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何故ムサい男同士が、まだ女子同士なら許されるであろう『遊園地』という境地にいるのだろう。




疑念の後悔





「吉丸ー!あの乗り物乗ってみよー!」

「あー…はいはい」


確か『デート』という名目で遊園地にいる俺と秋屋。
入園して30分、既に遊んだものは10を超えている。
移動はほぼ走るように行い、今の俺は遊びたいというより休みたい気持ちでいっぱいだ。
秋屋は大きな船が前後に揺れている乗り物を指差して今までで一番輝く笑顔を振り撒く。
こんな彼を見て「仕様がない」と諦めてしまう俺は本当に秋屋が大好きなんだなと、改めて自覚してしまう。
それにしてもアレは無理だ。
徐々に高くなる揺れに俺は地味に恐怖を抱く。


「俺見てるから、秋屋一人で行けよ」

「んー…」


俺とソレを交互に見て、秋屋は「じゃあいいや」と笑うと俺の腕を掴んで引っ張る。
いやいや、一般常識を携えた人がここには沢山いるから。


「違うヤツ行こ」

「せっかくなんだから、乗って来いよ」

「いい、吉丸いないとつまんねーじゃん」


首を傾げる俺に、秋屋はニヤリと笑みを深くして言う。
何だか嫌な予感。


「吉丸が恐怖に顔をひきつらせる所が見たいって言ってんの」

「最悪」

「ま、やっぱ好きな奴には笑ってて欲しいけど」

「……………馬鹿じゃん」


照れ隠しに吐いた言葉を秋屋は苦笑で返した。
いつの間にか休憩エリアらしき所まで来ていたらしく、俺は周りを見渡す。
美味しそうなクレープが目に入り、思わずさまよわせた視線が止まってしまう。


「?クレープ食べたい?」

「…………いや…」

「行くか」

「…………ん」


一向に俺の腕を離そうとしない秋屋の背中を俺はただ見つめた。
端から見たら気持ち悪い光景だろうに。
秋屋のルックスは男の俺から見てもなかなか良い部類に入ると思う。
そんな秋屋とくっ付いている、ごく普通の俺。
惨めになるのは始めからわかっていた事なのだ。
姉ちゃんだったらこんな気持ち抱かなかったかもしれない。
俺と本当に姉弟なのかってくらい姉ちゃんは綺麗だから。
それは勿論家族としての贔屓目を除外してもだ。


「秋屋」

「んー?」






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