パロ
ずっといっしょ 25(柔勝)
≪勝呂side≫
その日家に帰って俺は昼間奥村兄弟と話していたことを決行した。
仕事から帰ってきた柔造にお帰りのキスをしてみた。
ただ、切欠が上手く掴めなくて、変な間合いになってしまったがそれでも柔造は喜んだ。
とりあえずまず一つ目はクリア。
それから晩飯を取って、風呂の時間。
流石に初日から『一緒にお風呂』はかなりの勇気がいるのでこれはパスした。
その次にソファで色々その日の事を話して、様子を伺いつつ膝枕にも挑戦してみようと思ったがタイミングが掴めなくてスルー。
映画もテレビも見る予定はないから、後ろから抱き締めるのもなしや。
ほんなら残りは・・・・。
『一緒に寝る』
か。
もう恋人らしい行動なんてこれくらいしか浮かばん。
せやから俺は意を決して柔造に声をかけた。
「一緒に・・・寝る・・・?」
と。
そう言ったと同時に柔造が固まった。
「柔造?」
「え・・・いや・・・あ・・・でも・・・ええんですか?」
ええんですか?って何が?
そう聞かれて、脳内にクエスチョンマークが浮かぶ。
一緒に寝るだけやし、俺が言い出したんやからええも何も・・・・
と、考えてはたと思う。
ああ、そうか。
柔造の思う『一緒に寝る』は体の事も含めてなんやな。
そうやわな・・・。
柔造は大人やから、そう考えるのは当たり前か。
でもやっぱり俺は・・・・。
「その・・・一緒にベッドに入るだけとかやったらアカン・・・やろか?」
「ああ・・・そう・・ですね」
柔造は少し残念そうな色をその表情に浮かべた。
「昨日は勢いであんな事言うてしもたけど、やっぱりまだもう少し待ってもらえへんやろか?」
「そんなん全然かましまへんよ!!!坊が柔造の傍に居りたいって言うてくれるだけで満足なんですから」
「堪忍・・・」
なんだか期待を裏切ったようですごく申し訳なかったが、付き合い始めて1日や2日でそう言う関係になるのはやっぱり早いと思うんや。
大人やったら会ったその日に・・・なんて事もざらにあるんかも知れんけど、俺は体だけで繋がれる関係なんて嫌やから。
けじめは大事やと思う。
それから二人してベッドに入った。
並んで寝たのは良いが、微妙に距離がある。
柔造のベッドは俺のよりも少しサイズは大きかったが、やっぱり二人で寝るには狭いんかも知れん。
それに暑苦しいし、くっついて寝るのがあまり好きではないのかも知れない。
そう思って言葉を口にした。
「狭ない?」
「狭くはないですが・・・・」
直ぐに帰ってきた返事。
ですが・・・なんなんやろ?
やっぱり暑い?
一緒に寝るのはやっぱり気持ちええもんちゃうんやろか?
「・・・・やっぱり、自分の部屋戻った方がええか?」
「いえ!!坊がせっかく一緒に寝ようやなんて言うてくれはったんやから、一緒がええです!」
慌ててそう返してくる。
でも、ホンマに嫌やないって言うのは読み取れたから、
「そうか。せやったら良かった」
と笑って返した。
けど、俺はやっぱりせっかくこうやって一緒に寝るんやったら、昔みたいにもっとくっついて寝てみたかった。
あの頃はふわりと柔造に抱き締められて眠るのが、安心できて心地良かったのだ。
せやから・・・。
「なぁ、柔造」
「はい?なんですやろ?」
「あんな・・・・」
「はい」
「もうちょっとくっついてもええ?」
「・・・・・・・・」
間があった。
やっぱり狭苦しいわな。
しゃぁないか。
男二人がぎゅうぎゅうになって寝たら寝辛いやろしな。
「アカンかったら、こんままでええわ」
まぁええか、と思った瞬間、
「あ・・・アカンことないですよ!暑くないんやったらいくらでもこっちに来はったらええです」
ぐいと柔造の方に引き寄せられた。
ああ・・・・
あったかい。
柔造の懐かしい匂いがふわりと鼻を掠めた。
もぞもぞと布団の中で居住まいを正して、柔造の胸元に頭を寄せる。
柔造の心臓の音が聞こえる。
とくんとくん。とくんとくん。
懐かしく響く音と、懐かしい匂い。
なんか気持ちええなぁ。
「どないしました?」
「ん・・・なんや・・・懐かしいな・・・て。昔はこうやってよう一緒に寝たなぁって思ったんや」
「ははっ。柔造も今同じ事思てましたわ」
笑って返してくれると、ああ、そう思っていたのは俺だけじゃなかったのかと更に安堵感が増した。
「柔造の匂いがする・・・・ぬくいなぁ・・・」
小さい頃のように、柔造の手が俺の髪をそっと撫でた。
今も昔も変わらへん。
柔造の傍が一番あったかくて、一番安心できる。
うつらうつらとその心地良さにだんだんと意識が遠退いて行った。
やっぱり柔造の傍が一番ええ。
「ん・・・じゅうぞ・・・」
大好きや・・・・。
俺はぐっすりと眠りに着いた。
****
それから数日。
柔造と寝るととても良く眠れるので、毎夜毎夜柔造のベッドに邪魔してしまった。
せやからその日、急に柔造の部屋に入るなり柔造が床に座って頭を下げた時、そんなに俺と寝るのが嫌やったんやろか?
と、さぁっと俺は青ざめた。
言い出せんかったんかな?
俺があんまりにも気持ち良さそうに寝てしまってるから。
悪い事をしてしまった。
そう思って、座り込んだ柔造の傍に行って、
「なぁ・・頭上げぇや」
と、言ってみたが、頭を上げる気配はなかった。
「そないに嫌なんやったら、自分のベッド寝るから」
「ちゃいますっ!!」
がばっと柔造が俺の言葉に頭を上げた。
「一緒に寝るのが嫌なんとちゃいます!!!」
「ほんならなんでそないに頭下げるんや?」
「その・・・・・」
「なんやねん」
「あの・・・・」
柔造にしては歯切れが悪いその姿に、少し苛立ちを覚えた。
「言いたい事があるんやったらはっきり言うたらええやないか?」
「せやったらはっきり言わせてもらいます!!!」
「なんや?」
「触らせてください!」
「・・・・・・は?」
思ってもみない言葉が聞こえた。
触らせてくださいって・・・何?
「もう、我慢の限界なんです!」
再び床に頭を押し付けて、切に言葉を放った。
「がま・・・ん?」
「毎晩毎晩坊に擦り寄ってこられたら、もう抑え切れんのです!」
「・・・何が?」
「欲情が」
よくじょう?
よくじょう・・・・浴場?
風呂場・・・なわけないわな。
よくじょう・・・
欲・・・情・・・・
えっと、つまりは触りたい。
我慢出来ん。
欲情する。
え、待って、それは・・・
「俺と一緒に寝ると、興奮するって事か?」
「はい。触りとうて、触りとうてろくに寝れません」
俺は女や無いのに?
あ・・でも・・・そうか・・・
体を繋ぎたいって事は、俺を女と同じ感覚で見てるって事か?
男が女を触りたいって思うように柔造も俺を見ると、俗に言う「ムラムラする」対象なわけなんか・・・・。
え?こないにごついのに?
俺を見て欲情するんか?
男同士やけど、柔造にとっては俺は女みたいなもんなんか?
え・・・よう・・・分からん・・・。
「坊がそう言うのに抵抗あるのももちろん分かってます。せやからそないに無茶な事はしません」
「・・・おん・・・」
「触るだけで我慢しますよって、せやから・・・少しでええんで・・・・」
「そないに・・・触りたいん?」
「はい。めっちゃ」
「めっちゃ・・・・」
「せやないとまた無茶して触ってしまいそうで怖いんです」
それはつまりこの間みたいに、いつの間にかキスしまくって服の中に手を突っ込んでくるって事か?
それは急にあんな事されたからびっくりしただけであって・・・・。
「触るって・・・どこを・・?」
「坊の大事なところを・・・・触って気持ち良うしてあげたいんです・・・」
大事なところって・・・・それは下半身の事か?
気持ち良く・・・?
そんなんしたらどないなるんや?
え?触るだけ?
「触るのがアカン言いはるんやったら、自分でしてはるとこ見せてもらうだけでもええですから!」
「じぶ・・・ん・・・?」
自分でしてるとこ・・・・?
なに?
え・・・何を言うてるんや?
自分で・・・何をするんや・・??
え・・・
「自分でって・・・何?」
「せやから・・・坊が自分で大事なところ擦って気持ちようなってはるところを見せていただけたら・・・・」
「はぁっ?!」
え?え?え?え?
「それもどれもアカン言うんやったら、暫く家出て、頭冷やしてきます」
「え・・・当分出て行くって事か?」
「はい・・・」
え・・・と言うことは・・・
俺の大事なところを触らせるか、俺が自分でそんなところを触るのを見せるのか、どっちもアカンかったら柔造が家を出て行く・・・・って・・・・。
なんやその3択!!!!
どれもこれも、ほんならそれで!って容易く選べるようなもんとちゃうやないか!!!
え・・・え・・・・どない・・・したらええのん・・・・?
呆然とする俺の目の前で、柔造は俺の答えが出るまで頭を上げることはなかった。
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