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パロ
ずっといっしょ 33(柔勝)



≪柔造side≫


いつもの様に買い物を済ませ、家へと辿り着く。
ああ、今日はどんな出迎え方をしてくっるだろうか?
いつもの様に微笑んで、恥ずかしそうにキスをしてくれるだろうか?


早く、早く彼に会いたい。
彼に会ってキスがしたい。
早く唇のこの感触を、彼の甘いもので塗り替えたい。

早く、早く・・・!

ガチャリと扉を開け、

「坊っ!!」

と、思わず名を呼んだ。

きっとすぐに駆けつけて来てくれる。


そう思っていたのに・・・・。


玄関から見えるリビングは、明かりが灯っていなかった。

「?」

不思議に思いながらも、慌てて帰ってきた息を落ち着かせ、家へと上がる。
リビングに通じる扉を開け、中へ入るが、人の気配がない。
電気をパチリとつけ、明かりを灯したなら、そのまま坊の部屋へと向かった。

トントンと扉をノックするが返事はない。

まさかまた頭痛や、熱を出して寝込んでいるのでは?!
前回もあの女性と会っていた時にそんな事があったのだ。
もしかして、アイツと会うと、坊に何か起こるのではないか?!と、厭な考えにまで至り、扉を静かに開ける。

「失礼します」

部屋の中は暗かった。
明かりを付けるが、ベッドの上は蛻の殻。
朝出かけたままにきちんと布団が畳まれてあった。
カバンもなく坊が帰って来た形跡は何処にもなかった。

「ぼ・・・ん・・・?ぼんー・・・?」

一応どこかに隠れているのでは?なんてほんの少し馬鹿げた可能性も考えて名を呼んでみるが、やはり返事はない。
もしかして何か連絡があったのでは?
と、携帯を開いては見るが、なんの連絡もない。

「何処行きはったんや・・・・」

学校で何か用事でもあったのだろうか?

とりあえず連絡をしてみようと、坊の携帯へと電話を掛けてみる。
何度も耳で響くのは呼び出し音だけ。

呼び出し音が鳴り止んだので、捕まえたと思って、

「ぼ・・・っ・・・」

と声を発したならば、

『留守番サービスセンターへ接続します』

と、予想に反する女性の声が流れてきた。
その声に虚しくなり、電話を切った。

もう一度かけて見るが、やはり電話は繋がらなかった。

仕方がない。
取りあえずメールだけを入れておこう。

それから携帯を置き、坊がお腹を減らして帰って来るのではないかと、食事の準備に取り掛かった。

食事の準備を着々と進めつつも、5分おきには携帯を覗き込む。

あまりしつこく鳴らすのもどうかとは思うが、やはり心配になって、10分経てばまた電話。
しかし繋がらない。
取りあえずメール。
また更に5分おき・・・いや、1〜2分おきに携帯を覗き込むが、鳴った形跡がるわけもなく。
更に10分経ち、また同じことの繰り返し。


1時間が過ぎ、不安が募っていく。
2時間も過ぎた頃、どんどん心配で仕方なく胃がキリキリとしてきた。

動物園のクマのように落ち着きなく部屋の中をうろうろと歩き回る。

坊の性格ならば、何か用事があって遅くなるのであれば、必ず連絡をしてくるはずだ。
今までだって、遅くなることがあれば、きちんと連絡が来ていた。

物音がしては、玄関にまで走って行って見るが、その扉が開くことはなかった。

「何処行きはったんや・・・・」

心臓がドクドクと脈打つ。
不安で、心配で、落ち着かない。

何か事故にでも巻き込まれたのか?!
何か坊の身に起こったのか?!


――――何処に行きはったんや。なんで連絡がないんや・・・!!!



そして暫く経つと、漸くメール受信音が鳴り響いた。

手にずっと携帯を握り締めていたので、瞬時にメールを開ける。

(坊からやっ!)

そう、送信者の名を見て、ほっと一息吐いた。

それからメールの内容を見て、呆然とする。
そこには簡単に一言だけ書かれてあった。


『今日は友達んとこ泊まってくる』



「え・・・・?それ・・・だけ?」

そう、思わず呟いた。

「なんや・・・これ・・・・」

友達・・・・。
友達って誰や・・・・。

そう、考えて思い当たる人物など一つしかない。


あの双子んとこか?!


なんであの双子んとこ泊まるんや?
って言うか、なんでそれやったらそれで、早く連絡してこなかった?
何故電話に出なかった?
一体どう言う事だ?!


そう思って、はっと我に返り、そのまま坊の携帯へと再度電話をする。

が・・・・


『おかけになった電話番号は、電波の悪い所にいるか、電源が入っていないためお繋ぎ出来ません』


と、虚しくまたアナウンスが帰ってきた。

「どう言うことやっ?!」

もう一度かけてみるがやはり、流れるアナウンスは一緒。

「なんでやっ?!」

今、メールが送られてきて、なんで今の今で電話が出来へんねん?!

なんや?!どないなってるんや?!


そこで、はっと、思いつく。


(もしかして、あの双子・・・・・坊になんかしよったんちゃうか・・・・?!)


大体、こんな時間まで何の連絡もなかったのに、こんな簡素なメールなどおかしいではないか。
これは本当に坊が送ったメールなのか?
もしかして、坊がメールを打たれへんのような状況になって・・・・!!!
まさか、アイツら坊を・・・っ!!!!


とんでもなく最低な考えに至り、さっきまで心配でキリキリと痛んでいた胃は、今度は腸が煮えくり返りそうな程ぎりぎりと熱くなる。

何しよったんやっ・・・・!!!

何も知らなくて、純粋でかいらしい坊を言葉巧みに誘惑して・・・っ!!!

まさか、まさか、まさか、まさか・・・!!!!


こんな所でじっとしている場合ではない!
アイツらの家に行って坊を奪いかえさねばっ!


しかし、アイツらの家なんぞ知らん!
そうや、学校や!
学校に電話して聞こう!

ぎりぎりと力を込めて握りっぱなしの携帯で、そのまま学校へと電話した。

が、もうすっかり遅い時間だからか、誰も電話に出る気配はなかった。

「なんで誰も出んのやっ!アホかっ!当直のヤツぐらい居るやろっ!!!」

電話を切るとがんっと思いっきり携帯を投げつけた。
携帯から何か破片が飛んだような気がしたが、そんな事気にしてる場合ではない。

「ホンマどいつもこいつも、けったくそ悪いっ・・・!!!」


ああ、坊・・・!!!
今何処でどうなってはるんや・・・!!!
あの双子と一体何があったんや?!
なんで泊まらないといけない羽目に?!
どないしてはるんやっ?!


怒りで治まらない体は打ち震え、落ち着きなく体を揺らす。

くそっ!!
くそっ!!
くそっ!!


なんて今日は散々な日なんだ!!!!



坊!!!




結局朝まで怒りと、不安で一睡もすることは出来なかった。







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