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long story
Un anello(白黒様)
指輪もらった大学生。若干白黒様のとリンクしてます


Un anello



「慶次のお悩み相談?」


「うむ、前田殿が悩み事の相談に乗ってくれるそうだぞ」

「いや、何で?俺様別に悩み事とか…」

「あるのではないのか?」

質問に質問で返す幸村に、箸で摘んだ卵焼きを落としそうになる。

「佐助は何でも抱え込み過ぎなのだ。困ったことがあったら相談くらいしてくれてもいいだろう?」

上手く隠したのに…。

そっと溜め息をついて、卵焼きを口に放り込む。

あのさ、と切り出すと、

「待て、慶次殿も呼ばなければ」

と言って慶次を呼びに隣の研究室に駆け込んで、30秒もしない内に慶次が幸村に襟首を掴まれ引きずられて来た。

「ちょ、幸村首締まるぅぅあ」

「申し訳ない!だが慶次殿に佐助が相談があると」

いやいや慶次呼んだの旦那じゃん!!

内心でつっこむと、慶次はキラキラと目を輝かせ椅子を引き寄せドカッと腰を下ろした。

「何?恋の相談なら専門だよ」

「こっ…!?破廉恥な!!そのような相談か佐助!!?」

「幸村、恋くらい誰でもするよ?幸村だって政宗に恋してんじゃん」

いきなり自分に向けられた言葉に、幸村はビシリと固まる。次いで1センチ間隔で赤くなり、

「っ…違うでござるぁぁぁああああ!!!!!」

と大声で叫びながら、食べかけの弁当をそのままに駆けだした。

あああぁぁぁああああ!!!と混乱した叫び声が遠く聞こえる。

「…まさか自覚なし?」

「でしょうねー」

「丸分かりなんだけどなぁ…。あ、ところで相談って?」

恋の相談かい?とにこやかに問われて、また箸から弁当の中身が落ち掛ける。

その反応に慶次はまたもやニヤリと笑い、両手をあげた。

「何年恋の相談に乗ってると思ってる?」

「はいはいそうですねー。…で、相談、てか質問なんだけどさぁ……」

これは話さないと下がらない感じがして(いい加減誰かに言わなければ悶々とする気がしたこともあるけど)、何度目か分からない溜め息をついた。

「うん?」

「あのさぁ…家鍵渡すってことはさぁ…つまり、そういうことかねぇ…?」

「家鍵…?あ、あぁそういうことじゃない?」

「やっぱりそういうことかぁ…。てかどういう意味か分かって言ってる?」

呆れ顔で問えば、きょとんと首を傾げて、嫁入り?と答えてきた。

は、と空気が漏れて、一気に力が抜ける。

「違うでしょ。何で男が嫁…っ!!」

はっと口を抑えるも、慶次は理解したのかまたもやニヤリと笑う。

「佐助も隅に置けないねぇ。で、相手は?やっぱりかたく」

「あああああ」

幸村のように叫びながら、慶次の口を塞ぐ。

「何言ってんだよ!あの人じゃない!!」

「でも政宗が」

「政宗!?あいつに言われたの!?」

「当たり?」

「ちがっ」

真っ赤になりながら慶次の言葉を否定していると、携帯が震えてメールを知らせる。開いて見ればたった一行の命令。

『今すぐ資料室に来い』

固まる佐助に慶次はメールを覗き上目でどうする、と問うと、佐助は少し迷った末、鞄を手に取り研究室を出た。

「帰る。気分悪いって北条に言っといて」

それだけ告げると、佐助は振り返りもせずにさっさと大学を抜け出した。



「…で、何であんたがここにいるのさ」

逃げるように学校を抜け出した佐助は家に帰る気になれず、ショッピングモールをぶらぶらと歩いていた。

ふと時計を見れば、既に時刻は七時半を過ぎていた。

「あああっ何もない!!」

夕食はおろか明日の朝、弁当の中身すら作る食材が自宅の冷蔵庫にないことを思い出して、ショッピング
モールに入っている食材売り場に走り、値段を見比べながらカゴに放り入れていると安売りがあることを発見して…。

明日の昼は生姜焼きかな、と鼻歌混じりに帰路についた。


が、自宅の玄関前で、せっかく忘れられていた人物が。



「…無視したくせにえらくご機嫌だなあ。あぁ?」

ひくりと頬をひきつらせうっすらと笑う…悪魔、

「…か、たくら…さん…」

つられてひきつらせて笑うと、小十郎は佐助の腕を掴んで裏に停めていた車に佐助を押し込む。

「え、ちょっと!?」

「まぁ付き合えや」

反論する前に車は発進し、これじゃあ人攫いだ、と、佐助はスーパー袋と共に小十郎の家に連れて行かれた。



「で、どうして呼び出したのに来なかった?」

「………」

小十郎の家に着き、車の中では言えなかった文句を言ってやろうと顔をあげた瞬間、がしりと髪を掴まれソファに座らされた。

嫌な予感がして立ち上がろうにも目の前には小十郎、逃げられるわけがない。

「黙ってないで、答えろや」

「…いやぁ、あはは、ごめんなさい」

「答えになってねぇだろう。…まあ、それは別にいいがな、本当に聞きたいことはそれじゃねぇ」

「…はい?何さ?」

ひきつり笑いを貼り付けて小十郎を見上げると、小十郎はゆっくりと佐助の左手をとった。


「何で指輪してねぇ」


少し寂しげに告げられた言葉に数秒思考が止まる。たっぷり五秒経ってから、佐助は赤くなった。

「なっ何言ってんのっ!!嵌めれる訳ないじゃん!」

「理由は」


「理由?だって相手が先生だなんて流石に言いづらいし…。詮索されんの嫌だもん…うざったいし」

「あのなぁ…」

はぁ、と溜め息をついて小十郎は佐助の前にしゃがみ込む。

「指輪渡したのにしてもらえないだなんて、こっちとしちゃ落ち込むんだが…。お前も二十歳になったんだ、いい加減腹括れ」

「…」

「それと、何で俺が家鍵渡したか分かってんのか?」

「…分かんない」

俯いて言うと嘘付けとばかりに額を弾かれた。

容赦ない痛みに顔をしかめれば、握っていた左手に軽く唇が触れた。

「一緒に住め、ってことだろうが…」

騎士が忠誠を誓うかのような仕草と囁かれた言葉に、今度こそ佐助はボンと音を立て赤くなった。

「な、ななな…っ!!?」

「本当に分かってなかったのか…」

「や、だって…っは、恥ずかし、もん…」

「…お前…」

俯いてぼそぼそと零す佐助に小十郎は脱力し、うなだれて前髪をかきあげた。

「…とりあえず、顔あげろ」

「何、」

顔をあげると言うよりあげさせられた。一瞬だけ触れた

唇、いつ以来だろうとぼんやり思って、思わず自分から重ねた。

それから何度も重ね合って、お互い少し息があがった頃、小十郎が佐助に聞いた。

「今指輪持ってるか?」

「…持ってる。財布ん中」

「何で財布なんだよ」

佐助の鞄から財布を取り出しながら小十郎は押し殺せずにくっくっと笑う。

「…だって…ネックレスにしようにもチェーンないし…」

かといって嵌めるのは恥ずかしい。

悩んだ挙げ句なくさないようにと財布に入れることにしたのだろう。丁寧に袋に

入れて、落とさないようにテープで貼り付けて小銭と分けて入れてある。

それを外しながら、また笑う。

「器用なことするなぁ、ほら、手出せ」

「だって落としたくないし…って、え!?」

まさか、と真っ赤になって固まる佐助の左手に取り出した銀色の輪を嵌める。

小十郎には秘密だが、一度こっそりと嵌めたことがある。その時はくすぐったいような、思わず笑ってしまうような。

でも今は…

「…何泣きながら笑ってやがる」

「や、何でだろうね?ははっ」

「ったく…。もう外すなよ」

「うん」

へへへ、と笑いながら左手の薬指−蛍光灯の光を受けて光る指輪を撫でる。すると小十郎は
何を思ったかおもむろに佐助に覆い被さった。

するりと頬を撫でられて顔をあげると、普段からは想像できない程の
柔らかい笑み。つられて笑うと、小十郎の顔が近づいて、



「一生離さねえからな」

「ふふっ…望むところだよ」







翌日、佐助の左手の薬指に指輪があり、同じものを小十郎が一年前からして
いたことから、もしやと思った学生がいたとか、いなかったとか。


それを聞いた慶次は、

「ま、あれだ。命短し人よ恋せよ、ってね」

と佐助に言ったのだった。




****************
白黒様へお誕生日プレゼンツ!!
25日だったのに大幅に遅れて申し訳ない…!!
白黒様のみお持ち帰り可です^^
ちなみにun anelloとはイタリア語で「リング」って意味ですw

20103029 玖樹

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