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そんな澄打の揶揄に俺は我に帰ったが、時既に遅く秋屋はきょとんとした顔をして、コチラを凝視していた。
「いや、違くて!その、あの…な!」
「吉丸…」
慌てる俺を余所に、秋屋はいたって冷静だった。
それが余計俺の不安を煽り、どもらせる。
「やっぱりお前さ」
「……………」
「童貞だろ!」
「……………………は?」
俺は自分の気持ちがバレて、秋屋が突き放す様な事を言うものだと予想していた。
しかし秋屋の反応は全く異なるもので…。
「しかも彼女いた事ないだろ」
「それは失礼だろうが!」
恥ずかしさと相まって、俺は秋屋の頭を思いっきり、力の限り、二度とないくらいに盛大に殴ってやった。
秋屋は「っ!」と声にならないのか、頭を抱えてしゃがみこむ。
澄打は呆然とそんな俺と秋屋を交互に見て、やがて大声で笑い始める。
「傑作!秋屋がくたばってる!」
「うるせぇ小猿」
秋屋は涙目で、馬鹿笑いする澄打を睨み付ける。
俺は荒い息を繰り返しながら、そんな二人から視線を外して自分の席へと向かう。
これ以上こんな馬鹿の掛け合いに関わっていられない。
後ろから呼び止めるような声が聞こえたが、勿論無視だ。
俺が席に着いたと同時に、昼休み終了の鐘が鳴った。
「つんたかたたーん」
「何だその歌は」
「俺ちゃんだけのテーマソング。オーケイ?」
「…………日本語を喋ろ」
生徒会室で、五時間目の授業をサボる生徒が二人。
我が物顔でこの部屋を常時利用している、仮にも生徒会長の藤原と、書記の天宮(アマミヤ)だ。
天宮は脱色して痛んでしまった髪を弄りつつ、ニコニコと笑っている。
「俺ちゃん良いもの見つけちゃったんだよー」
「何だ?蟻の巣か?」
「そんなの今の幼稚園生でも喜ばないよ」
むすり、と可愛くもない顔で精一杯頬を膨らます天宮。
可愛いよりも綺麗と表現した方が良いその顔には、眉間に沢山の皺が寄っていた。
「俺ちゃんをいくつだと思ってんのさー!」
「あ?胎児だろ」
「産まれてさえいない!?」
藤原の冷たい一瞥を受けても、天宮の表情にはすぐ微笑みが浮かぶ。
癖の様にも思えるが、実際声のトーンが嬉しそうに上ずっているため、判別しにくい。
「これでもさー一つ年上なんだよ」
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