G
もしこの先、写真を送った相手がけしかけてきても対応してもらえる様に。
もし秋屋に何か起ころうとしても、助けてもらえる様に。


「何だか人身御供だ」


そう呟いた俺の声は、扉を思い切り開く音にかき消された。
迫り来る扉に、お世辞にも反射神経が良いとは言えない俺は思いっ切り顔面で受け止めてしまった。


「いっ…た!!」


文句を言いようにも言えない。
あまりの痛さに、俺は顔面を押さえてうずくまった。
すると降りかかる聞き慣れた声。


「あれ?吉丸くん?」

「佐野、元先輩」


俺は痛さに歪めた視界を凝らし、端正な顔の持ち主を見上げた。
小首を傾げて苦笑している。
こういう事を絵になるって人は言うんだろうな。


「ごめんね、曲者の気配がしたから」

「曲者…って」


いつの時代の人ですか。
先輩は俺の様子を窺う様にしゃがみこんで、鼻付近を押さえる俺の腕をゆっくりと離した。


「あぁ…赤くなってる。すまないね、最近は色々あってどうしても敏感になってしまうんだ」

「いや、別に」


結構長く立っていた自分も自分ではあるわけで。
先輩の色々が気になって、じっと先輩を見つめてしまう。
それに気付いた先輩も、始めは戸惑う素振りを見せたがどうやら話してくれるらしく、「おいで」と俺の手を引いて生徒会室に入れてくれた。


「ん?吉丸、今朝ぶりだな」

「その節はお世話になりました」


俺は会長にお辞儀をしつつ、佐野元先輩にはまだお礼を言ってなかったと顔を上げると、何だか違和感が…。
佐野元先輩が複雑な顔をしている。


「佐野元先輩?」

「あぁ、そこのソファーに座っていてくれるかい?お茶を持ってくるよ」

「そ、そんな気を遣わ…」

「気にするな吉丸、こいつはMだから」


慌てる俺を楽しそうに横目で見つつ、会長は俺の座るソファーの近くにやって来る。
佐野元先輩はため息を吐きつつ殺意を込めた視線を会長に向けていた。
この組み合わせは、本当に心臓に悪い。


「さて、じゃあ本題に移ろうか」


佐野元先輩は俺の前に、温かい緑茶を置くと向き合う形に配置してあるソファーに足を組んで座った。
俺は忘れる前に、と「あの!」と声を発する。


「どうかした?」

「いや、あの…佐野元先輩にも沢山迷惑かけてしまったので…すみませんでした」




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