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long story
Rapunzel:1
あるところに、二人の夫婦が住んでいました。
その夫婦は近所でも噂の夫婦でした。
「一氏!」
「わぁ!小春堪忍!」
「許さへんで…」
「ちょほんま堪忍やって!俺が悪かった!」
いつもの様に、奥さんの小春が夫のユウジをど突きます。初めてこの二人の見た人なら何やこいつら迷惑やなぁ、と顔をしかめるのですが、近所の人は日常茶飯
事だと受け止めています。
「またやってはるわ、お隣さん」
「毎日大変やなぁ一氏さん家は」
「せやなぁ」
おばさん達は顔をしかめる事なく、むしろ微笑ましいまでにその光景を眺めていました。



「ユウくん、ウチ子供欲しいわぁ」
「ぶほぉっ!!!」
「汚いで一氏ぃ!!」
「す、すまん小春っ。今布巾持ってくるっ」
「はよしてやー」
ある日の夕食時、子供が欲しい、とぽつり小春が漏らしました。当然、ユウジは驚き、向かいに座る小春にスープがぶちかかりました。普段温厚な小春も流石にキレて、つい昔のように怒鳴ってしまいました。
キッチンから布巾を持ってきたユウジは、スープを拭きながら問いました。
「いきなりどうしたん?」
「やって、うちらずっと子供おらんでしょ?」
「そら、なぁ…」
この二人長い間子供が出来なかったのです。ヤることはヤっていましたが、どうしても授かりませんでした。
だから、ユウジはもう仕方ないことだと諦めていたのです。それは言いませんでしたが、小春もそうだろうと思っていました。
「諦めてたん、でもやっぱり欲しいんよ」
「せやけど、もうずっと出来んかったやないか。医者やって分からん言うとったやろ?」
「…そうやけど……」
湿っぽい雰囲気になり、その日は気まずいまま、二人は眠りにつきました。



その日の夢。
『あんたん願い叶えたるでぇ』
神様のオサムちゃんが、小春の夢に現れ、そう言いました。



二人が暮らしている家の隣に、ラプンツェルが沢山成っている家―というか、豪邸がありました。
小春はあの夢を見てから、そのラプンツェルを食べたくて仕方がありませんでした。しかし、その家は近所でも噂の、恐ろしい魔女が住んでいたのです。性別は男ですが、魔力を持ち魔法を使う者なら誰だって魔女です。
名前を白石といい、毒草を採集しては調合する。巷では毒草聖書と呼ばれています。彼は薬も請け負いますが、いかんせん毒手を持っていると噂があるため、なかなか彼に近づく者はいませんでした。
「ユウくん。あそこのラプンツェル食べんと死ぬ」
「こっ小春!?物騒なこと言うなや!」
「食べたいわぁ食べんと死ぬわぁ」
「小春ぅぅうう!」
そんなこんなで小春の為なら例え火の中水の中、ユウジは単身白石の庭からラプンツェルを取ってきました。それで小春は料理を作り、食べると前よりもっと食べたくなりました。
またユウジが庭に入ると、なんと目の前に仁王立ちした白石がいたのです。
びっくりしたユウジは腰を抜かし、震えながら事情を話したところ、白石はある条件を出しました。
「ラプンツェルは好きなだけ取ってええ。でもな、あんたんとこに子供が出来たら、そいつは貰うで」
その時の魔女が毒手を翳しながら言ったため、ユウジは出された条件を上手く理解せずに頷いてしまったのでした。
暫くして小春が女児を産みました。二人は喜びましたが、窓から白石が入ってきて、毒手を翳しながら言いました。
「約束や。子供は貰うで」
「た、頼む、名前だけつけさせてや!」
「仕方ないなぁ」
そうして白石に連れて行かれた子供は謙也と言い、深い森の奥、ひっそりと立つ塔に入れられました。
ユウジと小春は謙也がどうしているのか、どこにいるのか、白石から教えられません。それどころか、謙也を忘れろと言うのです。
閉じこめられた謙也は、親の顔を知らずに育てられました。




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やってしまったーw後悔はしていない!
20110213 玖樹

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