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Black Number
狂った世界。狂った僕等。
《F-Town  B地区》
―B地区の外れにある鉄格子に囲まれた白い建物。美術館と呼ばれ数多くの人々か展示されていた芸術品に感嘆していた頃の面影は既に微塵も残されて居ない。
今はただ…暗く冷たい静寂が支配した空間。
…―ズチャッ…
そんな空間に佇む男が居た。
痩せた身体、手入れもされず伸ばしたままの白髪の隙間から覗く瞳には自らが作り上げた作品を映し穏やかな笑みを浮かべている。
「あぁ、朱とは何よりも美しい…君達もそう思うだろう?私の可愛い作品達よ…」
男は骨張った長い指で作品を愛でながら、うっとりと酔いしれるように呟く。朱に飾り付けられた人だった者達。

美術館の廊下には酔狂な声だけが冷たく響いていた。





-第一章-
『狂った世界、狂った僕等』












《F-Town C地区》
街を行き交う人も疎らになり日が西に傾き始めた頃、クロと陽の二人はC地区の中央にある一軒のカフェに居た。
「遅い…まだかよ。炯のやつ」
店内でも1番人目に付きにくい奥の壁側の席に座り、パフェが入っていた容器の底で溶けて液状になっているクリームを、右手に持ったスプーンで弄りながら退屈そうに陽が漏らした。
「……。」
陽の向かいに座るクロは、珈琲を見詰めたまま数時間前から一言も言葉を発しない。
見た目的には普段通り涼しい表情をしているのだが、これはかなり機嫌が悪い。その証拠に既に冷たくなってしまった珈琲に次々角砂糖が放り込まれているのである。
機嫌が悪い時ほど甘党になるクロだが、小さなカップに入った珈琲に角砂糖数十個はいくら何でも入れ過ぎで…かき混ぜる度に溶けきれず底に沈殿した砂糖かジャリジャリと音を立てている。
そんなクロの姿に、怖くて止めることも出来ず陽は深い溜息をついた。



…頼むから早く来て…



数分後、手にしていたスプーンを投げ捨てるように離せば、両手を上に伸ばし大きく息を吸った後、拳を握りながら心底恨めしそうに言葉を吐いた。

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あきゅろす。
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