B
そんな馬鹿馬鹿しくも楽しい掛け合いをして、下足箱まで行くと見知った男と、見知らぬ女がいた。
その二人は腕を組み、校舎の裏へ出るドアを開ける。


「あれ秋屋じゃん」

「あ…うん」


気にならないと言えば嘘になるが、此処で首を突っ込む様な野次馬精神も俺にはなかった。
澄打はふぅと溜め息を吐き、自分の下足箱の方へと歩いて行く。
俺は二人が出て行ったドアを、じぃっと見つめていた。


「気になんの?吉丸」

「え?いや…校舎の裏ってあんまり行ったことないから」

「行かない方が良いって」

「何かあんの?」


澄打は自分の靴を持ったまま、校舎裏に出るドア付近に立つ俺の所まで走ってくる。


「!」


走って来たかと思うと、鼻と鼻がぶつかるくらい顔を近づける澄打。
そんな至近距離でお前の顔見たくないよ。


「男と女が愛を育む場所ってことさ」

「は!?」

「疎い吉丸には刺激が強すぎるから、いつかな」

「いいい行かないって!」


顔の熱が上がるのを感じる。
澄打はそんな俺を楽しむように、ニヤニヤと笑う。
しかし秋屋と見知らぬ女子はこのドアを抜けて校舎裏へ行った。
やはりそういう関係だということか。
姉と別れてすぐにできた彼女、或いは姉と付き合っている時にまた別に付き合っていた女性の中の一人なのか。
どちらにしても、秋屋の印象を悪くするばかりである。


「ほーら、吉丸帰っぞ」

「あ、うん」


既に外履きに履き替えた澄打が手を振り俺を呼ぶ。
気になるそのドアを開けることは、俺には出来なかった。
秋屋が何を考えているのかも、俺にはわからなくなった。
それ程わかっていたつもりもないが。


「吉丸、帰ったらちょっと手伝ってくんない?」

「手伝う?」

「そ。今度彼女ん家に泊まるからさ」

「………まさか」

「そのまさか」


隣でウィンクする澄打が気持ち悪くて、思わず頭を叩いてしまう。
澄打は短い悲鳴の後で「何するんだよ」と憤慨していたが、俺の脳裏からはあの男女の姿は消えなかった。









「ちょっ…澄打早すぎ!しかも乱暴!」

「いやいや何事も早急にしないと、途中で嫌がられたら…」

「お前彼女に嫌われたいのかよ!?」


ベッドの上で、澄打に組み敷かれる俺。
特に他意はない…と信じたい。


「綾に嫌われるのは嫌だ」


綾とは澄打の彼女の名前である。



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