パロ
ずっといっしょ 10(柔勝)
≪勝呂side≫
次の休み。約束どおり柔造が何処かに連れていってくれると言った。
どこがええ?って聞かれたところで、東京の事なんか分からへんし、思いつく所も無い。
せやから「映画行きたい」と、無難な返事しか返されへんかった。
「せやったらお台場でも行ってみますか?」
お台場・・・やったらなんとなく名前は知ってるから
「ほんならそこでええ」
と、苦笑しながら応えた。
柔造もやんわり微笑みながら、
「ちゃんと案内しますから大丈夫ですよって」
と、俺の気持ちを汲み取りながら応えてくれた。
電車に乗って、目的地へ。
因みに柔造は車の免許は持ってはいるが、車は持っていなかった。
移動は電車で事足りるからだとか。
「車運転してる柔造とかカッコええんとちゃう?」
なんて言うと、
「ほんなら車買いましょか?」
なんて答えを返してくるから、軽いノリで
「柔造が車買うたらどっか連れてってくれるんか?」
などと言うと、
「坊が行きたいんやったら、どこでも乗せてってあげますよ」
と、にこりと笑って返す。
通りに見かける車を見ては、
「あんなんええんとちゃう?」
「そうですねぇ、あれとかどないですやろ?」
「ん〜〜、柔造やったらもっとシュッとしたボディの車の方が似合いそうやなぁ」
「せやったらあんなんとか?」
「おん!せや!あんな感じ!」
「色は何色がいいです?」
「ん〜・・・赤?」
「カッコええですねぇ」
「おん!似合うと思う!」
と、ホンマのホンマに軽い気持ちで答えた。
この時の俺は、後に柔造がその通りの車を買うてくるやなんてかけらすら思いもせんかったから。
**
そんな会話をしつつ、着いたお台場。
「うわぁ〜〜〜〜!!!あれテレビで見たことある!」
おのぼりさん丸出しの意見やけど、ホンマにテレビのまんまやってんから仕方ない。
「後であそこの中も入ってみましょね?ほんなら先にこっち行きましょか?」
と連れて行ってくれたのは映画館。
見たい映画はインターネットで席を確保してらしく、行ったら直ぐに劇場に入れた。
女にモテる理由が良く分かる。
隙を与えずにどんどんエスコートしていってくれる。
ホンマ俺が女やったらどんだけ良かったか。
女やったら・・・・こんなん、デートって言うんやろな・・・・
なんて考えて、ぼっと顔が熱くなった。
何を考えてるんや、何をっ!!
デートて!デートてっ!!!
せやけど・・・・デート・・・・か・・・・
まぁ、心の中で思うだけやったらただやもんな。
そんなつもりで遊んでみたかて、きっと柔造にはバレるわけなんてない。
ほんならちょっと、そんな気分を味わってみても罰は当たらんやろか?
デートなんかしたこと無いからよう分からんけど、ようは好きな人と楽しく遊ぶんがデートなんやろ?
ほんなら、これはきっと立派なデートや。
「坊!飲み物何かいりますか?」
「ええっと・・・ほんならコーラがええ!」
「ポップコーンとかは?」
「飲みもんだけでええよ」
「わかりました。ちょっと待っててくださいね!」
「おん、ありがとうな」
「いえ」
にこりと笑って買いに行ってくれた。
遠目から見ても柔造はカッコええ。
後姿もカッコええ。
背は高いし、均整の取れた身体つき。
顔も男前やし、オシャレやし、優しいし、よう気が付くし、悪いところなんて分からへん。
ホンマええ男やと思う。
なんて、ぼんやりと柔造を眺めていた。
「お待たせしました。坊?どないしましたん?」
「ん?いや、柔造ってホンマカッコええなぁって思て見とれててん」
思った通りを口にして、くすりと笑ってみた。
「え?」
「ほんなら行こか」
動こうとすると、柔造はピタリと静止した。
「え・・・・・あ・・・・ちょっと・・・トイレ行ってきます。先入っとってください」
「あ、そうか。ほんな先入ってるな」
「すんません」
飲み物を預かると、先にシアターへと入ったのだった。
**
映画を見た後は、少し遅めの昼食。
ここもあらかじめお勧めの店を押さえていてくれたらしく、すぐに入れた。
映画の話をしながら美味しいもんを食べて、柔造とゆっくり話が出来るやなんて。
何やごっつ嬉しくて、ついつい笑顔になってしまう。
「そないに映画面白かったですか?」
「おん。思ってた以上やった!」
「それは良かったですねぇ」
「せやし、ご飯も美味しいし!」
「そりゃ連れて来た甲斐がありました」
「それにな」
「はい?」
「柔造と一緒に何か色々出来るんが嬉しいんや」
「・・・・・・・・」
ピタリと食べていた手が止め、柔造は俺をじっと見詰めた。
「?どないしたん?」
「あ・・・・・ちょっと・・・・」
それから、フォークを皿にカチャリと置くと、
「すんません・・・ちょっと・・・・トイレ行ってきます」
「?おん。わかった」
さっきもトイレ行ってたな?
腹の調子でも悪いんやろか?
なんて思ったが、帰って来た時には別に平気そうやから、気のせいかと、何も言わなかった。
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