SS 抱き締め合う体温 「花火、綺麗だな…」 「そうですね…」 ぼそりと呟いた俺の言葉に反応するのは隣にいる古泉だけだ。 いつもなら七夕の日なんてハルヒに振り回されて過ぎていき、二人きりでのんびり花火観賞なんてありえない事態だ。 しかしながら今年はハルヒがなんと風邪を引いてしまい(病原菌すら神の力で無効にしているかのようなやつなのに)、七夕の集まりはなくなった。 ハルヒが苛々して閉鎖空間を作り出さないか心配ではあったのだが杞憂だったらしい。 苛々する元気もあまりないのかもしれないな。 明日見舞いに行ってやらないと…と考えていると手を軽く引っ張られた。 …犯人は誰と言わなくてもわかるだろうが古泉だ。 「どうしたんだよ?」 「今、涼宮さんの事を考えてましたね?」 「え、…なんでわかるんだよ」 「勘です。なんとなくキョンくんの事はわかります」 …ちょっとそれ、怖いんだが…。 「考えてたって言っても見舞い行ってやらなきゃなぁって考えてただけだぞ?」 「それでも、今一緒にいるのは僕なんですから僕の事を考えて下さい」 「いや…今花火見てるんだしそれもちょっと違うと思うが…」 「それでいいんです。だって…僕ばかりキョンくんの事を考えてるのは不公平じゃありませんか?」 「お、おまっ、何言ってんだよ!」 な、何をいきなり恥ずかしい事を! 「本当の事ですよ。キョンくんが頭から離れてくれなくて勉強も手につきません。最近二人きりになることがなかったのでキョンくん不足みたいです」 だから、今日はたくさんキョンくんを補給させて下さいね? そうやって笑った古泉の顔は花火の光に照らされてすごく綺麗だった。 いつもの作った笑顔ではなく、自然に出た古泉の笑顔。 その笑顔を見る事が出来るのは俺だけなんだと思ったら顔が熱くなるのがわかった。 「…俺だって」 「え?」 「…お前の事で頭いっぱいだっつーの」 「……え、あの、」 「…………」 「嬉しい、です」 「…そーかよ」 「…抱き締めていいですか?」 「…好きに、すれば」 言った瞬間すごく嬉しそうに抱き締められてその身体の暖かさに俺も自然と笑顔になった。 …夏だからむしろ暑いくらいだが今はそれでもいい。 ふと空を見上げると星がたくさん輝いていた。 どれが彦星と織姫なのか、俺には全くわからないがきっと二人も俺たちと同じように笑顔で一緒に居るんだろうな、なんてらしくない事を思いつつも、また離ればなれになる二人には悪いがまだまだ俺たちはお互いの体温を離せそうにはないようだ。 終 遅れたけど七夕! 大変お久しぶりです。 小説の移動、加筆修正等で移転はもう少しかかりそうですが多分この七夕小説がこのサイトであげる最後の小説になると思います。 そう思うとちょっと感傷的になりますね´` 短い小説ですが読んで下さってありがとうございました! 移転準備頑張ります! 零紅拝 [*前へ] |