パロ
ずっといっしょ 24(柔勝)
≪柔造side≫
結局坊の誘いを断ることも出来ず、自室のベッドの中へ二人して潜り込んだ。
ただし約束として、まだそう言う体の関係は無しと言うことで。
「昨日は勢いであんな事言うてしもたけど、やっぱりまだもう少し待ってもらえへんやろか?」
申し訳なさそうに坊がポツリと告げる。
ああ、そうやわな。
『一緒に寝る?』と聞かれた時点で、確かに体の事を脳裏に掠めたことは否めない。
けれどその前にそう言うことは嫌だと俺の事を蹴り上げた事も確かな事実。
付き合うことが出来たからと言って、すぐに坊の気持ちが変わることなんてないだろう。
昨夜だって、俺のために体を提供しようとしたのを咎めたばかりではないか。
焦って無理にそう言う関係を求めてはいけない。
今まで散々我慢してきたのだから、あと数日・・・否、数ヶ月我慢したところで変わりはしないだろう?
それよりも、坊が俺の傍に居たいと言う気持ちの方がずっと大事なのだから。
季節は梅雨。
まだまだ大の男二人がくっついたところで、暑いと思う事はなかった。
「狭ない?」
そう坊が俺の横に寝転がり、首だけをこちらに向けて尋ねる。
ほんの少し頬が赤い気がする。
「狭くはないですが・・・・」
余り狭いのは好きではないのでセミダブルのベッドを使用してはいたのだが、それにしたって、やはり一緒に寝ると距離が近い。
坊の温もりがじわりじわりと伝わってくる。
匂いも、呼吸もじわりじわりと俺の全てを刺激する。
「・・・・やっぱり、自分の部屋戻った方がええか?」
「いえ!!坊がせっかく一緒に寝ようやなんて言うてくれはったんやから、一緒がええです!」
「そうか。せやったら良かった」
坊がふわりと笑った。
ああ、ホンマにかいらしい。
「なぁ、柔造」
「はい?なんですやろ?」
「あんな・・・・」
「はい」
「もうちょっとくっついてもええ?」
「・・・・・・・・」
坊の思わぬ問いに返事を詰まらせてしまった。
もっとくっつくと・・・どないなるんやろうか・・・・。
「アカンかったら、こんままでええわ」
返事がなかったせいか、坊の声色が少し曇りを帯びた。
「あ・・・アカンことないですよ!暑くないんやったらいくらでもこっちに来はったらええです」
坊の気持ちを曇らせるのはどうにも苦手だ。
そうなるくらいなら、自分が少しぐらい我慢すれば良い。
坊にはいつでも笑顔で居て欲しいのだから、本当にいけない事ではない限り否定はしたくないのだ。
気を使って坊が引いてしまわないようにぐいと坊の肩を引き寄せ、俺の胸の中に顔が埋まるように抱き締めた。
それと同時にゆっくりと坊の腕が俺の背中へと回される。
ああ、坊の良い匂いがする。
こうやって抱き寄せて眠るだなんて何年ぶりだろうか?
坊が小さい頃はずっとこうやって一緒に昼寝をしてやったり、怖い夢をみたなどと泣きながら来た時もこうやって抱き寄せて眠った。
とても懐かしい思い出だ。
坊の頭が俺の胸元にすりと擦り寄ってきた。
「どないしました?」
「ん・・・なんや・・・懐かしいな・・・て。昔はこうやってよう一緒に寝たなぁって思ったんや」
「ははっ。柔造も今同じ事思てましたわ」
そう笑って返してやると、安心したのか、またすりと頭を寄せてきた。
「柔造の匂いがする・・・・ぬくいなぁ・・・」
ああ、ほんに昔と変わらずかいらしい。
小さい頃のように、髪をそっと撫でてやると、
「ん・・・じゅうぞ・・・」
と、小さく名を呼び身じろいだ。
その声の可愛らしさに思わず、どくりと下半身が疼いた。
(!!!アカン!!!)
落ち着け!!!
体の関係は当分無しやと決めたばかりではないか!!!
今触ったりしたらアカン。
今俺が欲情してるやなんて悟られたらアカン!!
が、しかし、このままやはり喰ろうてしまいたい衝動に駆られてしまう。
落ち着け、落ち着け、落ち着け!!!
けれど、責めてキス位なら・・・・いいだろうか?
等と思い、またそっと坊の髪を撫でて、
「坊・・・」
と呼びかけるが、時既に遅し。
俺の胸の中で坊はすっかり規則正しい寝息をたてていた。
「寝て・・・・しまいはったんか・・・」
はぁ、と小さく溜息を吐き、このままでは体が持たんなと思い坊から離れようとしたが、その腕はがっしりと俺の背中を抱き締め離れることは無かった。
坊の安らかな寝息。
やわらかな温もり。
坊の香り。
どくりと疼く下半身。
これは・・・・新手の拷問や・・・・。
しっかりと俺を抱き締めた腕は朝まで離される事は無く、結局俺は欲求と一晩戦う羽目になった。
朝。
欲求と戦いながらもほんの少しの眠りを取り、うつらうつらと目覚める。
坊も丁度同じ時に起きたのか、ひょこりと俺の胸の中から顔を出した。
「おはようさん」
「おはようございます」
「何かめっちゃよう眠れたわ」
「そ・・・ですか・・・」
「やっぱり柔造の傍やからかなぁ?」
「せやったら良かったです・・・」
ふわりと笑う坊の顔がまぶしい。
けれど、坊。
俺は逆にほとんど眠れませんでしたわ・・・。
なんて言えるわけも無く、その微笑みに同じように笑って返してやる。
すると坊の顔が寄せられ、ちゅっと唇に柔らかな感触を当てられた。
「ぼ・・・・ん・・・」
またふわりと微笑む坊の顔。
「朝飯、食べよか?」
そう言って、坊は体を起こしベッドから出て行った。
俺はと言うと、また下半身がすっかり熱を持ってしまい、抑えるのに必死になった。
それから数日、どうやら坊は俺と寝るとぐっすり眠れるらしく、毎夜俺のベッドで眠る事を好んだ。
毎夜毎夜俺の胸元に擦り寄り、毎夜毎夜ぎゅうと抱き締めて眠る・・・・。
時折夢でも見るのか、小さく零れる吐息めいた声。
何の夢を見るのか俺の名を呼ぶ時もある。
ハッキリ言おう。
いい加減限界だ。
無理だ。
このままでは俺の疼く下半身は臨界点を突破する。
理性が飛んでまたへまをやらかすわけにはいかいないのだ。
どうにもあの蹴り上げられた件が若干のトラウマになってしまっている。
またあんな風に拒まれてしまっては、もう生きていく自信などない。
かくなる上は致し方ない。
真っ向から頼むしかないだろう?
坊が嫌がるのは承知の上。
引いてしまうのも承知。
しかし確実にこのままでは俺の身が持たない。
ならば・・・・
そう思い立った夜、いつもの様に坊と二人で自室に入ったと同時に、俺は徐に床に座して頭を垂れた。
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