C

ベッドを中心に本棚などの家具が置いてあるのだが、どの家具もシンプルだ。
会長は結構ごちゃごちゃしたものが嫌いなのかな、とか思った。
床にフカフカの絨毯が敷いてあり、入り口で室内履きを脱いだから良いが何だか落ち着かない。


「あ…」


ベッドの上には、会長からは到底想像できないアイテムが無造作に放ってあった。
俺は興味をそそられ、それを手に取るとじぃっと凝視した。


「ぬいぐるみだ」


可愛らしいクマのぬいぐるみが、さも当然の様に会長のベッドの上にある。
まさかコレを抱きしめて眠っているのだろうか…。


「いや、無理。想像出来ねぇ」


精一杯頭を左右に振り、自分の考えを全否定した。
だが、結局何に使っているのかは気になってしまう。


「妹とかいるのかな…」


ぬいぐるみをそっと元に戻して、テレビの前に正座した。
やはり部屋の住人がいないと、何をしていいのかわからない。
俺がそわそわと周りを見渡していると、がちゃりと扉が開いた。


「何をかしこまってるんだ?」

「あ、いや…どうも…」

「胡座でもかけば良い」


会長はそれだけ言うと、奥のリビングと思しき場所へ入って行った。
一時して紅茶の良い匂いがする。
上品だなぁ…。
水で良いのになんて思ってしまうあたり、大人の男性には程遠い俺。


「熱いから気をつけろよ」

「ありがとうございます」


真っ白なテーブルの上に、真っ白なカップと受け皿。
唯一違うのは金色のスプーン。
二人分の紅茶を器用にテーブルへ乗せた会長は、ふぅと息を吐いた。
俺のせいで疲れさせてしまったかと思うと、心苦しくて会長の方に姿勢を正した。


「?どうした?」

「会長、すみません俺なんかのために…」

「あ?……あぁ気にするな。嫌なら断っているしな」


この人こそ「男」の中の「漢」だ!
俺が感動していると、会長はカップを綺麗な指で持ち上げた。


「寮長には言っておいた。ルームメイトには遥次が言いに行ってくれている。どうやら知り合いらしいからな」

「あ…佐野元先輩にも迷惑かけてしまったんですね…」

「気にするな、アイツは嬉々としてルームメイトの元へ向かったぞ」

「え?」

「弟みたいで可愛いんだと」

「へぇ…」


あのすました顔の先輩が。



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