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パロ
ずっといっしょ 13(勝←双子)



≪雪男side≫





入学式も終わり、これから1年お世話になる教室へと足を踏み入れる。
ぐるりと教室を見渡せば、新しい制服に身を包みどこか落ち着き無く皆が皆そわそわしている。
新しい生活がスタートするのだから、期待や不安で胸がいっぱいなのだろう。
かく言う自分ももちろんそうだ。


見渡す限り見知った顔の生徒はいなかった。
同じ中学から上がった生徒も数人はいるはずなのだが、クラスは違うらしい。


そんな教室の中で一際目立った髪形の人物が目に入った。


両サイドは黒髪でセンターだけが金髪。
そしてなおかつ緩やかにその金の部分は立ち上がっていた。

(・・・・虎?)

なんとなく動物の虎を想像させた。

少しばかり眺めていると、ひょいと彼はこちらに首を向け、視線がかち合ってしまった。

髪型通りに少々強面な雰囲気。
顎鬚が迫力を増幅させている。

もしかして、やはりヤンキーと呼ばれるタイプの人物なのだろうか?

だとしたならば出来るだけ関わり合いたくは無いのだけれど・・・。

そうすると彼はすくっと席を立ち上がり、あろう事か僕の方へと歩いてきた。

何か気に障ることをしたか?
いや、別に何をしたわけじゃない。
ただ今し方一瞬目が合っただけじゃないか。

あ、もしかして良くありがちな


『ナニ眼飛ばしてんだ?ああ?』


な感じな絡み方をされるのだろうか?

と、ビクリとしながら彼の行動を様子見た。

僕の目の前までやってきて、彼はこう言った。

「なぁなぁ?自分、奥村雪男君?さっき新入生代表挨拶しとった」

「え・・・う・・・うん」

「やっぱりそうなんや!入試テスト満点やったってホンマ?」

「え・・・う・・・うん・・・」

「あんな、ちょっと入試問題の事でな、教えて欲しいことがあんのんやけど今構へん?」

「え・・・う・・ん」

「良かった!!!おおきに!!!」

そう言って、彼はにこりと満面の笑みを作った。


え、何このギャップ。


予想もしないところからトークが始まった。
しかも、外見とは違いなんだかとても温厚そうな雰囲気。
しゃべり方も方言で、なんだか柔らかい。

「えっと・・・・君は?」

「あ!せやね、勝呂竜士言うねん。よろしく」

「よろしく。大阪の人?」

「ちゃうちゃう。京都や。奥村君はこの辺の人?」

「ああ、うん。そうだよ」

「そうなんや!せやったら、俺、まだこっち出てきてちょっとしか経ってへんし、色々教えたってくれへん?」

「えっと・・・僕で良ければ」

「なんや関西の人間おらんし、東京なんて初めてやしちょっと不安やってん。仲良うしてくれへんかなぁ?」

顔を赤らめ恥ずかしそうに、そう告げられた。

なんだか見た目とは違って、素直で可愛らしい性格の持ち主のようだ。
人も良さそうだし、断る理由も無いし、二つ返事で承諾した。

「僕もクラスに見知った人がいなくて心細かったし、こちらこそよろしくね」

そう言うと、表情をぱぁぁっと明るくさせて、

「おおきに!」

と笑顔で返された。
彼の第1印象はなんだかとても不思議な空気を纏った人物・・・と言ったところかも知れない。





**


それから数日、一緒にいて分かった事。

彼はとても成績優秀、運動神経も良い、性格もとても気遣いが出来て、しかも責任感が強く、面倒見がよい。
それでいて純粋で、素直。
とてもいい環境で育ったんだろうなぁと言うのが伺い取れる。

一緒に課題なんかをして、彼がどうしても理解できなかった事なんかを解いて見せると

「奥村君ホンマすごいなぁ」

と、とてもきらきらとした視線をいただいた。

女の子からならばミーハーな感じでそう言った事を言われた事はあるけれど、まさかこうストレートに男に言われるとは思ってもみなかった。

逆に僕が少し詰まった問題を彼が解いたので、

「さすが勝呂君だね」

なんて言い返してみたら、顔を真っ赤にさせて

「べ・・別に、すごないよ?」

と、照れてしまう。

なんだか反応が可愛らしいし、とても面白い。





ある日、僕たちの教室にとある人物がやってきた。
丁度彼と二人で話しているところに。

「おい!!雪男!」

「え?」

呼ばれて振り返れば、そこに居たのは僕の兄だった。

「お前弁当忘れて行っただろ!はい、これっ!」

「あ!!ごめん!ありがとう!!」

ぐっと差し出された弁当を受け取っていると、

「誰?」

と、声が振りかかった。

「えっと、僕の兄です」

「え?兄って・・・・・兄貴?」

「うん」

「え?嘘やん!何や全然雰囲気ちゃう!」

まぁ確かに・・・。
髪型も兄さんの方はざっくりしてるし、制服もかなり着崩してる。
見た目僕よりもずっとやんちゃそうには見えるけれど。

「は?!ってかお前こそ誰だよ!」

「お前ってなんやねん!初対面の人間に向かって失礼なやっちゃなぁっ!」

「お前はお前だからお前だろっ!」

「訳わからんわっ!ってか、ホンマに奥村君の兄貴なん?」

「えっと・・・うん。多分間違ってないと思うよ」

「ちょっと待て、雪男!なんだよその言い方!」

「兄貴って事は2年?」

「ううん。双子だから1年」

「えええええ!!!双子なん?!嘘やん!全然ちゃうやん!」

「お前こそ失礼だろっ!!」

「なんやて!」

「ちょ!!!ちょっと待って!!!!」


なんだか大乱闘が始まりそうな雰囲気に、思わずバッと手を広げて割って入った。

あれ?
勝呂君てもっと温厚そうなイメージがあったのに、なんだか今ので雰囲気が一転した。

こんな一面もあるのか・・・。


「とりあえず二人とも紹介するから!落ち着いてっ!」


そう言うと二人ともがピタリと落ち着く。

「えっと・・・こっちが僕の双子の兄で奥村燐」

「奥村燐だ。よろしく」

「おん」

「で、こっちが僕と同じクラスで仲良くしてる勝呂竜士くん」

「勝呂竜士や。よろしゅう」

「おう」

「これでいい?」

ひとまず落ち着いただろうか?
そう思って、兄を見てみると、じーっと勝呂君の髪形を見ていた。

「なんやねん。何か文句でもあるんか?」

「その髪型・・・」

「変や言うんか?うるさいわ、ボケ」

「違うって!なんかすげぇかっけーな!」

「は?」

「それに良く見るとお前かっけーなぁ!背は雪男と一緒くらい?」

「・・・おん・・・・」

見る見るうちに勝呂君の頬が赤く色付いていく。

「このクラスって事はやっぱお前も頭いいんだろ?すげぇなぁっ!」

「や・・・別に・・・そないな事ないし・・・」

あ、うちのクラスは一応学年上位から順に選ばれた特別クラスです。

「雪男とこれからも仲良くしてくれよな!」

「いや・・・世話になってるんは俺の方やし・・・」

「頼むな!」

と、兄がいきなり勝呂君にがばっと抱きついた。

「?!?!」

「あ、なんか勝呂って良い匂いすんな!」

「ちょっと兄さん!!!」

兄さんはいきなりスキンシップが激しすぎるんだ!
慌ててべりっと勝呂君から離す。

「ごめんね、いきなり・・・・」

そう言って、勝呂君の顔を見たら、それはそれはとても真っ赤だった。
口元に手を持っていって照れ隠しか半分顔を隠す。

「・・・おん・・・・」

あ、なんか・・・すごい、可愛い反応。
今時、女の子だってこんな反応しないだろう。

「何か勝呂って見た目と違って可愛いなぁ!」

「は?!」

「ちょ!!!兄さん!!!!」

「か・・・・可愛いなんて言うなやっ!!!阿呆!!!」

「何か面白いな!」

「うるさいわ!ボケェっ!」

「ちょっ!!!だから、兄さん!!!」

兄さんは面白い玩具を手に入れたように、勝呂君が気に入ったみたいだった。





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