パロ ずっといっしょ 21(柔勝) ≪柔造side≫ 「起きて・・・じゅうぞう・・・起きて・・・」 坊の声が聞こえる・・・。 「じゅうぞ・・・・」 耳元で、優しく響く声。 俺の名を呼ぶ声。 夢かなぁ・・・。 そやわなぁ。 こないに優しく、囁くように耳元で俺を起こしてくれるやなんて、夢以外の何物でもないわ。 夢か・・・。 せやったら・・・。 「ぼ・・ん・・・キス・・・して・・・」 夢の中やったらきっとどんなことしたって、坊には嫌われへんやろ? だって俺の夢なんやから・・・。 「・・・しゃぁないなぁ・・・ちゃんとしたら起きや?」 そうまた優しい声が耳元で響くと、唇に暖かく柔らかな感触がした。 「ん・・・ぼ・・・ん・・・」 「おはようさん。起きた?」 そう言われて、ゆっくりと目を開けば少し恥ずかしそうにはにかみながらこちらを見る坊と目が合った。 「え・・・?ぼ・・・ん?」 「なに?」 「え?え?え?えええええ!!!」 思わずびっくりして、俺は跳ね起きた。 瞬間、覗き込んでた坊の額に思いっきり自分の頭をぶつけた。 「いったぁっ!!!」 「いっ・・・!!うわっ!!堪忍ですっ!!」 「何してんねんっ!!」 そう言って、坊が額を摩りながら、涙目になって俺を睨んでる。 「何してんねんって、やって坊がキスなんかするからっ!!」 「柔造がせぇ言うたんやろっ!!」 「やって夢・・・って・・・え?・・ここ何処?」 「は?」 「あれ?」 キョロキョロと辺りを見回して、いつも寝てる自分の部屋でないことに驚いた。 「寝惚けてんのんか?」 「え?あれ???」 良く見れば、ここはリビング。 今俺が居るのはソファの上? お腹には何やら布団らしきものがかかっているが・・・・。 あれ? なんやこれ? 一体どういう状況? 「起きてる?」 「はい・・・多分。・・・で、なんで俺はこんな所で寝てるんでしょうか?」 「昨日話してる途中で寝てしもたからやろ」 「え?」 「いきなり寝てしまうから、よう運びきれんでここに寝かした」 「え?」 「昨日凄い顔しとったし、よっぽど疲れとったんやろ?」 「え・・・っと・・・あれ?確か晩飯作ってませんでしたっけ?」 「途中やったな」 「え?じゃぁ坊、ご飯は?」 「焼きかけの肉を適当に焼いて食った。野菜は分からんからラップして冷蔵庫になおしといた」 「え?え?ホンマですかっ?!堪忍ですっ!」 「別にええけど・・・、ホンマに起きてる?」 「お・起きてますっ!!!え?せやけど・・・え?あれ?」 「ま、ええわ。取り合えず風呂入ってき?昨日より大分マシな顔してるけど、そのままやったら折角の男前が台無しやで?」 「あ・はい・・・そうします」 何だか今一状況が飲み込めないまま、俺は坊の言われたままにのそのそと風呂場に向かった。 シャワーを浴びながら昨日の事を思い出す。 ええっと・・・確か・・・ 仕事には行ったな。うん。 それから、帰りに坊の好きなものを買うためにスーパーに行った。 そう、確か坊とご飯を食べるのも最後かも知れないだとか思いつつ。 それから家に帰って、坊に嫌われたし、もう全部なかったことにしようとしたんや。 で、その旨を坊に伝えたら、急に泣き出しはって。 坊に近付いたらアカンとは思ったんやけど、居てもたっても居られず傍に行ったら、坊からキスされて。 こんな俺とでもずっと一緒に居たいって言ってくれはって・・・。 こんな俺でも好きやって言ってくれはって・・・・。 そんでにっこり笑ってくれて・・・・ それから・・・それから? 髭を剃りながら考える。 あ・・・ こっから記憶がない。 丸二日寝てなかったのと、余りの精神疲労困憊に、坊に嫌われてないことが分かった安堵感で意識が飛んでしまったんか・・・。 なんてことや。 え、でもちょっと待って。 ずっと一緒に居りたい、好きやって事は・・・・。 それは、つまり・・・。 俺は考えが纏まったと同時に浴室から出て、体も髪もざっと拭き腰にタオルを巻いたままリビングへと飛び出した。 「坊!!坊!!!」 「なに?」 リビングでソファに座りながら朝のニュースを見ていた坊の元へ駆け寄った。 「どないしたん?」 「坊!!!」 それから坊をぎゅっと抱き締めた。 「わっ!!なんやいきなり!!」 「坊!!坊!!」 「ちょ・・どないしたん?!」 ぎゅうっと抱き締めたら坊の匂いがした。 焦がれて焦がれて堪らなかった温もりをこの手にしても、もう止められることはないのだ。 無理やり理性を保って、欲しいものに触れられない葛藤と戦わなくてもいいのだ。 触れたい時に触れて、呼びたい時に名を呼んで、好きだと告げたい時に告げても、傷つける事はない。 「好きです・・・」 「え・・?おん・・・」 「坊のええ匂いがする・・・」 「なっ!!なに言うてんねん?!」 「ああ、何やぎゅってしてると落ち着きます・・・」 「・・・そうか・・・」 「坊・・・・」 「なに?」 「もっかいおはようのキスしてくれませんか?」 「・・・・あ・・朝やし、もっかい・・・だけやで?」 「はい・・・」 目を閉じて少し待機してみると、ふっと吐息が掛かり坊の唇がふわりと俺の唇に当てられた。 男の子のはずやのに坊の唇は思ったよりもずっと柔らかくて、心地良い。 そっと触れるだけの唇がもどかしくて、舌先でノックすると、唇が少し開かれた。 そこからするりと舌を差し入れ、深く口づける。 同時に坊の腕も俺の首に回されぎゅっと抱き締められた。 俺も更に力を込めて抱き締め、角度を変えては口付けし、舌と舌とを絡め合わせた。 「んぅっ・・・・」 ああ、坊の吐息が可愛らしい。 「っ・・・ふ・・・ぅっ」 アカン、もっと口の中の熱さを楽しみたい。 柔らかな感触は気持ち良くて、堪らなくて、絡めて、吸い付いて、嘗め回して、もっと、もっと・・・。 そんな風に堪能してると、どんどんと背中をグーで殴られた。 「はい?」 と、暢気に唇を離して返事を返せば、真っ赤になった坊の顔と、潤んで睨むような瞳とかち合う。 「長いわっ!!!息出来へんっ!!!」 「あ・・・・堪忍です・・・」 ごしと手の甲で唇をぬぐって、真っ赤になってぷぅと膨れて俺を見る。 アカン・・・ホンマかいらしい。 この人がホンマに俺を好きやって言うたんやろか? 夢ちゃうんよな? 今も、数分後も、家に帰ってきてからも、寝るまでも、明日も、明後日も、その次の日も、次の日も、ずっとずっと俺を好きで傍に居てくれるんや。 こんな嬉しいこと、もうホンマにどうしたらええのか分からへん。 こんな幸せすぎる事が、身に起こった事などないからテンションの下げ方も分からへん。 唯々、抱き締めたくて、キスしたくて、その声を聞きたくて、匂いを感じたくて。 「坊・・・・」 また、きゅと坊を抱き締めた。 「もう、ホンマにどないしたんや?なんやいつもとちゃうで?」 「坊が好きや言うてくれたんが嬉し過ぎて・・・」 「そんなん言うたら俺かて、柔造が好きやって言うてくれて嬉しいんやで?」 「好きです。大好きです」 「俺も、好きや・・・」 耳元でそう呟かれ、またキスしたくなって顔を近づけると、坊の手の平が俺の顔を覆った。 「ぶはっ!!」 「もっかいだけって言うたやろっ!こんなん何時までもエンドレスやないかっ!阿呆!」 「やって!」 「ええから、早よ服着ぃな」 「え?」 「風邪引く!」 「あ・・・・忘れてました」 タオル1枚巻いただけのまんまやった。 しかもよう見たら・・・・ありありと自分自身が主張してるのが分かった。 アカン・・・こんなもん朝から見せたら坊にまた嫌われる。 「着替えてきます」 「おん」 そう言って、くるりと坊の視界に下半身が映らないように綺麗にターンして、自室へと入ろうとした時、 「柔造」 と呼ばれた。 「はい?」 と首だけで振り向けば、 「キスはまた帰ったらしよな」 頬を赤らめはにかむように笑う坊の顔。 「・・・・・・はい・・・・」 そのまま部屋に入り、俺はすぅっと扉を閉めた。 ・・・・・アカン!!!アカンわ今の!!! 何やあれは!!! ガクリと俺はその場で膝を付いて、身悶えた。 何であないにかいらしいことばっかり言いはるんやっ!!!! もうアカン・・・・今日1日で往生するかも知れん・・・。 幸せすぎて、生きた心地がしぃひん。 こんなことがありえるやなんて!!! なんて、なんて俺は果報者なんやっ!!! そんな感じで、俺の幸せライフはスタートしたのであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |