B


「お前が姉ちゃんを大事にしていた様に、俺も姉ちゃんが大事だったから」

「……………」


俺は真っ直ぐアイツと対峙して、はっきりと言ってやった。
アイツは腫れた頬に視線を移し、舌打ちをする。


「俺は秋屋恭二、昨日は本当に悪かった」


秋屋はすっと頭を下げる。
突然のことに驚き、俺は慌てた。
人を見た目で判断するなと言うが、確かにそうだ。
現に今、こんな事をする奴だと思っていなかったのでどうすれば良いかわからない。


「あああ頭上げろって!」

「本当に悪かった」

「わかった!わかったから!」


俺は秋屋の頭を掴み、無理矢理顔を上げさせた。
秋屋はきょとん、とした表情をしたが、俺の慌てた顔を見た瞬間ぷっ、と笑った。


「な!?」

「お前面白いのな」

「はぁ?」

「本当に昨日は悪かった、良かったら友達になんね?」

「そうやって心優に近付こう…」

「しねーよ。今更そんなことしたって無駄だし」


その言い方では、まだ姉に未練があるようにしか聞こえない。
本当に好きだったのか、なんて今更ながら気付いた。
それと同時に、何故浮気なんてしたのだろうかという疑問が胸に蟠りを作る。


「確か俺らって、寮の部屋隣同士だよな?」

「は?嘘」

「プレート見ればわかるだろ…まぁ俺も寮にいるより外で遊び呆けてるから気付かなかったんだけどな」


あははと笑うが、まさか姉の彼氏が隣の部屋にいたとは驚きだ。
今日はどうやら驚く日らしい。


「吉丸〜」


トイレから帰ってきた澄打が手を振り駆けてくる。
そして秋屋の姿を認めると、一気に表情が歪んだ。
首を傾げる俺。
秋屋はちっと舌打ちをして、澄打を睨む。


「何でコイツがいるんだよ」


澄打にしてはドスの利いた声に、俺は更にわけがわからなくなる。
怒っているのか…?


「?いや、俺の姉ちゃんと付き合ってたらしくてさ…」

「また違う女と付き合ってたのかよ秋屋!」

「澄打には関係ねーだろうが。正義面して説教か?」

「てめぇ!吉丸に近付くな!悪影響なんだよ!」

「澄打落ち着けって、秋屋もほら…授業始まるぞ」


俺は勿論混乱していたが、この場を収めないことにはどうにもならないだろうと踏み、二人を宥める。

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あきゅろす。
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