋に明かりが点いていないと、過去にあった色々なことを思い出して不安になる。

また坊を怒らせたり、悲しませたりしたのだろうか?


冷気が刺す様な寒さの中、漸く安堵の出来る家へと帰ってきたはずなのに、心臓がきゅうと痛くなった。

坊は何処へ行ってしまったのだろう。
もしかしたら過度の頭痛で部屋で寝込んでいるのかも知れない。
そうだとしたならば大変だ。

少し足早にリビングへと繋がる短い廊下を歩き、そこへ通じる扉を開けた瞬間、ぱちっと部屋の明かりが点き、ぱんっ!!と乾いた音が弾けた。


「お誕生日おめでとう!!」

「え・・・・・・」

「ははっ!!驚いた?」

「え・・・・・・」


見れば目の前にはニコニコと笑う坊の顔。

手には何か筒のような物。
不図視線を下げれば、散らばった細長い色とりどりの紙。

ああ、これはパーティ用のクラッカーを鳴らしたのか。


「え・・・っと・・・・」

「なんや?もしかして柔造自分の誕生日覚えてへんかったんか?」

「たん・・・じょうび」

「今日ちゃうかった?」

「今日って・・・」

「2月5日。俺、間違えてないよな?」

「ああ・・・・」

そう言われてみればそうだった。
今日は自分の誕生日。
特に興味も無いのですっかり忘れていた。

驚きと共に坊の姿を見た途端、気が抜け安堵感が押し寄せてきた。
思わず目の前の坊をグイと抱き寄せる。

「柔造?」

「驚かさんといて下さいよ。灯りが点いてないから坊がどっか行ってしもたんか、倒れてるんやないかってめっちゃ不安になったやないですか」

「あ・・・堪忍」

抱き締めてとりあえず坊の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
暫く大人しく俺の腕の中でじっとしていた坊だったが、ぽつりと、

「誕生日祝われんの嬉しくなかったんか?迷惑やった?」

なんて言うもんやから、慌てて体を引き離し、坊の顔を伺い見る。

「ちゃいます!そんなん坊が祝おうてくれはるんならそんな嬉しい事なんてあるわけないやないですかっ!」

「やって・・・」

「せやから、坊がおれへんのかと思って、めっちゃ不安になっただけでっ!!」

ああ、せっかく坊が俺の為を思ってしてくれはったのに、また機嫌を損ねてしもたんやろか。
俺と言う奴は・・・などと顔色を変えれば、坊はくすくすと笑い出した。

「冗談や」

「え?」

「なぁなぁ、見て」

「はい?」

ぐいと腕を引かれて、足を進め見渡せばリビングに色々と折り紙で飾り付けがされていた。

「こんなんするの久しぶりで、なんかやりだしたら止まらんようなってな」

カーテンレールに折り紙で作った輪っかが数本巻きつけられている。
『おたんじょうびおめでとう』と綺麗に形作られて貼り付けられた色画用紙。
可愛らしい絵も描いてある。

「子供の誕生日会みたいになってもた」

と、またくすりと微笑む。
器用なのは知っていたけれど、こんな可愛らしいものを作るのは意外だった。

「これはまた可愛らしいですなぁ」

「たまにはええやろ?」

またくすくすと微笑む。

なんや今日は何時になく柔らかい表情ばかり浮かべる。
いつもそれはそれは可愛いのだけれど、今日はまた一段と惹きつけられた。

「ほんでな、小さいやつやけどケーキも買ってきてん。ご飯食べたら食べよな?」

「はい」

嬉しそうに微笑むから、同じようににこりと微笑んでやる。

「でな、ご飯もな頑張って作った」

「え?ホンマですか?」

「簡単なんやで!まだそないに上手い事出来へんから」

かぁっと赤くなって俺を見る。

「もしかして練習とかしてはった?」

「ちょっとづつな」

「坊・・・!!!」

そのいじらしさに抱きしめようと手を伸ばせば、その腕をまたぐいと腕を引っ張られて、ダイニングへ。

「でなでなっ!」

「はい?」

テーブルの上にはラッピングされた包みが一つ。

「これは・・・」

「あんまええもんやなんて買われへんかったんやけど堪忍な」

「いえっ!そんな坊からなんやもらえるだけでこないに嬉しい事なんてありませんえ?」

「開けてみて」

「はい」

ガサガサと包みを開ければ、中から出来たのは手触りの良いマフラー。
黒をベースに幾筋かの赤と白のラインの入ったものだった。

「まだ朝晩はよう冷えるしな。いつも出かける時、首元寒そうやったから」

と、手に持ったマフラーを坊が奪い取り、俺の首にそっと巻きつけた。

「やっぱり黒が似合うな」

「坊・・・」

余りの嬉しさに、坊を見詰めて坊を引き寄せようとしたのに、その前に坊にぎゅっと抱き締められた。

「柔造・・・生まれてきてくれてありがとう」

「坊・・・」

「俺、柔造おらへんかったら、こないに頑張ってこられへんかったと思う」

「坊・・・」

「柔造が居って良かった。せやから俺は今こんなに幸せでいられるんや」

ああ、もうこの人は・・・なんて、なんて、なんて・・・・。

「柔造?」

力強く坊を抱き締め返した。

鼻の奥がつんとする。
目の奥が熱い。

溢れ出そうになるものをずっと啜り上げた。

「え?ちょ・・じゅうぞ・・?」

「ぼ・・・んっ・・・」

愛しくて、可愛くて、強くて、凛々しくて、純粋で、天使で、俺の支えで、俺の全てで、俺の生き甲斐で。

「嘘やっ・・・なん?泣いて・・・る?」

「やって・・・余りにっ・・・嬉しゅうて・・・っ」

「嘘やんっ!!ちょぉっ!!」

「ぼん〜〜〜っっ」

「ああ、もうっ」

よしよしと坊の手が俺の頭をゆるゆると撫でる。
その動きがぎこちなくて、より一層可愛さが増していく。

「坊・・・」

「なん?」

「ありがとうございます」

「おん・・・」

「好きです・・・大好きです」

「おん・・・俺も・・・大好きや」

どちらかともなく、唇を重ね合わせ、深く深く口付けた。




それから、坊が作った美味しいご飯と、小さなケーキでお祝いをして、最後には坊も美味しく頂いた。


その日は今迄で一番最高に幸せな誕生日だった。





!!!HAPPY BIRTHDAY 柔造!!!



いつまでも坊と幸せやったらええなぁ・・・・




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